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リテール×SNSは店頭販促の新たなスタンダードになるのか。店頭売上300%増を実現したTikTok連動施策の裏側

Kaizen Platformでは、顧客体験DXを掲げ、Webサイト改善や動画広告の効果改善など、デジタル領域における様々な課題解決に取り組んでいます。

そんなKaizen Platformでは、SNSと店頭の商品棚やリテールメディアを連動させ、認知・話題化から来店・購買までを一気通貫で支援する新しい販促サービス『KAIZEN RETAIL SNS』をリリース。第一弾の取組みとして、ラフラ・ジャパン株式会社(以下、ラフラ)の販促プロモーションを支援させていただきました。

ユニリーバのグループ会社であり、自社ブランドの化粧品等の企画・開発・販売を行うラフラ。今回、TikTokと店頭のリテールメディアを連動させた本施策によって、店頭売上は昨対比で300%増を実現しています。

そこで本記事ではラフラ 代表取締役社長 木村元様、そしてKaizen Platform 代表取締役 須藤憲司が、本施策の振り返り、またリテールメディアとSNSの可能性について語りました。

商習慣と消費者の行動に乖離が生まれている。メーカーや小売など業界間の隔たりを越えた連携が求められている

須藤:これまでKaizen Platformでは様々な企業のDXを支援させていただきました。そこでわかったのが、リテールも卸業者も、またメーカーも根本にある課題はみな同じで、一社だけでは解決できないということ。
DXを本気で取り組もうとすると、業界間の隔たりを越えて企業同士が連携していかないと解決できないことが多いんですね。

たとえば、多くの消費者はSNSで商品を認知します。しかし商習慣として、メーカーは自社の棚を確保する上で、どれだけテレビCMを展開するのかを小売のバイヤーとの交渉材料にしていたりするわけです。
つまり、商習慣と消費者の行動に乖離が生まれている状態で、それは一社だけで解決できる問題ではありません

そこでメーカーの課題も小売の課題も解決できるようなスキームが必要で、Kaizen Platformとしては、企業同士を繋ぐからこそできることをやろうという考えから、今回のリテールメディアとSNSの連携企画『KAIZEN RETAIL SNS』が生まれました。

Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司

木村:私としても、TikTokなどのインフルエンサーマーケティングを展開する会社、リテールメディアを商材として提供する会社、また店頭のツールを販売する会社など様々あれど、それらが連携できていないと感じていたので、須藤さんのお話に強く共感したのを覚えています。

特にラフラの親会社であるユニリーバ・ジャパンの場合、各領域で代理店が間に立つ構造になっているため、企業間の連携を進めようとすると代理店同士の連携が必要なるため、実現が非常に難しかったりもします

そのため、いまは “TikTok売れ” という言葉があるくらいにも関わらず、売上の9割は店頭というスキンケアメーカーも珍しくありません。
しかし、ひとつのスキーム内でリテールメディアとSNSが繋がれば、より良い相乗効果が生まれることは目に見えていたため、そうした企業と企業を繋ぎ合わせるというビジョンに共感し、今回Kaizen Platformにご相談させていただきました。

ラフラ・ジャパン 代表取締役社長 木村様

須藤:また、そもそもで商売の根源的な喜びや面白さが生まれるような枠組みをつくりたいと思っていました。たとえば本屋の書店員が手書きで書くPOPは、すごく面白いなと思うんですね。それは「この書店員さんがこの本を読んで、こう思った」という “ヒト” が垣間見えるから。

そのため、今回の取り組みではインフルエンサーのクリエイティブを店頭でも流すという企画でしたが、インフルエンサーの方々に限る必要はなく、ショップの店員さんのTikTokを流すとかでもいいわけです。

本来お客様がお店に来てくれて、商品が売れるというのは嬉しいことにも関わらず、現場のスタッフはやらないといけないことが多くて、陳列まですべて決められていて、スタッフは機械のようなオペレーションを求められるということも少なくありません。

しかし、スタッフが自らSNSで商品を紹介して、それが売れたら本人も嬉しいでしょうし、それが仕事の醍醐味であり、やりがいに繋がっていく。そこでお店で働くヒトや店頭が魅力的な空間になるということを意識しました。


TikTokのクリエイティブは、店頭でも目を引くコンテンツ。立ち止まり商品を手に取るお客様が圧倒的に増えた

須藤:今回、リテールメディアに組み合わせたのが、TikTokインフルエンサーのクリエイティブでした。
様々な時代背景がありますが、TikTokの特徴としては動画をスキップできるため、一瞬見て面白くなかったらスキップされてしまいます。そのため、インフルエンサーと呼ばれる人たちは、どうすればスキップされずに見続けてもらえるかを考えて続けていますから、コンテンツのアイキャッチ力が非常に強いんですね。

しかし、従来までは店頭でテレビCMの素材が流れていたりしますが、テレビCMというのは受動的に視聴するもののため、そもそもでTikTokほどアイキャッチする必要がなく、目を引かないものが多い。
そのため、実際にTikTokのクリエイティブを店頭で流すと、やはりすごく目を引くコンテンツになるわけです。木村さんは実際の店頭での反応を見て、いかがでしたか?

