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大きな声で叫ぶとみんなが振り向く、「マーケティングは愛」

田中安人さんインタビュー第3話(全3話)

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。
吉野家CMOを務める田中安人さんのインタビュー第2話では、「ビジョンを明確にすれば共鳴する人材が集まる」「上下のないフラットな組織が成長していく」という発言が飛び出し、成果を出すチームづくりのコツを語っていただきました。
最終話のテーマは、「成功する企画と失敗する企画の違い」。
田中さん自身のマーケターとしての視点や考えかたにアプローチして、「マーケターの役割」についてお話をうかがいました。

従業員が自分ごと化できている企画は120%の結果を出す


横堀:
田中さんは吉野家のマーケティングを統括する立場で仕事をされていますが、CMOとして意識していることは何ですか? 最近だと、外食戦隊「ニクレンジャー」の企画がTwitterでも盛り上がっていましたよね。

田中さん:
「ニクレンジャー」の企画は、若手の女性の発案で生まれたんです。
僕は結果を出すためにはフラットな組織であることが大事だと思っています。第2話で「部長」「部下」という呼びかたをしないと言いましたが、もう1つ意識していることがあるんです。それは、自分の席を決めないこと。上司の席ってだいたい奥のほうにポツンとあるじゃないですか。その席にずっといると決まった人の様子しかわかりません。
だから僕は毎日座る場所を変えて、毎日違う人の近くにいきます。すると、いろいろな情報が入ってきて、いろいろな視点を持てるようになる。それに、アルバイトの人ともフラットな関係を築くことができます。

横堀:
座る場所を変えるだけでも、違った景色が見えてきそうですね。

田中さん:
そうなんです。思考を変えるには景色を変えるのが手っ取り早い。上司の席に座り続けていたら、そのフィルターだけになってします。

横堀:
確かに。田中さん自身は、企画を考えるときにどんな意識を持っているのですか?

田中さん:
吉野家の仕事をするときは、50/50 を意識しています。それはインナー50%、アウター50%を見るようにしているという意味です。マーケターって外ばかり見てしまいがちなんですが、僕はまずは内側が大事だと思っています。
良い企画があっても必ず成功するとは限りません。成功する企画と失敗する企画の違いは「働いている人が自分ごとになっているかどうか」です。企画の出来が50%くらいだとしても、従業員が自分ごと化できていて、やる気にあふれている企画は120%の成果を出すことがあります。逆に、企画の完成度が100%でも従業員自身が盛り上がっていないときは大した結果が出ない。これって、真理だと思うんです。

横堀:
第1~2話で田中さんがお話しして来たことは、すべて「自分ごと化」に関わっていましたね!

田中さん:
顧客満足度向上を掲げる企業は多いですが、その前に大事なのが従業員満足。まずは、従業員のモチベーションを高めて、それぞれの能力を最大限に発揮してもらう。それが結果的にいい商品、いいサービスにつながります。

デジタル化する前にオリジナリティをつくる

横堀:
Kaizen Platformもそうですが、いまはデジタルマーケティングが職種として確立されてきましたよね。データを見て修正して、というのを繰り返すわけですが、田中さんはこうしたデジタル化をどう見ていますか?

田中さん:
デジタル化が進んだときに何が起きるかというと、均一化だと思うんです。均一化が起きると、戦えるフィールドがディスカウントになってしまう。だからオリジナリティを意識しないといけない。個人も組織もデジタル化する前に、まずはオリジナリティを明確にしないといけない。

横堀:
オリジナリティをつくるのって難しいと思うのですが、どうしたらいいんでしょうか?

田中さん:
オリジナリティは自社のDNAの中にしか存在しないのです。
吉野家の場合は、「ひと・健康・テクノロジー」という長期ビジョンを掲げています。例えば、築地にある吉野家1号店の店長は1,000人近い常連客のオーダーを細かく覚えているんです。このようなきめ細やかな人による築地1号店のサービスを全世界で展開したい。しかし、なかなか難しいですが人をデジタルが補完することで実現する。これが吉野家の根本にあるDNAです。自分たちのDNAに立ち戻って、何のためにデジタル化するのを考えることで、オリジナリティが生まれるのだと思います。

横堀:
他人をマネても意味がないと。

田中さん:
そうです。「なぜするのか」をきちんと考えてから動かないと、恐ろしいことになるんじゃないかな(笑)

横堀:
すべてはそこに戻るわけですね。

みんなが理解できるコミュニケーションを設計する

横堀:
マーケティングの話ってデータの分析など難しい話になりがちですが、田中さんの話はシンプルですよね。すべてが「ビジョンを明確にして、強みを見つけて、行動計画にする」に行き着く。

田中さん:
僕はマーケティングって愛だと思っているんです。講演などで「マーケティングは愛だろ」って言うと、みんなが賛同してくれる。これは時代が求めているのだと思います。

横堀:
愛をストレートに言える人って、実は多くないですよね。

田中さん:
僕はマーケティングを通して世の中を豊かに幸せにしたいと思っているし、吉野家のCMOとは「社長の夢の実現担当」だと思っています。この使命を達成する、正しい未来を提示していくには、そもそもビジョンがなければできません。

横堀:
ビジョンを語っていると、なんだかワクワクしますよね!

田中さん:
そうですよね。言語化することが大事なんです。
言語って実は扱うのが難しいものです。「丸」という単語1つとっても、僕がイメージする「まる」と横堀さんがイメージする「マル」は違うかもしれない。言葉自体が簡単だとみんな同じことを考えていると思いがちですが、実はみんな違う。
マーケターはそういうコミュニケーションの難しさを理解しないといけないんです。そのうえで、みんなが理解できるコミュニケーションの伝達方法を設計するのがマーケターの仕事だと思います。

横堀:
田中さんのように、自分の使命をわかりやすい言葉で伝えてくれる人だったら、一緒に働きたいって思いますね。

田中さん:
僕が大事にしているのは、自分が信じるものを見つけて、そのために全力を尽くすことです。マーケティングを通して、自分がどんな豊かな社会を実現したいか、どうやって社会課題を解決するか。それを声を大にして叫ぶ。これが僕なりの愛です。

Kaizen Platformは、デジタルトランスフォーメーションの専門家集団です。ご相談は、こちらからお気軽にどうぞ!

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