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意志をもってブランドを選ぶ消費者に企業はどうついていくか【デジタルによって変化した消費者動向レポート】【前編】

書籍『DX入門』を上梓した須藤憲司を講師として6月からスタートするNewsPicks×Kaizen Platform『DX人材養成講座』のプレイベントがオンラインで行われました。

講師にお迎えしたのは、JaM Japan Marketing LLCの共同創設者&マネージングメンバーの大柴ひさみさん。大柴さんは現在アメリカを拠点に、アメリカ市場をターゲットとする日本企業の製品開発やグローバルに向けてメッセージを発する企業に対してコンサルティングを行っています。

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コロナウィルスの影響によって、外出が制限されはじめ、セールスやマーケティング活動など企業のビジネスのあり方もがらりと変わっていく様相を呈しています。デジタルによってどのような変化が起こるか、あるいは企業はデジタルを使ってどうビジネスを大きく変えていかねばならないかの瀬戸際に来ています。

この大きな変化について、私たちはどのようにとらえ、どう考え方をシフトすればよいのでしょうか。

◎当記事はこんな人にオススメ:
・これから自社のDXについて考えていく必要のある責任者、担当者のみなさま
・デジタルのトレンドについて理解しておく必要のあるマーケティング責任者、担当者のみなさま
・DXやデジタルマーケティングに関わる代理店、ベンダーのみなさま

※なお、本セミナーは3月19日(日本時間)に行われたもので、コロナウィルスなどに関する情報はその時点での情報であることをご了承ください。

自らブランドを選択する「意志ある購入者」が増えた

―― 今日、大柴さんには、アメリカのGen Z (Z世代) & Millennials(ミレニアル世代)が牽引する新たな価値観と消費者行動についてお話いただきたいと思います。よろしくお願いします。

※Gen Z & Millennials……2020年時点で15~38歳くらいまで。1981~96年ごろに生まれた人が「ミレニアル世代」、1997年〜2012年ごろに生まれた層が「Z世代」と呼ばれている

大柴:グローバルにおいて今一番ホットなキーワードは「ジェンダーニュートラル」です。今の時代、ビジネスをする上でジェンダーについてとやかく言うことがそもそもできなくなっている状況です。

例えばNikeはもともと人種差別に反対するという立場を取り、Gen Z & Millennialsから絶大な支持を得ていましたが、2019年10月、契約していた陸上選手のAllyson Felixが妊娠したとわかった途端、契約フィーを70%カットしたことで大きく批判されました。彼女はそれに抗議して、New York Timesに自ら意見広告を出しました。

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一方イギリスでは、ジェンダーニュートラルな社会にするためには、コンテンツそのものに原因があるという捉え方をしていて、ジェンダーニュートラルではない広告を展開している企業が処分される方向へと変わってきています。

さらに欧米の女性たちが憤りを感じているのは、広告で描かれる女性像がリアルな自分たちとかけ離れていること。世の中の多くの広告には「女性はそれぞれの美しさがあるから、ありのままの自分の容姿に自信を持ちなさい」というメッセージであふれ、女性は「エンパワーメントの対象」になってしまう。いわゆる“フェミニズムっぽい広告”「Femvertising(フェムバタイジング)」の中で、エンパワーメントを押し付けられることに対して嫌悪感やうっとうしさを感じているんです。

企業は新たなPurposeを発見すべき

―― なぜ広告や企業ブランドに対する風当たりがここまで強いのでしょうか。

大柴:それは、グローバル市場で「Belief-driven buyers」(信念主導型の購入者)が増加しているからです。自分の信念や価値観に合った企業を応援したいと考える生活者が増えているのが実情です。

自分が意志を持って主体的に選ぶブランドに対しては余分にお金を払うし、選ぶに値しないブランドならば容赦なくチェンジする。仮に支持していたブランドでも、社会及び自分の価値観に反することが起これば、購入をボイコットまでする。そんな「自ら選択する意志のある購入者」がとても増えています。

中でも特にアメリカの人口の約半分を占めるGen Z & Millennialsは、「Social issues」を打ち出す企業やブランドを高く評価する傾向が強いんです。「Belief-driven buyers」がたくさんいる以上、企業は社会に対する姿勢を示さなければならない必要性に迫られています。

