オイシックス奥谷孝司氏が語る経営とマーケティングの理想的な関係
オイシックス奥谷 孝司さん対談 前編
「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。
第一回目はオイシックスで統合マーケティング部、店舗特販事業部を管掌し、Chief Omni-Channel Officerを担当している奥谷孝司執行役に、リクルート時代に「マーケティングの面白さを知った」と語るKaizen Platform代表、須藤憲司が率直な疑問を投げかけました。
第1話では「マーケティングとはどうあるべきか?」。
経営とマーケティングの関係性について、奥谷さんはどう実践してきたのかをうかがいました。
動いている時代で意思決定をReマインド
須藤:
奥谷さんと岩井琢磨さんが書いた「世界最先端のマーケティング」を読みました。読みながら、言いづらいこともはっきり示していて勉強になりました。
奥谷さん:
なんだか仰々しいタイトルですみません。
僕が提案したのは「顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略」、サブタイトルのほうです。マーケティングの現象を捉えているのでこのタイトルも率直でいいかなと考えました。
須藤:
まさにいま起きている事象を捉えていますよね。普通の会社が「マーケティングを取り入れていこう!」と考えたとき、経営レベルで難易度の高い意思決定をしないと難しい。
奥谷さん:
書籍を読んだ人から「わかるけど…理想だよね」という意見も聞いています。
須藤:
真剣にマーケティングを考えたとき、経営者は犠牲を払わないといけないんだなと感じることが多いんです。「理想だよね=やるのは怖い…」という気持ちも理解できます。奥谷さんは、実践者、マーケターとしてどうやって経営層の意思決定を助けて、会社を動かそうと考えていますか?
奥谷さん:
私も「理想だよね」という意見は理解できるんです。
デジタル領域が盛り上がっていますが、まだ90%は「店舗で買う」。だからと言って経営者がオフラインに固執していれば乗り遅れてしまいます。デジタルはオフラインの対極ではない、「サポートする仕組みが作れる」ことに気付いて欲しい。経営者がデジタル、消費者行動へのインサイトを考える時代が来ているんです。
須藤:
「でも店舗で働いているスタッフの意見だと…」と合議で考えていると意思決定ができなくなってきます。トップが「こうする」と決めて、それに従って動いてくれるチームを守る。そんな組織を作るのは確かに「理想だよね」。奥谷さんは「でも、現実にできることなんだよ」と書籍の中でエールをおくっているようにも感じました。
奥谷さん:
そうですね。そんな経営者が増えて欲しいです。
経営が「これはいくら儲かるんだ?」と言っていたら儲からないんですよ。AmazonもAmazon Goなどを出していますよね。彼らの主戦場はオンライン。オフラインの世界に結びつこうとしていると考えれば、金額には出ないけど価値を感じ取れますよね。
須藤:
Amazonのような企業はどれぐらいそろばんを叩いているのか気になります。これは想像なんですけど、「この金額までは“損益”ではない」と決めてチャレンジしている気がしています。
奥谷さん:
尾原和啓さんが提案していた「DCPA」ですよね。チャレンジしてみて「ダメならやめればいい」という発想。
須藤:
あのやりかたは日本では周りを説得できない。だから「理想だよね」と思ってしまう経営者がいるのかもしれません。ただ、マーケティングを考える上では目をそらせません。
奥谷さん:
ホームランバッターは盗塁を積んでいく守り型のチームに合いませんよね。僕もオイシックスでいろいろやらせてもらっていますが、ゼロイチで考えたとき「育つイチか育たないイチか」の見極めを大事にしています。その見極めも含めて、「お前に任せるよ」と任せられるような人を経営の近くに置かないといけないと考えています。
→中編「マーケティングに向いている人物とは?」
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