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【イベントレポ】消費者のリアルは「タコツボ化」と「刹那化」。デジタル時代の購買行動とは?

デジタル時代の消費者の購買行動は、「AIDMA(=Attention→Interest→Desire→Memory→Action)」のような伝統的なマーケティングプロセスのセオリー通りに動かないといいます。

気に入ったものを検索し、「さぐる」と「かためる」を繰り返しループし、グルグル回った末に突発的に「買う」行動を起こす。このようなバタフライ・サーキットと呼ばれるデジタル時代の消費者行動は、「刹那化」がキーワードになります。

このように「刹那化」した消費者行動の変容を捉えるため、企業はどんなマーケティング戦略を取れば良いのでしょうか?

4月14日に、6月からスタート予定のNewsPicks × Kaizen Platform『DX人材養成講座』のプレイベントが行われました。

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多数のサンプルからインターネット上の消費者行動調査・分析をし続ける株式会社ヴァリューズの執行役員子安亜紀子と取締役副社長後藤賢治、 Kaizen Platform代表の須藤が、DX時代の消費者行動の傾向やトレンドを元に、DX時代に求められるマーケティング戦略について徹底解説しました。

※本イベントはYouTube Liveを使用してオンラインで開催されました。

デジタル時代の購買検討行動は、“刹那的”で“突発的”

須藤  Kaizen Platformの須藤憲司です。デジタルの普及によって、消費者の購買行動はずいぶん変わってきました。その変化をデータで読み解き、マーケティングに活用しようというのが今日のテーマです。

ゲストプレゼンテーターは、ヴァリューズの後藤賢治さんと子安亜紀子さんです。

後藤 私たちは、事業の一つとして消費者のインターネット行動ログ分析を行っています。モニターがどんなワードを検索し、どんなサイトを見て、その滞在時間はどれくらいかといった約30万人のデータを9年分保有し、これらを活用して市場調査や施策立案支援などをする会社です。

子安 デジタルシフトによる消費行動の変化は、大きく2つあります。1つ目は「タコツボ化」、2つ目は「刹那化」です。

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2010年代にスマートフォンが普及したことで、ネットにつながるデバイスを1人が1台ずつ持つ時代になりました。

自分専用の端末でネット行動をするとデータがたまり、広告もその人に最適化されます。すると、本人はたくさんの情報を見ているつもりでも、実は限定された情報の中だけに閉じこもってしまうのです。

こうした現象を「タコツボ化」、または「フィルターバブル」と呼びます。これが1つ目の特徴です。

須藤 トランプさんが大統領に選出されたときも、話題になった現象ですね。SNSのタイムラインにはその人の欲しい情報ばかり流れてくるので、右傾化・左傾化が助長され、中道派の人が減ったと問題視されました。

しかしそれは政治に限らず、今や生活全体がそうなっている。僕たちは最適化の波にさらされているということですね。

子安 実際に、人々が利用するサイトの傾向も変わってきています。2016年1月から2019年12月までの調査によると、この4年間でGoogleやYouTubeの利用が増えた一方で、ヤフー知恵袋やブログ、まとめサイトなど、さまざまな情報が載るサービスの利用が減少しています。

Googleの利用が伸びているのは、最適化された情報の中で、気になるものがあれば検索する流れができているためです。

また、何種類のECサイトを利用するかという調査も行いました。その結果、同じ4年間で1サイトしか使わないという人の割合が増えています。

つまり、特定のサービスに依存しがちな「タコツボ化」は、データにも表れているのです。

消費者変化の2つ目の特徴は「刹那化」で、「パルス消費」ともいわれます(パルス=短時間に急変化すること)。

皆さんは、「AIDMA(アイドマ)」という言葉をご存じでしょうか。消費者の、購買決定までのプロセスを表すマーケティング用語です。

消費者はまず、その商品を知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、欲しいと思い(Desire)、記憶して(Memory)、購買行動に至ります(Action)。

企業はこれまで、このAIDMAに基づいて消費者が行動することを前提に、マーケティングや広告活動を行ってきました。しかし生活のデジタルシフトにより、このようにAIDMAをたどる消費行動は、かなり少なくなったのではないかと考えられています。

そう仮定して検索データを検証すると、消費者の検索行動をかき立てる動機は、8つのパターンに分けられることがわかりました。

前半の4つは「さぐる」系の動機です。好きなものをつい検索してしまう「気晴らしさせて」、知識を得るための「学ばせて」、周囲の様子を知るための「みんなの教えて」、自分はこんなことを知っているんだと「にんまりさせて」という検索パターンがあります。

後半4つは「かためる」系で、「納得させて」「解決させて」や、マイナス情報を先に知っておきたい「心づもりさせて」、自分の買い物は間違っていなかったと思いたい「答え合わせさせて」という検索パターンです。

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初めは「さぐる」検索で楽しく情報を集めながら、「かためる」系の検索で、どうしようかな? 本当に買っていいのかな? と迷い、またふと「そういえば友達が、○○がいいって言ってたな」と「さぐる」検索に戻って……とぐるぐる回りながら、ある瞬間に急に購買意欲が高まり「買おう!」と決めるイメージです。

「さぐる」と「かためる」の検索が行ったり来たりして弧を描く様子を、蝶の羽根にたとえて「バタフライ・サーキット」と言い、こうした行動で購買することを「パルス消費」と呼んでいます。