―― 生活者の変化は、企業姿勢にも変化をもたらしますね。

大柴:そうです。こうした「Belief-driven buyers」が増えたことに呼応して、企業側も「Purpose-driven companies」(目的意識の高い企業たち)が増えています。

2019年8月にアメリカのNPO法人Business Roundtableに参加した181社のCEOたちは「Statement on the Purpose of a Corporation:企業のパーパスに関する宣言)」という公開書簡を発表しました。現代の企業は、株主至上主義から脱却し、コミュニティ、顧客、社員、ベンダーなど「ステークホルダー至上主義」に大きく舵を切っています。

Diversity & Inclusivityという特徴を持つZ世代

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―― こうした企業の動きを支えているGen Z & Millennialsという世代について、特徴を教えていただけますか。

大柴:Gen Z(1997年から2012年生まれ)について言えば、最もDiversity(多様性) & Inclusivity(包括的)に富んだ世代だと言うことができます。彼らは幼い頃から日常的に性別、性的嗜好性、人種などの全てにInclusiveであろうとし、人権、女性の権利、人種平等を重んじます。子どもの頃から多様な人々がごく当たり前に周りにいて、容姿や出自、考え方が違っても人はみんな同じなんだという思いを強く持っています。

しかも、生まれた時からテクノロジーにアクセスしているので、問題があると思えば、即座にソーシャルメディアの力を使って、社会変革を求める行動を起こす世代です。

Gen Zの代表格としては、スウェーデンの17歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんがあげられます。彼ら・彼女らは、今すぐに社会問題を解決しないと、未来がなくなるという切迫感をもって、ソーシャルメディアを通じた活動を行っています。

彼らの特徴は、日々不安を抱えて生きているということ。アメリカでは毎日のように銃撃事件が起きていて、学校では防弾チョッキを着る訓練もあれば、銃撃犯が校内に侵入した際の動き方などのレクチャーもある。そんな風に、日常的に銃暴力もあれば、テロもあるし、戦争や今回の新型コロナウイルスのようなパンデミックにも巻き込まれる。ひどい環境汚染で竜巻や大きな山火事の脅威も目の当たりにしてきた世代です。

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Gen Zたちは、サステナビリティをとても重視します。Forever 21の倒産を代表とするファストファッションブランドが終焉を迎え、リサイクル・リユースの動きが活発化してきたことからそれらがわかります。H&Mでは2013年以降、着なくなった自社製品の回収・再利用を行い、adidasは2024年までに全てのポリエステルをリサイクルされたポリエステルへ替えることを表明しています。

一方で、メキシコのアントレプレナーが生んだヴィーガンレザー「Desserto」は動物を犠牲にすることなくサボテンから生まれた革をつかって靴や財布といった革製品をつくり、大きな支持を得ています。また、環境意識の高まりに伴い、洗濯回数をへらすウォッシュレスな洋服ブランドが続々と登場し、新しいファッションのうねりを生み出しています。

人間を支配するGAFAの勢い

――GAFAに関しては、アメリカではどのような状況ですか。

大柴:ニューヨーク大学のマーケティングの教授Scott Gallowayが著した書籍「”The Four: The Hidden DNA of Apple, Amazon, Facebook, and Google”」によれば、人間はもはやGAFAに支配されていると言います。

Google: ブレイン(ナレッジ)
Facebook: ハート(人間関係)
Amazon: ストマック(消費行動)
Apple: プライベート(異性への性的魅力 ※Apple製品を持つことで異性に自分の魅力をアピールできる)

過去10年間で、GAFAの時価総額は300%以上も成長し、中でもAmazonは1348%も増加しました。ただ、新型コロナウィルスによって株式市場は混乱を極めているのはみなさんもご存知の通りで、2020年2月24日は「Blue Monday」となり大幅に株価を下げました。コロナショックの最も影響を受けたのはAppleで、中国市場と中国のサプライヤーに依存していることが大きな懸念点となりました。

