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「誰を笑顔にしたいのか?」が説明できたら良いアイデアなんじゃないか

野林 徳行さんインタビュー 第2話(全4話)

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

第三回目はリクルート、ブックオフ、LAWSON、レッグス、FiNC、鎌倉新書で「誰かの笑顔」を追い求めてきた野林徳行さんに、「のばさんには考えかたの基礎を教わった」と語る須藤憲司が日々の疑問や昔野林さんに言ってもらったことについて質問しました。

第2話では「マーケティングに必要なこととは?」。

昔、野林さんに「マーケティングの前にターゲティングだ」と言われた須藤が、その真意を深掘りしました。

マーケティングの基本はトコトン観察をすること

須藤:
のばさんに「観察」について聞きたいと考えていました。著書のタイトルも「とことん観察マーケティング」でしたよね。観察をすることで何が見えるんですか?

野林さん:
「誰に笑顔になってもらいたいか」が見えてくるよね。昔、須藤にも言ったけど、マーケティングの前にターゲティングが大事。「この人を笑顔にしたい」があれば、そのためにどうすればいいかってアイデアが出てくる。観察をすることで、この笑顔になって欲しい「誰か」が見えてくるんだよ。

須藤:
「マーケティングの前に考えることがあるだろ。誰に喜んでもらいたいんだ。ターゲットは誰だ」って言われましたね。

野林さん:
ゼクシィの付録だった「花嫁すぎるゴム手袋」って覚えている? ゼクシィには「ゼクシィ花嫁1000人委員会」があるけど、Webアンケートだけじゃなく本当に1,000人の花嫁に「これについてどう思いますか?」と直接聞いている。「結婚のために貯金していて同棲していました」「本当は新婚気分でいたいんですけど、ゴム手袋とか生活感出ちゃうと幻滅しちゃう…」と話しを聞いていると、だったら可愛いゴム手袋があったらどうだろうってアイデアが出てくるよね。

須藤:
その発想ってWebアンケートだけじゃ出てこない気がします。回答者も「ゴム手袋が欲しい」と思ってないでしょうし。

野林さん:
ポロっと出てきた言葉がヒントになる。「だったらこういうものがあったらどう思いますか?」「すごい欲しい!」、それを販売してみたら実際に買ってもらえる。そして、数字として出てくる。

須藤:
あのときのゼクシィはものすごくヒットしましたよね。ゼクシィって世界イチ重い雑誌でギネスブックに載っているので、付録だけ買って雑誌を置いていった人もいたって聞きました。雑誌も持っていってよ…(笑)。

野林さん:
広告代理店だったら「若い女性に人気のメーカーとコラボしたトートバックはどうですか?」と提案するところだけれども、それなら他の女性誌でもいいじゃない。ゼクシィは編集部が「あの子たちは何を欲しがっているのか」を知っていて、「この読者に笑顔になってもらいたい」と思い浮かべながら仕事をしているから、よくやっているコラボトートバックは必要ないよね。

須藤:
本当ですね。僕はカイゼンプラットフォームのユーザーさんともすぐFacebookで友だちになっちゃいます。めちゃくちゃクレームをもらうんですけど、そういう“声”が意外な場外ホームランに繋がることがあるんですよね。そういえば、のばさんはガテンのとき、ドライバーの家に飲みに行ってましたよね。

野林さん:
ドライバーの人って忙しいし、インタビューに馴れてないんだよ。土曜の休みのときにグループインタビューすると、わざわざスーツを着てネクタイまで買ってきて締めて現れる。「お仕事はこんな感じですか?」「あーまぁそんな感じですね」じゃあ全然実態がつかめないから、「良かったら奢りますんで焼肉行きませんか?」と誘ってみると「じゃあうちに来ませんか?」と言ってくれる

須藤:
まぁそうなりますよね(笑)。

野林さん:
自宅にうかがうと、旦那さんと同じスウェットを履いた奥さんと子どもが出迎えてくれるんです。飲んでいると「実は二人目ができるんだけど、収入が少ないから大型免許をとって収入を増やしたい」と話してくれる。それじゃあ…「大型免許を早く取れる」特集記事を考えるよね。

