見出し画像

「何度言ったらわかるの!」の答えは532回です

坪田 信貴さんインタビュー 第2話(全3話)

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

今回は、坪田塾の塾長、「ビリギャル」の著者として知られ、須藤が「ナチュラルボーンマーケター」と語る坪田信貴さんにお話しをうかがいました。

第2話では「『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』の真髄」。
あの山本五十六の有名な格言を、坪田さんは実際に子どもたち相手に実証。その結果見えてきたことについてお話しをうかがいました。

2~3回言っただけで、「物覚えが悪い」と言われるのは理不尽

須藤:
実は坪田さんに絶対に聞こうと思っていたことがあります。口で「言うだけ」で子どもたちを教えられるかどうか、“実験”されたそうですね。

坪田さん:
そうなんです。あの山本五十六さんが言った「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」とはどういう意味なのか。200人くらいの子どもたちをグループ分けして比較検証してみたんです。

須藤:
それです!山本五十六テスト!

坪田さん:
大人はよく「何度言ったらわかるの!」って子どもに言っちゃいますよね。恥ずかしながら僕も塾の子どもたちに同じことを言っていました。じゃあ何度言えばわかってもらえるのかな。結果は平均532回でわかってもらえました。これに対して「やってみせた」グループは平均2~3回、勘のいい子は1回でわかってくれました。

須藤:
差は歴然ですね。

坪田さん:
実は「何度言ったらわかるの!」は、「2~3回言っただけ」なんです。あと530回は言わないと伝わらないのに、「この子は何度(2~3回)言ってもわからなくて物覚えが悪い!」と判断してしまう。こんな理不尽なことはありませんよね。

須藤:
たしかに叱られる子どもにしてみれば、たまったもんじゃない。

坪田さん:
一方で、「やってみせた」グループがなぜ平均2~3回でできるようになったのかも気になりました。山本五十六の言葉で言えば「やってみせ」。この一言は、世間一般的に「上に立つ者こそが率先して動くべき」「背中で語れ」といったリーダー論として認識されています。でも、子どもたちを見ていたら「違うのかもしれない」と思ったんです。

「やってみせ」は、明確なシニフィエを見せること

須藤:
山本五十六は「やってみせ」を一番最初に持ってきていますよね。やはり、最初に「見本を見せないといけない」という意味合いなのかなという印象です。

坪田さん:
須藤さんは「シニフィエ」と「シニフィアン」という考えかたを知っていますか? 簡単に言えばシニフィエが映像、シニフィアンは記号です。例えば「海」というシニフィアンが与えられたとき、須藤さんは何を思い浮かべますか?

須藤:
遠くに船が見えているイメージですね。

坪田さん:
沖縄の人だったら真っ青なブルーオーシャンを想像し、網走の人は流氷の海を想像するかもしれません。東京の人ならお台場の海浜公園を想像するかも…つまり、頭に浮かぶ映像は人それぞれなんですよね。したがって「やってみせ」とは、シニフィエ、映像を共有するために「手本が必要だ」と仰っていたのかもしれない。この仮説を確かめるために、子どもたちに「四角形の上に三角形を描いてみて」と課題を与えてみました。

須藤:
さっと思い付くだけでも、四角の上に三角形を描いたり、四角形の中に三角を描いたり、立体的に描いたりといくつもパターンが浮かびます。

坪田さん:
実際、子どもたちの回答も人それぞれ。当たり前ですよね。シニフィアンに対して、シニフィエは人それぞれになるからアウトプットも違ってきます。それを踏まえて、もう一度、「何度言ったらわかるの!」について考えてみましょう。須藤さん、コピーとってきてもらえますか?

須藤:
カラーでいいんですか?ホチキスで留めますか?

坪田さん:
「そのぐらいわかるだろう!自分の頭で考えろ!」なんて言えません(笑)。「何度言ったらわかるの!」は、「わかっている人」の言葉なんです。カラーかモノクロか、ホチキスで留めるかも自分はわかっているから「コピーとってきて」のシニフィアンで相手にシニフィエも伝わると思ってしまう。

須藤:
つまり、シニフィアンだけで伝えるのは532回必要、シニフィエの統一を行えば2~3回で伝わるということですね。

坪田さん:
そうなんです。だから、山本五十六さんも最初に「やってみせ」、次に「言って聞かせて」を持ってきたのかもしれません。リーダーは「コピーとってきて」の一言“だけ”でも「坪田は多分こういう意図で言っている」と周りが考えて動いてくれるような環境を作るのではなく、「コピーとってきて」の一言でも「前に坪田が完成型を見せてくれたな」と的確に行動できるように映像イメージ、見本を提示することが求められているのではないでしょうか。

画像1

教育もマーケティングも本質はまったく同じ

須藤:
坪田さんの教育スタイルは、まさにマーケティングそのものですね。メッセージを的確に相手に伝える、シニフィエを揃えることがマーケティングの本質です。例えばジャパネットたかたの創業者である高田明さんは、シニフィエを揃えるのがとてつもなく上手でした。課題を解決した姿を相手に思い浮かばせることができれば、マーケティングは完了なんです。

坪田さん:
須藤さんって、本当にびっくりするくらい僕と考えかたがそっくりですね!まったくもって、そのとおりです。僕が講演するとき、高田明さんのことをよく取り上げています。普通のCMは、自分たちが「売りたい」製品の機能や価格のことばかりアピールしていますよね。高田明さんは必ずその製品を使ったシチュエーションを力説しています。「高田さんはシニフィエを伝えてるんですよ」と。

須藤:
おじいちゃんおばあちゃんに「300万画素!」と言ってもデジカメの良さは伝わらない。だから、高田さんは「お孫さんの笑顔が綺麗に撮れます!」と話す。第1話でも触れましたが、売ることばかりに集中してしまって「売った、その先」を描き切れていない人がいる。僕はここに危機感を持っているんです。

坪田さん:
「売る」ことが幸せにつながるのは確かですが、「売る=幸せ」ではないかもしれない。人間にとって一番大切なことは幸せになることだと考えています。そのためには何が大事なのか。まず自分にとっての幸せとは何かを定義し、将来を思い描き、それに向かって自立していくことが必要です。僕はこの幸せが「売る」ではなく「売った、その先」にあると伝えたい。教育の役割は子どもたちにその力に気付いてもらう、身に着けてもらうことだと考えています。

須藤:
教育のコミュニケーションも、マーケティングのコミュニケーションも、本質はまったく同じ。坪田さんのお話を伺って、僕も確信を持つことができました。


Kaizen Platformは、デジタルトランスフォーメーションの専門家集団です。ご相談は、こちらからお気軽にどうぞ!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!