GAFAはそれぞれの強みでこれからも躍進

大柴:では、GAFAについて一つ一つ見ていきましょう。

まずGoogleについてはこの新型コロナウィルスの影響下でも、YouTubeがいかに人々の生活に根ざしているかということを浮き彫りにしました。私自身、自宅にいる間YouTubeを見ている時間が増えていると感じます。2017年からYouTubeの広告レベニューは86%も増加しています。

Googleはユーザーのプライバシー保護のため、位置情報を取得する際は事前承認が必要であるというポリシーに変更しました。このことにより、不必要な位置情報収集や、位置情報を起点としたリターゲティング広告を闇雲に展開することができなくなっています。

続いてAppleは、Apple Pay、Apple Music、App Storeなどのサービス部門の急成長には目を見張るものがあります。このサービス部門だけで、2019年は460億ドルの売り上げを記録しました。アメリカでも日本同様、モバイルペイメントのユーザーが急激に増えていてApple Payは3030万人と市場の約47.3%を占めています。

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Facebookについては、アメリカのSNS広告においてほぼ一強状態。この状態はこれからも継続するでしょう。2021年にはFacebook広告のグローバルセールスは950億ドルに達すると言われています。Facebookの懸念点は、ユーザーの高齢化が進んでいるところ。2019年米国人口の55歳以上の浸透率は53%にも及んでいます。

実は私自身も、家族や親戚づきあいだけのために私の本名の英語名のFacebookアカウントを持っているんですが、そちらでつながっている友だちは60~80代。Facebookはダサいと思っていても、「祖父母と写真をやり取りするためにアカウントを持っている」という若年層が多いんですよ。

また、データ漏洩問題が起こって以降、Facebookの個人情報保護に関する不信感が噴出しています。Facebookはなんとかして金融市場に食い込もうと仮想通貨「Libra」を発行しようとしていますが、この安全性についても大きな疑問符がついている状態です。

さて、Amazonにいきましょう。AmazonはPrimeメンバーに対して、翌日・翌々日に商品を配達するというスキームに無理が生じています。その代わり躍進しているのが、クラウド部門。グローバルのクラウド市場960億ドルの中でも、AmazonのAWSはQ4で33%のシェアを占めています。

さらに、Consumer Packaged Goods (CPG)市場は、Amazonのブランド製品ではなく他社製品が主流。Amazon-branded CPGは81%増と急成長しているが、米国CPGセールスのわずか1%に過ぎず、それゆえにその潜在的成長への期待は大きい。Amazonのニーズは日々高まってはいるものの、配達員や倉庫の作業員など従業員に感染者が出る可能性も否めず、またニーズの急増により配達員の確保もままならないため供給がストップしつつあるような状態です。キャッシャーレス店舗であるAmazon GOは自社のみで店舗数を拡大するには限界があるため、空港や映画館を含めて多数店舗を持つ他企業との連携を模索しています。

オンラインでオーダー、リアル店舗へ取りに行く

―― 今、Amazon GOの話が出ましたが、アメリカのO2Oについて最新動向をお教えください。

大柴今、アメリカのトレンドは「click-and-collect」つまりオンラインでオーダーして、店舗でピックアップとなっています。日本でも無印良品などが導入している仕組みですね。家で配達を待っているより、車で外出したついでに店舗へ行ってピックアップしてしまおうと考える人が多いんです。このムーブメントによってWalmart(スーパーマーケットチェーン)、Target(ディスカウント百貨店チェーン)、BestBuy(家電量販店)、Kohl’s(百貨店小売チェーン)などが「click-and-collect」を導入した結果、オンラインの売り上げが急激に伸びました。

最近は、AmazonのWalmart化、逆にWalmartのAmazon化が著しく、WalmartがECを強化してオンライン販売や広告収入に力を入れる傾向が強くなっています。

Gen Zがよく使うメッセンジャーアプリはSnapchatですね。WhatsAppを使っている子もいますが、Facebookのメッセンジャーは使っていません。みんな楽しいことをやりたがっていて、Snapchatは自分を良く見せるとか見栄を張るとかいうより、遊び心のある感じにハマるみたいです。