須藤:
2009年に休刊になりましたが、ガテンは勢いがありましたね。

野林さん:
紙媒体がネットに移行したらSEOとか考えることが増えるけど「転職は考えてないけど、ガテン見ちゃうよね」と言ってくれるファンをどう作るかって考えるところは同じ。それを見失うと「効率的に効果が出やすい」手法に飛びつくようになり、ベンチャーとの差別化がなくなってしまう。むしろ負けてしまう。効果が微妙になってくると、値引き競争しかできることがなくなってくる

須藤:
「トラックドライバーはめちゃめちゃ朝早いぞ」って話してくれたのを覚えていますか?

野林さん:
高速道路を使うドライバーはまだ暗い、始発すら走っていない時間に出かける。ガテンの読者はだいたい5時半、6時半の天気予報を見てから出かける人が多い。

須藤:
雨だったら道が渋滞するし、現場は中止になっちゃいますもんね。つまりは、ガテンで笑顔になって欲しい人は早朝の天気予報を必ず見る

野林さん:
だったらその時間にはどうしてもガテンのCMを出したいよね。最初は「狙ってCMを出すことはできません」と言われたんだけど、「枠がある以上、物理的にはできるよね」と交渉する。それでもダメだったら、もう「御社にこれだけ発注しているんだから」と使えるものを使ってお願いしていく、「できました!」って言ってくれる。

須藤:
僕に「土日ダイエーに行っているか?」って聞いたこと覚えていますか? 行っていませんと返したら「お前生きてないぞ。普通の生活者がやっていることをやっていないヤツがマーケティングなんてできない」って言われたんです。だから、土日はダイエーに行ったし、3年間で2,000店ぐらい本屋もまわりました。

野林さん:
須藤は入社してすぐ渋谷のブックファーストに一ヶ月研修に行ったよね。

須藤:
普通のアルバイトと一緒に働きました。あの研修で気付いたことは多いです。本や雑誌って社員が並べているんじゃなくて、アルバイトが並べていた。アイドルの写真集が出ると行列ができるんですけど、「あの人が売れているんだ」って気づけた。純文学を担当していたんですけど、棚を見ていれば「この人が売れているってことは人気なんだ」とも気づける。

野林さん:
レジを打っているとマーケティング力がつくって言うよね。今日何冊売れたとかもわかる。

須藤:
そうなんです。伝票だけ見ていると単なる数字や記号にしか見えなかったのに、自分で本を売り場に出して、お客さんや棚から「これが人気なんだ」を教えてもらっていると数字や記号の意味が見えてくる。「あれの積み上げがこの数字になっているんだ」が見えてきたら仕事も楽しくなってきました。

野林さん:
LAWSONにいたとき、知り合いのオーナーに頼んで夜勤をやっていたんだよ。本の返品って大変だな。夜中にはこんな人が来るんだな。それがアイデアに繋がる。やきそばはマヨビームじゃダメなんだよ。やきそばを棚に戻したおじいさんを追いかけて話を聞いたら「やきそばにマヨビームはおかしい」と話してくれた。だったら横に袋でつけておけば、マヨネーズはサラダとか普通に使えるよね。

須藤:
当時のLAWSONは地方に出店していることが多かったですよね。「東京の若い人にはコレがウケるから」で考えていると、ターゲットがブレてしまいます。

野林さん:
マヨネーズをとめているテープに「レンジに入れるときは剥がそう」と書いておくとか。レンジにそのまま入れると爆発しちゃうからね。これはチープだし地味だけど、成果が出ているアイデア。「誰を笑顔にしたいのか」を考えていると確実に成果が出る。「それは誰を笑顔にしたいの?」「誰の心を揺らせるの?」、そう聞いて答えられたらかなり良いアイデアなんじゃないかな。

→第3話「『知りたい!』、興味を持って”観察”すること」に続く


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