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「世の中の変化に金融大手だからこその強みを乗せていきたい」 ー Kaizen金融チームが分析する金融業界の「これから」の面白さ

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

昨今、規制緩和が進み、金融に関するインターネットサービスが次々に登場しています。金融に興味を持っていない人でも金融に触れる(触れている)機会が増えています。
前編では、金融業界の劇的な変化、金融大手の悩みについて話あってもらいました。後編の今回は、金融業界の変化に大手はどうアプローチをしていけばいいか。また、お金がデジタル化することでどんなことが期待できるのかを、Kaizen Platformで金融業界を担当している営業の村上明英とカスタマーサクセスの齋藤圭吾、大木裕介に話し合ってもらいました。

金融大手だからこそ「MaaSと連携」できる

--前回、LINEなど金融に参入してくる企業の脅威についてうかがいましたが、こうした新興企業に金融大手はどう立ち向かえばいいのでしょうか?

村上:
たとえば、Mobility as a Service(MaaS)との連携。生命保険や損害保険は、年齢や体型、年収を見て支払額が決まっていましたよね。MaaSでは消費者の詳細な行動、経路がわかるようになってくる。自動車なら、どんなルートを選んだのか、どんな運転をしている人なのか。保険もそのデータに基づいて価格を算出することができるようになるかもしれません。

大木:
なるほど。そうなったら、トヨタ保険、日産保険などの損害保険サービスも考えられそうですね。「保険って複雑だな…」と思っているかたも「トヨタ保険なら安心!」と思えそう。

画像1Webサイトのカイゼン活動を担う大木(右)は、Webサイトの向こう側にいるユーザーがどう感じるのか、何を知りたいかを考え、二人の話を聴いて「それはつまりこういうことですか?」と噛み砕いて質問を投げかけました

村上:
消費者は自動車メーカーと契約をするけど、保険サービス自体は大手保険会社が提供する。JRさんなど鉄道会社さんと連携して、おでかけ保険なんかも考えられる。各メーカー、鉄道やバス会社も自社の名前で提供するからには高い信頼性を持つ歴史と実績のある金融大手と連携したいよね。

齋藤:
前回、話したように金融商品は増えていて、ハードルも下がっている。消費者、ユーザーは意識しなくても金融商品に触れる機会が増えている。一方で、こうしたユーザーは「まだ金融に興味を持っていないユーザー」とも考えられると思っています。

村上:
実はNISAやiDeCoを買っている人、株主優待を利用している人もあまり増えていないんだよね。

齋藤:
でも、「ふるさと納税」は増えている。ふるさと納税をやっている人でも株主優待を「難しそう…」と思っている気がします。実際はよく似ているんですが。

村上:
オンライン証券会社で口座開設した人は「証券取引に興味を持っている」ユーザー。詳しい説明をしなくても、「株主優待とふるさと納税って似てるんだな」と気付ける人たちと考えられる。興味がないユーザーよりも、NISAやiDeCoと近い、利用しやすいんじゃないか。

大木:
“金融”という大きなくくりで見ると新規参入企業は驚異ですけど、細かく見るとそれぞれ違ったフィールドで戦えるんですね。

村上:
でも、フィールドは違っても新規参入企業の動きは警戒しないといけない。LINEさんは「LINEほけん」という損害保険サービスも提供している。アプリからカンタンに加入できるし、友だちにプレゼントできるのはユニークな試みだと思う。

齋藤:
そして、LINEさんはコミュニケーションプラットフォームを提供している。「誕生日おめでとう!」「入学おめでとう!」、おじいちゃんおばあちゃんから孫にお金を送るというシーンがイメージできるよね。コミュニケーションには金銭のやりとりが発生しやすい。

大木:
最近は結婚式の招待状をメールやメッセンジャーで送ることもできるそうですね。お返し、お祝いをメールやメッセンジャーで贈るというケースも想定できます。

齋藤:
お金がデジタルになれば、やりとりがカンタンにできるよね。でも、それだけじゃない。これまでの概念がくつがえるんじゃないかとも思っている。


デジタル化でお金がより生活に溶け込んでいく

--概念がくつがえる、というのはどういうことですか?

齋藤:
僕はマネーフォワードを使っているんですが、「お金版のGoogleマップ」を使っている感覚なんです。旅行では写真を撮りますよね。ジオタグのついた写真がマップで表示すると自分が辿った経路がわかる。マネーフォワードでもそんな感覚を味わえるんです。

大木:
「昨日、すげーコーヒー飲んでるな」とか「一年前の今日はあのコートを買った日だ!」とかを見られるってことですか?