Millennials & Gen Zは半数以上がソーシャルメディアでファッションを購入したことがあり、ソーシャルコマースも活発に行われています。インフルエンサーマーケティングにおいて、ユーザーとのエンゲージメントが高いのはアメリカでもInstagramです。これからは闇雲にインフルエンサーに発注するのではなく、自社やブランドに合った適切なインフルエンサーを見極め、かつ自社のことを愛してくれるインフルエンサーを起用するフェーズに入ってきています。

Gen Zにとってソーシャルメディアとは、「Hang out and chat with friends」(遊んでしゃべって楽しい)場所です。Gen Zは友だちとの会話の中で出てきたブランドにインスパイアされ、購買意欲が刺激されます。つまりGen Zに深くエンゲージメントできたブランドほどソーシャルメディアでも広まっていくのかなと思っています。

アメリカではショッピングモールに人はどんどん行かなくなりました。ナショナルブランドが多く、Gen Zが好むようなサステナブルなブランドや個性的なブランドは入っていないからです。

Gen ZにとってはInstagramが「自分だけのたった一つのショッピングモール」になりつつあります。自分が好きなブランドをフォローすれば、好きなアイテムや好きな投稿が流れてくるので、楽しいショップができあがるというわけ。この時、企業側が気をつけるべきは、オリジナリティのあるオーガニックな投稿を心がけること。そのブランドらしい美的センスのある写真やビジュアルを重視し、ペイドメディアへ誘導する時も同じテイストを維持する。すべてのコンテンツを一貫性のあるものにすることが重要だと、InstagramコマースでうまくいっているスタートアップブランドのCEOたちはそう、口をそろえて言います。

これからのマーケターに必須の「6Cs」

――最後に、これからのマーケティングに必要な考え方についてお教えいただけますか。

大柴:ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授が研究生活において大切にしてきた「6Cs(シックスシーズ)」という考え方をご紹介したいと思います。

Curiosity(好奇心)を忘れず、
Courage(勇気)を持って、
困難な問題にChallenge(挑戦)し、
必ずできるというConfidence(確信)を持ち、
全精力をConcentrate(集中)して、
諦めずにContinuation(継続)させること

この考え方は、これからのマーケターに必須です。万国共通で、業界・職種問わず必要な極めてオーセンティックな考え方ですし、私の40年以上のキャリアにおいて常に大切にしてきたことでもあります。これをずっと、言い続けてきたし、これをやり続けなければビジネスもプライベートもうまくいかないでしょう。日本のマーケターの皆さんも「6Cs」を胸に、堂々とマーケティング活動に取り組んでほしいなと思います。

ゲストプロフィール
大柴ひさみ
JaM Japan Marketing LLC
共同創設者&マネージングメンバー
サンフランシスコ・シリコンバレーを拠点に、日本企業の米国市場向けの製品開発やマーケティング戦略の開発実施、 市場消費者調査を提供。16年間の電通Y&R勤務後、1995年米国移住、1998年JaMを設立。クロスカルチャーなナレッジを基にした「リアルな米国マーケティング事情Insight」は高い評価を受けている。著書にはひつじ書房刊『ひさみをめぐる冒険』、東急エージェンシー刊『YouTube時代の大統領選挙米国在住マーケターが見た、700日のオバマキャンペーン・ドキュメント』がある。
須藤憲司
株式会社 Kaizen Platform Co-founder & CEO
2003年に早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。その後、2013年にKaizen Platform, Inc.を米国で創業。
現在は日本、US、韓国、台湾の4拠点で事業を展開。WebサービスやモバイルのUI改善する「Kaizen Platform」、動画広告改善の「Kaizen Ad」、世界40ヶ国10000人以上のネット専門人材ネットワークからクラウド上で企業のデジタルマーケティングチームを提供する「Kaizen team for X」を提供。著書:『ハック思考』『90日で成果をだすDX入門』

お知らせ

6月開講予定  NewsPicks × Kaizen Platform「DX人材養成講座」

DXとは何かといった基礎知識から、具体的なDX計画の策定方法、企業のDX戦略事例までを完全網羅。DXの専門家Kaizen PlatformのCEO 須藤憲司氏が講師を務める、次の日から一流のDX人材になるための全6回講座が2020年6⽉よりスタート予定。ご興味のある方はエントリーをぜひお願いいたします!

(文:石川香苗子、編集:Kaizen Platform公式note)


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