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動画で世界観を発信していく。広告効果だけではない、ビズリーチの動画戦略

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

ますます売り手市場化が進む転職市場。「転職バブル」とも表現される市場の過熱とともに、数多くの転職サイトがサービスを展開しており、そのなかのひとつ、挑戦する20代の転職サイト『キャリトレ』は株式会社ビズリーチが展開する20代向けの転職サイトです。『ビズリーチ』はハイクラス層の即戦力人材に特化した転職プラットフォームであるのに対し、『キャリトレ』は20代の若手優秀人材に特化しているという明確なターゲット層の違いがあります。今回は20代求職者(to C)と企業の人事担当者(to B)の双方に対して実施した、Kaizen Adを用いた動画広告施策と今後の展開について、お話を伺いしました。

1. プロフィール

執行役員 キャリトレ事業部 事業部長 
中嶋孝昌
リクルーティングプラットフォーム統括本部 ビジネスマーケティング部
三浦茉夕
デザイン本部コミュニケーションデザイン室
浅野里英

2. 転職市場で認知を狙う。『キャリトレ』の動画を活用した差別化戦略

――Kaizen Adで動画制作を行う以前はどのような課題があったのでしょうか?
中嶋孝昌氏(以下、敬称略):そもそも『キャリトレ』というサービスの課題は「認知」の部分にありました。広告を打ち始めた頃はまだ認知度が数%という状態。一方、マーケットには知名度の高いサービスがいくつもあります。
また、ターゲット層である20代は転職の経験がない方々が多く、転職に対する情報も十分ではありません。そのため、転職サービスを選択する際、単純にそのサービスが想起されるか否かが大きな決定要因になります。
こうした2つの背景の中、20代ユーザーからの認知をどうやって獲得するか、それが『キャリトレ』の大きな課題でした。

――動画広告の実施を決定した背景を教えてください。
中嶋:転職サービスの広告はよく似たものが多いと感じられる方も多いのではないでしょうか。それは悪いことではないと思いますが、ユーザーの視点からするとサービスの見分けがつきにくいという問題があると感じています。
そのため、ユーザーの認知を新規で獲得していくためには、積極的に新しい広告のテンプレートを作っていかなければなりません。そうした「差別化」という狙いで動画広告を実施することになりました。

――広告用の動画を制作していくうえで、Kaizen Adを活用することになった経緯を教えてください。
中嶋:前提として、動画の制作や効果の出る広告動画の活用ノウハウが社内には不足しておりました。その中でKaizen Adを選択した一番の理由は「費用対効果」です。通常、広告に用いる素材として動画はある程度のコストがかかることは避けられず、動画を制作する場合、数十万円以上かかります。納期も1カ月単位です。その一方で、クリエイティブの寿命は1週間、長くて1カ月ほどです。コストをかけて制作した動画がたった1週間で効果が薄れてしまうのは、まだまだ現実的ではないのだろうなと考えていました。その点、納品までの期間が短く、素早くPDCAを回せるのが、Kaizen Adの魅力です。
また、社内に動画広告のノウハウが不足していたので、果たしてどんな動画に広告効果が出るのか分かりませんでした。それを検証するためにも、ひとつの動画当たりの制作コストを下げ、複数の動画を制作したいと検討している最中にKaizen Adの費用のお話を聞いて、このサービスならコスト的に実施できそうだと判断しました。

3. ユーザーアクティブ率の改善。動画広告の効果とは

――Kaizen Adを利用してみて、その使用感などはいかがでしたか?
三浦茉夕氏(以下、敬称略):依頼から納品までがとても早かったです。依頼からおよそ2営業日ほどで動画が納品されるとは思っていませんでした。また、担当の方からも最初から最後まで丁寧にフォローしていただき、スムーズにやりとりができたと思っています。初回の打ち合わせの際にデザイナーさんから過去に制作した動画を実際に見せていただいたことで、成果物としての動画イメージが描きやすくなりました。

