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ビッグデータ元年から丸一年【前編】――カスタマーに幸せをもたらし収益にもつなげるためにできることとは?

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

データ活用とパーソナライズビッグデータがもたらす顧客体験&収益向上―イベントレポート

「ビッグデータ利活用元年」と位置づけられた2017年から1年以上が経過しました。各企業が多くのデータを収集していますが、それらは顧客体験の向上や企業の収益向上につながっているのでしょうか。どうすれば、繋げることができるのでしょうか。

2019年1月30日、KaizenPlatformはクレディセゾン、オムニバスとともにセミナーを開催。「世の中の”誰”を幸せにするべきか?」をテーマに事例を交えながら、2019年度にキーとなるデジタル戦略について議論を交わしました。前編は、コンビニエンスチェーンのローソンによる顧客戦略。「狙うべきターゲットは”誰”か」を、データを使って明らかにしていくお話です。

性別や年代別にとらわれず、個々の価値観を重視したデータ活用を~狙うべきターゲットは「誰」か?~

前半は、クレディセゾン 磯部泰之氏をモデレーター、ローソン 小林敏郎氏をスピーカーにお迎えし、「狙うべきターゲットは”誰”か?」をテーマに、ローソンが進める大規模ID/POSデータ活用とお客さま理解の取り組みについてお話しいただきました。

株式会社クレディセゾン 取締役 デジタル事業部長(兼)デジタルマーケティング部長 磯部泰之氏

実は、磯部氏、小林氏、また後編に登壇する野林氏は10年ほど昔に出会っていたとのこと。ローソン、クレディセゾン、三菱商事による合弁会社『ローソンCSカード』で、一緒に働いていたのです。

「まさか、また一緒になるとはね」と、磯部氏は場を温めつつ、「マーケティングのことをナイアンテックの足立(光)さんは、ズバリ『商売』だと言うし、一般的には『売れ続けるための仕組みづくり』だとか、『顧客の解体気持ちづくり』と言う方もいます。小林さんはまさに『仕組みづくり』で、データを活用をしています。どのような事例があるのか、お話しいただきましょう」と、バトンタッチします。

小林氏は、「ローソンCSカード時代に行っていた顧客分析やDM作成が役立ちました」と話しはじめます。ローソンでは他社同様、長い間POSレジにある『客層キー』を店員が押すこと顧客セグメントづけしていました。ところが、『50代以上女性』の比率が異常に高い。「何かがおかしい」。会員カードでは50歳以上の女性客は多くないが、POSレジのデータでは多くなっていたからです。

「POSレジで『50歳以上女性』のキーは右下、つまりは店員が押しやすい位置にキーが配置されていたのが理由でした。現場で顧客情報を取る方法はこれしかない。しかし、これではいけない」(小林氏)

2002年、ローソンCSカードが誕生し、会員数が増えるにつれ情報の精度は高まってきました。2010年、共通ポイントカード『Pontaカード』に切り替わってから、さらにその精度は高まっていきます。

株式会社ローソン 経営戦略本部 次世代CVS統括部(兼)商品本部 商品戦略部 マネジャー 小林敏郎氏

ここで、小林氏はふたつの円グラフを見せながら、「この円グラフはローソンストア100とローソンに来店されるお客様の性別年代を表していますが、どちらがどちらのローソンかわかりますか?」と聴衆に質問を投げかけました。

会場の挙手は割れました。「実はローソンの社員でも、判断しづらいんです」と小林氏は説明します。

「性年代別のセグメントでは、商品開発もままなりません。例えば、30~40代男性向け弁当を作れ、と言われたときにみなさんが思い浮かべる30~40代男性って誰でしょう? バナナマンの日村さんですか、それともイチローですか。お二人とも性年代別の同じ層に入っていますが、求めるものは異なりますよね。重要なのは、性別や年代別ではなく、価値観でセグメンテーションすることなんです」(小林氏)

そこでローソンが行ったのは、消費者パネルモニターを使ったアンケートとそれに基づく商品を紐付けていったこと。まず、顧客がどのような価値観を持っているのかを調べ、どのような商品を購入するかを追跡調査することで、商品と価値観を紐づけていく。最終的に、商品と顧客の関係性を見て、価値観で9つのセグメントに分けたそうです。

「例えば、『上質 プレシニア』層は、主に50代以上で子育てが一段落してお金に余裕のある男女。その中に若者が含まれることもあります。また、『脱メタボワーカー』は、健康を気にしている30~40代男性を多く含みますが、体型を気にすることのなさそうな女性がそこに分類されることがあるかもしれません。これが性年代別ではなく、価値観で分けるということです」(小林氏)
このセグメントは商品開発にどのような効果をもたらしたのでしょうか。

データの取得から分析を改め、見えてきた「誰」
ビッグデータはエキスパート、ベテランの仕事を代替できる

定員30名に対して会場には約70名が集まり、登壇者、参加者ともに盛り上がりました

「最も高い比率で来店される層のお客さまに向け、『好みの弁当』『魅力的なキーワード』をお聞きしました。『30~40代男性なら』ではなく、日村さんには日村さんが入るセグメントの、イチローはイチローが入るセグメントのお弁当を開発し、届ける。”誰”が見えるセグメントなら自然に結果にもつながっていきますよね」(小林氏)

ビッグデータの分析結果を必要としている人がすぐに見られるようにしたことも、商品開発にとって大いに役立ったといいます。

「実はデータの精度が上がることで高度な分析が必要になってきました。そこで、tableauを基にPOSシステムで取得したビッグデータを瞬時に集計・解析できるBIツール『ローソンcafe+』を導入。どのセグメントの人がどの商品を購入しているのか、届けたい人に届いているのか分析できるようになりました」(小林氏)

「データはエキスパートが見るだけでは意味をなさない。見る人が多いほうが、かけ算的にデータの持つ価値が高まります」と小林氏。このような体制を敷くことで、PDCAの回転率が高まり、お客さまの買いたい商品を常に店頭に置けるようになったそうです。

「昔なら、八百屋や魚屋の店頭に立つ従業員が、顧客の好みをよく覚えていて、仕入れた商品のどれがその客に合うのかを判断してお勧めすることができました。でもチェーン店が増え、アルバイトを雇うようになった店では、従業員にそれを求められなくなりました。本来であれば、必要としている人に必要なものを勧めるのは人の役割なんです。それを肩代わりするのがビッグデータの分析。それを必要な人が見られるようにするBIツールは、必要な人に必要な商品が届くような仕組みづくりも可能にするのです」(小林氏)

「最も正確なのは人によるセグメンテーション」ですが、属人化された業務ではままならない現在、年齢性別とは違った視点で顧客を捉えること、また取得したビッグデータを社内で必要としている人が見られるようにすることでターゲットに届く商品を生み出せることなどを小林氏は実例を交え、わかりやすく解説してくれました。

後編では、オフィスフレンジー代表の野林氏による、リアルな人と向き合うことが如何にカスタマーの幸せに結びつくのかです。

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