齋藤:
そう、自分が何にお金を使ったか、その日に何をしていたのか。購買記録を眺めながら思い出せるんだよ。だから「お金版のGoogleマップ」。レシートに「○○ビル関連施設 5,000円」としか書いてないと悲しくなる。何を買ったのか思い出せない。

村上:
ここ数年で急速に進んでいる金融の規制緩和は、お金の流動性を高めよう。いわゆるタンス預金を可視化しようと言う狙いがある。決済サービスは可視化、デジタル化のひとつ。今後もデジタル化、キャッシュレス化は進んで行くけど、「お金版のGoogleマップ」の考えは、お金をデジタル化“した後”の面白さのひとつかも。

画像2「子どものお小遣いもデジタルで渡したい。購買記録を追えば無駄遣いが本当にムダなのかがわかる」 齋藤(左)は時代の流れを”体感”するのが好きで、金融の劇的変化を受け個人的にキャッシュレス化を進めています。

大木:
最近、iPhoneでsuicaが使えるようになりましたが、現金を持たなくても買い物ができる環境が整ってきていますよね。スマートフォンを落としても、別端末でログインすればお金は取りもどせますし、デジタル化のメリットは多いですね。

齋藤:
金融業界のお客様が悩んでいることのひとつだね。金融が盛り上がる前、アパレルが盛り上がっていたよね。アパレル業界の動きは激しかった。総合ECサイトのZOZOTOWNさんが登場して、「欲しいブランドのお店やサイトに行って買う」という概念がくつがえった。

村上:
10年ほど前は「試着しないで買うなんてありえない」と言われていたから、ECサイトが上手くいくなんて誰も思ってなかったよね。

齋藤:
アパレルと金融の違いは、先にユーザー側が変わっていったこと。僕らの世代は「あの人が着ていたこの服、鞄が欲しい」だった。でも、いまのInstagramなどを使っている世代は「あの人みたいになりたい」。だから、ブランドショップやサイトではなく、モールみたいな総合的に提案してくれるサイトに注目が集まりますよね。

村上:
金融はいま国の施策を中心に外的要因で大きく変化している。それに消費者、ユーザーがついていけていないというのはよくご相談いただくことのひとつ。これに対して、実は先ほどのMaaSとの連携などできることはたくさんある。


金融大手のお客様は「すでに利用いただいている」強みがある

齋藤:
デジタル化で、お金はどんどん生活に溶け込んでいくのかなと思っています。現金っていつ何に使ったのかは覚えてないですよね。デジタルはなおさら覚えてない。「お金を使う」という感覚はどんどん薄くなっていく。でも、ECサイトやマネーフォワードやfreeeでは「何に使ったか」が見返せるんです。

村上:
そうなんだよね。実際、ユーザー側も「お金を使う」感覚が薄くなっている変化を受け取っている。銀行様からATMをどうするか、銀行の窓口には何人置けばいいのかなんてお話しもよくうかがう。それだけ銀行に来る人、ATMを利用する人が減ってきているということだと思う。

齋藤:
金融業界を志望する就活生も減ってきているそうですね。LINEさんやマネーフォワードさんなどを志望する人は増えてきているとも聞きます。コンシューマとの接点が薄くなってきたと考えられるかもしれない。

村上:
やっぱり「普段使っている」ことが大きい。さっき「オンライン証券会社で口座開設した人は『証券取引に興味を持っている』ユーザー」と話したけど、金融大手と新規参入企業ではとれる戦略も違ってくる。

画像3村上は多くの金融大手の悩みを聞いてカイゼンに結びつけてきたベテラン営業。「それはお客様のこの悩みに繋がっているのかもしれない…」、関係がなさそうな話からでも解決につながるヒントを見つけ出すプロです。

大木:
新規参入企業は口座がすでにあるけど、「これから利用いただく」方法を考えないといけませんね。金融大手は、口座を持っているかたを「すでに利用いただいている」と考えて戦略を打てる。Webサイトの役割も変わってきますね。

村上:
銀行様なら、考えるべきは「窓口担当が担っていた仕事をどうWebで再現するか」ではなくなってくるね。行動ログ、購買記録からサイトを使っているユーザーが何を求めているのか、何がベストな提案になるのか。トヨタさんやJRさんなど他業種とどう連携をとれるか。

齋藤:
Internet of Things(IoT)も進んできているから、これまで取れなかった、存在していなかったデータも蓄積されている。現実でやっていることを代替するのではなく、Webだからこそできることをやっていく。

村上:
新規参入企業は増えてきて盛り上がっているけど、まだ群雄割拠の状態。新規参入企業は驚異ではあるけれど、答えが見えている状態ではないし、金融大手もそれぞれが圧倒的な強みをお持ちなんだよね。

齋藤:
金融業界はやっぱり「難しい」イメージがあって、業界のかたがたはみなさん「詳しい」んですよね。金融の知識が一般的過ぎるから「これは業界用語だったのか」に気付きづらい面もあります。

村上:
そこにKaizen Platformは「気づけた」から、サポートしていきたいよね。これからどう世の中が変わっていくのか。いまできることは何か。どうすれば流れに乗っていけるのか。

大木:
MaaS、IoT、ヘルステック、ビッグデータ、パーソナライズ。タンス預金をデジタル化していくことで、個人個人の保有している金融情報が可視化できる。こうした“データ”が世の中に出てくれば、世の中はもっと楽しくなっていくのかもしれませんね。

Kaizen Platformは、デジタルトランスフォーメーションの専門家集団です。ご相談は、こちらからお気軽にどうぞ!


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