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【解説】「サードパーティークッキーとマーケティングの 現在とこれから」クッキーの基本を理解して、未来を読み解く

最近起きていること

Kaizen Platform CTOのwatabeです。

AppleがITP (Intelligent Tracking Prevention) という仕組みを自社ブラウザであるSafariに導入し、広告目的のクッキー(Cookie)の使用が制限され始めました。

そしてここに来て グーグル、2年以内に広告目的のクッキー利用制限へ というニュースが出まして、GoogleのChromeにおいても同様の制限が近い将来されるということが発表され、話題になりました。

そこで、デジタルマーケティングにおいてクッキー(Cookie)がどう利用されてきて、それがどう制限されているのかの解説を通じて、今後デジタルマーケティングがどう変わっていくかを推測してみたいと思います。

クッキーの基本のおさらい

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クッキー(Cookie)の利用方法や制限についてお話させていただく前に、クッキー(Cookie)とは何か、その基本をおさらいしてみようと思います。

・HTTP

HTTP(HyperText Transfer Protocol)というのは通信の方式で、インターネット上の通信は主にこのHTTPという通信方式で行われています。

このHTTPは「ステートレス」といわれる仕組みで、簡単に言うと「状態を保存できない」通信方式です。

「ステートレス」にすることで、軽量かつそれまで使われていた専用線などと比べて比較的信頼度が低いネットワーク網でも通信が可能になりました。これによってインターネットが広がり、多くのユーザーが利用できる下地が整いました。

・クッキー (Cookie)

しかし、HTTPが状態を保存できないと不便なことがあります。

簡単なページ閲覧であれば問題ないのですが、例えばログインをして使うページなどでログインの状態が保存できないと、ログインしても次のページに移動したらまたログインしないといけない、というようなことが起きてしまいます。不便ですよね?

そこで、クッキー(Cookie)という仕組みが考え出されました。

クッキー(Cookie)とは、実は小さなテキストファイルで、ユーザーのブラウザの専用の保管場所に保存されます。
※ サーバーに保存されると思われている方が多いですが、それはよくある勘違いです。

このテキストファイルには、対象となるドメイン(発行元、と言われます)が一緒に記録されており、該当のドメインに対してHTTPで通信する際に、ブラウザが自動的にテキストファイルの中身を通信ヘッダーと呼ばれる領域に書き込んで送信します。これによってサーバーはクッキー(Cookie)に書き込まれた情報を取得することができます。

例えば、kaizenplatform.com というドメインが発行元のクッキー(Cookie)に「ユーザーID: 100」と書き込まれていると、kaizenplatform.com のサーバーは通信時にこの人がユーザーID 100番のユーザーだな、と認識できるという訳です。

ファーストパーティークッキー(1st Party Cookie)とサードパーティークッキー(3rd Party Cookie)

クッキー(Cookie)にはさらに2つの種類があります。

「ファーストパーティークッキー」と「サードパーティークッキー」です。
※ テキストファイルの仕様が違うわけではなく、使用用途によって判断されます。

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ユーザーが訪れたサイトである発行元のクッキー(Cookie)がファーストパーティークッキーと呼ばれ、ログイン情報などが保存されます。このサイトにバナー広告が掲載されていて、広告のサーバーから発行された(つまり、ユーザーが訪れているサイトではない発行元の)クッキー(Cookie)がサードパーティークッキーになります。

簡単にまとめると

・ファーストパーティークッキー (1st Party Cookie)
 →ユーザーが訪れたサイト(自社サイト)での用途に使う
・サードパーティークッキー (3rd Party Cookie)
 →ユーザーが訪れたサイトでないサイト(他社サイト)での用途に使う

となります。

冒頭ご紹介した記事の「広告目的のクッキー」というのはサードパーティークッキーのことだと思っていただいて問題ありません。

Kaizen Platformにおけるクッキー(Cookie)の利用 

結論から言うと、Kaizen Platformではファーストパーティークッキーを使用しています。

当社ではサイトの改善をおこなっており、「お客様ご自身のサイトを改善する」目的なのでファーストパーティークッキーを使用しているのです。

※ Google Analyticsも「お客様サイトの計測をする」目的なのでファーストパーティークッキーを使用しています

実際の仕組みとしては、Kaizen PlatformのJavaScriptを設置していただくと

・JavaScriptでファーストパーティークッキーとして必要な情報を書き込む
・JavaScriptでその情報を読み込んでKaizen Platformのサーバーに送信する
・Kaizen Platformのサーバーで必要な処理(ABテストなど)をして結果を返す
・JavaScriptがその結果に応じたデザイン案をページに反映する