・制作したショート動画

https://youtube.com/shorts/4b-3_xLglLs


・実際の店頭展開の様子

https://youtube.com/shorts/2_x4EDEBdSw


木村:店頭には数多あるブランドの陳列がある中、各社がブランドイメージやPOP、コピーなどで自社の陳列に興味を持ってもらう工夫しているわけです。そうした中であっても、立ち止まって実際に商品を手に取るお客様がこれまでと比べて圧倒的に多かったです。

そのため、バイヤーの方も施策に非常に強い興味を示してくださったんですね。実は小売業界ではバイヤーの方々とは売れた、売れなかったといった会話が中心で、施策の結果や振り返りを一緒にするということがあまり多くはなかったりします。

しかし今回は、TikTokでどういったコメントがあったのか、広告の反応率はどうだったのかなど、バイヤーの方と売れた売れなかった以外のコミュニケーションが取れたことは非常に意味があることでした。

今後もこうしたリテールSNSの施策を続けていけば、バイヤーの方とは「お店で反応がいいのは、こういった動画だ」とか「店長のコメントのほうが反応率が高いね」といった会話をデジタルデータを交えてできるようになっていきます。

将来的にはリテール側の企業がデジタルに積極的になっていくイメージを抱くことができ、メーカーとしては新しい取り組みをスタートできたことはとても喜ばしいことだと感じています。

店頭売上は300%増を実現。リテールSNSはただのトレンドではなく、店頭販促のスタンダードになっていく

須藤:あらためて今回の取り組みの結果についてはいかがでしたか?

木村:店頭での売上の伸びは、期待以上の結果でした。まず、TikTokで多くの方に認知いただけたことで、縦型動画を展開していない店舗での売上で昨対比108%増という結果に。8%伸びるというのは本当にすごいことで驚きました。

さらに縦型動画を一般棚に展開した店舗の売上は昨対比220%増、そしてエンド(特設棚)で展開した店舗の売上は約300%と、大幅な売上げアップを実現することができました。売上が3倍になるというのは、テレビでのプロモーションを展開してもなかなか実現し得ない数字で、驚きの結果でした。

そして今回の取り組みを通じて感じたのは、このリテールSNSの施策がただのトレンドではない、廃れることのないものだということです。
たとえば小売では大きいPOPを用意したり、大きめのテキストを使ったりなど、店頭で売るための方法があります。そういったことが10年20年と続いてきたように、縦型動画と店頭の連携というのは店頭販促のスタンダードなものになっていくと思っています。

須藤:私自身、昔からこうした販促やマーケティングについては多くの人たちが考えてきているのに、まだまだできること、ブレイクスルーできる方法はあるのだなと気づきました。

そして今回、縦型動画と店頭の相性の良さを証明することはできましたが、販促の次のデファクトスタンダードになるためには、まだまだありとあらゆる調整が必要です。ただ、チューニング次第でまだまだ伸びしろがあると思っており、改善していくことでどう数字が変わっていくのかが非常に楽しみです。

また、DXというとテクノロジーやデータといった話が飛び交いますが、本当に大切なのはソフトの部分、コンテンツなんだと思っています。そのため、今回の取り組みの肝は、ラフラさんがTikTokのコンテンツを良しとしてくれたこと。ブランド側がこうしたコンテンツを許容してくれなければ、そもそも実現できないわけで、とても良い取り組みだったと思っています。

木村:ラフラはスキンケアブランドとしては特殊で、オンラインとオフラインの売上構成比が半々となっています。そのため、デジタルで戦わないと勝てないという世界観だからこそ、前向きに取り組むことができました。

しかし、もし私がラフラではなく、親会社のユニリーバのマーケティング責任者だったら、マスメディアの施策中心で、TikTokの施策やリテールメディアの施策をやってみようと思っていなかったかもしれません。
やはり、スタートアップや上場して間もない会社などがこうしたデジタル施策を牽引していて、レガシーな会社はデジタル施策に関して後手に回りがちであるように思います。

ただ、世の中の施策はまだまだ荒削りなものも多いと思いますから、企業間の連携がより増え、業界全体が盛り上がっていくためにも、レガシーな会社含めて、多くの企業がデジタル施策に取り組む必要があると感じています。

そのためラフラとしても今回の取り組みを早く横展開していき、事例をつくっていきたいですし、私たちの事例がユニリーバ・ジャパン、さらにはグローバルなユニリーバ全体に展開していくことができれば、とてもワクワクする未来が待っていると感じています。

そして今後もKaizen Platformと一緒に新しいOMOの事例を増やしていき、メーカーとして売上を伸ばしていくことはもちろん、リテール業界の新たなマーケティング施策にいろいろとチャレンジしていきたいと考えています。

須藤:Kaizen Platformとしても、引き続き魅力的な棚づくり、楽しい店舗づくりを支援させていただきたいと思っています。また、DXは働き方改革だと思っていまして、Kaizen Platformとしては働く人たちも楽しい状態を目指していきたいと思っています。

「そういう商習慣だから」と諦めてしまっているケースは多く見受けられますが、何も考えずにそれを続けていくと、働くということ自体が機械化していってつまらなくなってしまうと思うんですね。
しかし、テクノロジーを使ったり、新しいアイデアを取り入れたりと何かしらブレイクスルーすることができれば、楽しく働ける環境がつくれると信じていますし、その手段のひとつとして、今回のリテールSNSがあるのだと思っています。

本日はありがとうございました!


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