D2Cが実現するカスタマーとのあたらしいつながりとは?
『DXプレイブック』は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家集団 Kaizen Platformの須藤による解説シリーズ。loT、サブスクリプション、AI、D2C、OMO、MaaSなどをキーワードに「DXとは?」を考えるDXの入門書です。
おかしの定期便がなぜ流行るのか?
おかし好きの皆さんにはすっかり有名なsnaq.me、ご存知でしょうか?
定期的にパーソナライズされたおやつボックスを届けるサービスです。
(出典:snaq.me)
元々おかし好きだった創業メンバーの皆さんは、お店で自分にピッタリなおかしになかなか出会えていなかったそう。その真因に下記ような構造的課題があることを発見したのです。
・コンビニやスーパーで販売するには日持ちを意識した製法や原材料が必要となる
・コンビニやスーパーの棚確保のために、大衆ニーズを意識した汎用的な製品ラインナップになってしまう
これらに対し、テクノロジーを活かした定期便サービスを展開しているのがsnaq.meなのです。
直接販売できるので保存料や人工添加物を使っていないおかしを提供できることや、カスタマーの好みを把握し最適な(かつサプライズのある)パーソナライズパッケージをお届けすることが好評となり、直近は月10%ずつユーザ数を伸ばしているといいます。(※1)
D2Cの本質は、カスタマーとつながれていること
このような中間流通を介さずに直接カスタマーに商品を届けるビジネスモデルをD2C(Direct to Consumer)と呼びます。一般的には、安価であることがD2Cのメリットと言われることが多いです。それは中間マージンがとられないモデルだからです。
たとえばそれをフックに一気にカスタマーの心を掴んだサービスとして有名なのがDollar Shave Clubです。アメリカの若年層を中心に支持を獲得した安価で髭剃りを定期的に届けるサービスです。
(出典:https://www.dollarshaveclub.com/)
2012年の創業から4年で売上$200Mn(220億円)、会員数も320万人までに成長し、2016年にユニリーバ社に1000億円を超える金額で買収されたと言われています。
Dollar Shave Clubのような会社が勃興する一方で、ユニクロのように企画から小売まで一貫して自社で行うモデルもかねてから存在しています。SPAと呼ばれる業態です。はたして、冒頭に紹介したsnaq.meやDollar Shave ClubのようなD2Cモデルは、SPAとなにがちがうのでしょうか。
カスタマーとつながれているか否かそれがSPAとD2Cの違いであると、私たちは考えます。つながれているとは、メーカーが「誰が何を買ってくれたか」をはじめとして細かくトラッキングできる仕組みと関係性を築けているということです。「誰が」「いつ」「どこで」「何を」買ったのか、そしてそれを「どのように」評価しているのかを継続的にサービスログインしてデータ提供してもらえるモデルであることです。
D2Cがカスタマーに還元するもの
データを提供「してもらえる」ということは、その恩恵をカスタマーに還元できるサービスモデルでなくてはなりません。つまりD2Cは、好んでデータを提供したくなるサービスである必要があります。
snaq.meは、好みに合わせておかしの組み合わせをパーソナライズしています。それを届くまで中身がわからないサプライズボックスとして届けることで、自分でも気づいていなかった好みに気づけるようなセレンディピティを提供しています。
Dollar Shave Clubは、定期的に買い替えが必要になる商品性質を活用して「ついで買い」の提案をおこなっています。定期便お届けのタイミングで男性用ヘアワックスやジェル、お尻拭きなど「こんな生活用品もいりませんか?」と提案してくれます。まさにデジタル三河屋さんと言えるサービスを提供しているのです。
NetflixもD2C的?
これまでにお話しているように、SNSは個人の閲覧ログにもとづいてタイムラインをパーソナライズしていますし、動画サブスクリプションサービスのNetflixは視聴体験データをこまかく取得し活用して圧倒的なコンテンツを次々に公開しています。
それを横目で見ていたディズニーがDisney+というサブスクリプションサービスを始めたのもまさにこれが理由だと考えられます。
ダイレクトにコンシューマーとつながれるのはまさにインターネットの特性です。その強みを、髭剃りやおかしなど一見インターネット的でないような領域に適用しているモデルがD2Cと呼ばれているのです。D2Cは、マーチャンダイジング(MD)のデジタルトランスフォーメーションなのです。
このトランスフォーメーションは大きな変革です。あらゆる顧客接点をデジタルで捕捉可能にしたり、店舗の位置づけも変えることになります。かかわる従業員の役割や組織構造そのものも変える必要があります。
そのため大きな企業はなかなか舵をきりづらく、だからこそスタートアップが攻め込んできている構造にもあります。Dollar Shave Clubを買収したユニリーバ社のように、大企業がD2Cを買収する動きも出てきています。
あらゆるビジネスにおいてカスタマーと直接つながることは、重要な勝ち筋のひとつです。つながった上でどのような価値をカスタマーに返していきたいのか。そのためにはどのようにつながるべきか。これらの問いは、いまはまだD2C的ではないサービスに携わっている皆さんにも一考の価値があります。
その際はぜひとも一度、ご相談いただけたらと思っています。
※1
https://jp.techcrunch.com/2019/05/28/snaqme-fundraising/
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