という流れになります。

広告とクッキー(Cookie)

サードパーティークッキーを使って複数サイトをまたがってユーザーを識別(=トラッキング)する仕組み

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広告は「ターゲティング」や「効果測定」のためにサイトをまたがってユーザーを識別する必要があります。これを実現するために、サードパーティークッキーを使用しています。

オーソドックスなのは、広告サーバーの画像やJavaScriptをいろんなサイトに埋め込み、情報を収集する方法です。

ここで集めたデータ(閲覧しているサイト、ページ等)を利用し、ユーザーの性別の推定などを広告サーバーが行ったりしています。

これを使って実現されているもの

・DMPなどのデータ収集関連とそれを利用したターゲティング配信
 →リターゲティングやDSPもこれによって実現されています
・ビュースルーコンバージョン(View Through Conversion)の測定
・アトリビューションの測定

などなど

なぜクッキー(Cookie)が嫌われるのか?

「ユーザーがどんなサイトをいつみているのか」が(サードパーティー)クッキーを使うと全部収集できてしまいます。

そしてこの情報収集はユーザーが認識できないうちにひっそりと行われてしまいます。どんなクッキー(Cookie)が誰に送信されているかを確認してからサイトの閲覧をしているユーザーはほぼいないと思います。

昨今プライバシーに対する意識が世界的にも高まっており、こういったクッキー(Cookie)の利用はとても嫌われるようになってきました。

わかりやすいのは「リターゲティング」といわれる広告で、一度訪れたサイトの広告が他のサイトを見ていても延々と表示されて「追いかけられている」と感じるような体験です。

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禁止されていくサードパーティークッキー

・AppleとGoogle
冒頭にも書きましたが、AppleがITP (Intelligent Tracking Prevention) という仕組みを自社ブラウザであるSafariに導入し、広告目的のクッキー(Cookie)の使用が制限され始めました。

Appleは昔から広告に対しては距離をおいている会社(※あくまで主観ですが)なので、かなり積極的にこの対応を進めてきています。

しかし、Googleは広告に対して積極的な会社なので、Chromeにはこの制限は入っていませんでしたが、今回の発表でChromeでも同様の制限が近い将来導入されることになりました。

抜け道はいずれ閉じられていくと思います

リンクデコレーションという手法を使ったりしてファーストパーティークッキーに書き込み、上述のブラウザの制限を回避するような努力が各所で行われていますが、Appleもこういう抜け道を潰す活動を続けています。

Appleは矢継ぎ早にITPの新バージョンを出してきて、どんどん対策の精度が上がっていっています。

実際に、広告関連の会社の方と話していると
「今回のAppleは一味違う、中に広告に詳しい人がいるに違いない。痛いところを的確に潰してくる」とおっしゃっていました。

なので、(実際にはサードパーティークッキーを使用していない抜け道的な手法も含めて) これまでサードパーティークッキーで実現されていた仕組みは近い将来ほぼ全てが使えなくなる、といっていいと思います。

デジタルマーケティングの未来予想図

端的に言うと「ガチガチのストロングスタイルでの戦い以外は許されない世界になる」と思います。

リターゲティングのようなユーザーに嫌われるマーケティング手法は相当下火になっていくと思われます。イタチごっこは暫く続くと思いますが、時間の問題だと思います。

Facebook、Google、Amazonのような「巨大メディア」は自社サイトのトラフィックが多く、かつファーストパーティークッキーでのユーザー認証を行っているので、こういったメディアでのみ広告のターゲティングが機能するようになるでしょう。

したがって、高い広告効果を狙うならば、Facebook、Google、Amazonに正攻法で広告を掲載するしかなくなっていく可能性が高いです。

これらのメディア以外では、コンテキストターゲティングと言われるターゲティング手法に切り替わっていくと思われます。まさに「人から枠へ」が起きるのではないでしょうか。

アドネットワークはユーザーターゲティングよりネットワークに参加しているメディアの質が効果に起因する要素が大きいので、あまり大きな影響を受けないと思います。

DSPやDMPはかなり苦戦をしいられるのではないでしょうか。

また、今までリターゲティングなどに回していた予算は、SEOやサイト・ランディングページの改善に使うことでCPAとLTVを改善していく必要性が上がってくると思われます。

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