――制作した動画広告の効果について伺いたいです。
三浦:広告戦略として、20代求職者(to C)と企業の人事担当者(to B)に分けて施策を実施する必要があります。求職者向けの動画と人事担当者向けの動画を別々で制作し、それぞれの効果を測定しました。

浅野里英氏(以下、敬称略):to Cとto Bで比較をすると、to Cの広告動画のほうで顕著に効果が現れました。特に静止画より動画が勝っていたポイントが、広告効果の「質」ですね。コンバージョン(CV)ポイントを会員登録に設定していたのですが、会員登録後のユーザーのアクティブ率は、動画広告から流入したユーザーのほうが高かったです。
『キャリトレ』の特徴的な機能のひとつに、求職者が興味のある企業に「ハート」を送ることができる機能があります。そのハートがフックになって企業と求職者のコミュニケーションが発生するのですが、その利用率に違いが出ました。静止画からのユーザーのアクティブ率と比較して、動画からのユーザーのアクティブ率は約5%向上するという結果が得られたのです。どういったサービスなのかユーザーが動画を見て理解したうえで会員登録をするので、その結果アクティブ率が高まったのだろうと考えています。
また、広告による会員登録者数のうち、コアターゲットユーザーである20代の含有率が静止画よりも動画広告のほうが高かったです。登録者のうち、およそ2人に1人がサービスのコアターゲットでした。

――逆に改善点はありましたか?
浅野:静止画よりも動画のほうがユーザーにとって慣れが生じやすいのだな、というのは感じました。初速はよかったのですが1週間ほどで落ち込んでしまいました。どんどんPDCAを回して、制作と配信を繰り返す必要を感じました。
それでも動画広告を配信していきたい理由が大きく2つあります。
ひとつは、SNSなどのプラットフォーム側が、動画をはじめ新しい広告素材に対して有利になるようアルゴリズムを設定していること。また、この業界の広告はリターゲティングで同じユーザーに広告を当て続けているのですが、広告素材を変え、目を引くクリエイティブに変更することで新たに反応する層が一定数います。こうした潜在層の掘り起こしに動画広告は効果的です。

4. 他社と似た広告訴求ではなく、『キャリトレ』としてのメッセージを

――今回の事例を通して、今後どのように展開していく予定か教えてください。
中嶋:静止画と同じように、動画を気軽に配信できるようなマーケティング体制に移行していきたいと考えています。ディスプレイで動画を出せる広告枠には、積極的に動画を出していきたいです。
また、ユーザーにとって意味のある動画広告のテンプレートの開発も進める必要があります。ユーザーから、あの動画広告といったら『キャリトレ』だよね、といった差別化された認知を獲得していきたいですね。
その動画広告のテンプレート開発に、Kaizen Adをうまく活用していきたいですね。広告クリエイティブの良しあしは、実際に制作して、配信して、効果検証を行って、PDCAを回さなければ判断できません。一般的に動画は制作コストが高いため、PDCAを回しにくいという課題があったのですが、Kaizen Adであれば動画でも可能そうだと実感しています。

浅野:転職業界の広告は、訴求内容やテンプレートが似る傾向があるように感じています。
例えば最近よく見るが年収訴求のもの。「商社で年収800万円」「マーケターで年収500万円」というキャッチコピーのものです。CTR(クリック率)が高いという意味では効果はいいのかもしれませんが、ユーザーからするとサービスごとに差別化されていないので見分けがつきません。また、そうやって目の前の欲求を駆り立てCVを促しても、アクティブにつながりにくいという、双方にとってメリットがないケースが多いです。
『キャリトレ』が目指す世界観として、仕事はワクワクするものであってほしいし、誇りをもってキャリアを歩んでほしい。自分たちが目指したいサービスブランドと20代のインサイトがうまくぶつかるところでいいメッセージを動画で発信できないか、試行錯誤しています。動画の強みはコンテンツとしてリッチな点。静止画よりもメッセージをユーザーに伝えやすいので、直接的なCVだけではなく、ブランド戦略としても動画を活用していきたいです。

<取材=大木一真 文・写真=大木一真>