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ふわふわと捉えどころのない検索や、論理的でリニア(直線的)なプロセスを経ず、ふとしたきっかけで購買が達成されることから、消費行動は「刹那化」しているといえます。

気持ちが固まった消費者とどうコミュニケーションをとるか

子安 では、ある1人の消費者が、商品を検討して購入するまでの検索行動を見てみましょう。

モニターは、愛知県在住の30代男性です。ここから先のプロフィールは検索履歴から推測したものですが、家族構成は夫婦2人暮らし、常に資産形成に関する検索行動が見られ、リテラシーは高いようです。

今回は、契約している「東京海上あんしん生命」の医療保険から、「ライフネット生命」に乗り換える行動について観察します。

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男性はまず、解約を考える前に「南海トラフ」や「ハザードマップ」を検索しています。おそらくこのとき、台風などの自然災害があったのでしょう。自分の地域は大丈夫かな?と考え直したと思われます。

そして解約40日前に、現在の保険サイトに一度ログインしています。このときは契約状況を確認しただけのようです。しかし30日前になると気持ちが高まったのか、乗り換える前提でいろんなブランドの保険を一通り検索しています。

そして最後には、現在加入している「東京海上あんしん生命 解約」に関するワードを連続していくつか調べ、検索を終えています。

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須藤 マーケターとしては、ここで解約を阻止したいですよね。40日前に何があったんだろう。

子安 実はそれには、仮説があります。40日前にログインする少し前に、男性はビジネスメディアで保険に関する記事を閲覧しています。

この記事は終身保険よりも、いま必要な保障を掛け捨てで安く備えることを推奨する内容でした。そして男性が加入していた保険は、掛けた分が戻ってくるタイプだったのです。

須藤 もともと資産形成に関心が高そうだから、貯蓄型の保険に入っていたのでしょうね。

子安 ただ、この記事を読んで考え直したのでしょう。そこで次の休日に他の商品を一通り検索し、解約に気持ちが傾いたと推測できます。

須藤 この保険会社はどうなのかわかりませんが、サービスを解約させないために、「解約」と検索しても自社ページが出ないようにしている企業もあるんです。

自社ページが出るようにすれば、そこに足跡がつくので解約を引き止めるアプローチをすることができますが、出ないようにすることで逆効果になるケースもありそうです。この検索行動を見て、そう思いました。

子安 しかも最後のほうは「保険 解約 引き止め」で検索しています。この方はきっと「解約するときに嫌な思いをするんじゃないか」と心づもりをして、覚悟を決めている。ここまで調べるということは、もう「絶対に解約する」モードです。

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ユーザーがここまで本気になる前に、何かコミュニケーションを取れるようなサイト設計を考えるべきなのかもしれません。

須藤 消費者はこれだけ迷い、「解約 引き止め」と検索までして理論武装することを、企業はきちんと理解しなければいけませんね。ここまで気持ちが固まった人を、小手先で止めることはできませんから。

後藤 また商材が変わると、違った特徴があって面白いですよ。たとえば車の購入でいうと、軽自動車など価格の低い車を買う人ほど、メーカーのサイトを見る率が低いんです。価格.comや口コミサイトのほうが、よく見られています。

だからといって自社サイトをないがしろにしていいわけではありませんが、企業はその事実を知ったうえで、顧客とのコミュニケーションを考えるべきでしょう。

須藤 たしかに「さぐる」のに必要な情報と、「かためる」ために必要な情報は、同じではありませんからね。自分たちの商材がどんなバタフライ・サーキットを描くのかを知り、自社サイトにするか、外部メディアで記事にするか……という使い分けが大事になりそうです。

いやあ、1人1人のデータを追いかけると、リアリティがあって面白いです。

検索ワードから消費者の「クラスタ」を発見する

子安 ここまでは1人の行動履歴にフォーカスしましたが、消費者の行動は人それぞれで、購買までのプロセスが刹那的であるなら、じゃあ誰を狙えばいいのか? となりますよね。

たしかに一人ひとりはバラバラですが、似たような行動をする人を束でとらえ、それをターゲットに据えることはできる。これを「行動クラスタリング」と呼びます。

須藤 集団を表す「クラスタ」は新型コロナウイルスで最近よく聞かれますが、マーケティングでは日常的に使われる言葉です。ウイルスとは逆に、クラスタを特定して商材の認知を広げることを目的としています。

子安 今回は、ダイエットに関するクラスタを見てみましょう。

クラスタ特定にはまず、モニターが「ダイエット」と検索した前後の一定時間に検索したワードを、ダイエットに関係ないものも含めて抽出します。その単語を、機械学習で人の意思を入れずにグループ分けしたものが、クラスタとなります。

後藤 今年1月まで、つまり新型コロナウイルスが流行する前のダイエットクラスタには、「ランニング」「糖質」「サプリ」「ジム」などがあります。

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しかし3月からは一気に様相が変わり、「カロリー」「ウォーキング」「40代」などのクラスタが形成されました。とくに「ウォーキング」クラスタの中では、他に「なわとび」「トランポリン」など、自宅で手軽にできる運動が検索されています。

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従来ならダイエットクラスタは、年間を通じて変化が少ない部類です。ですがこれだけ変わったということは、コロナウイルスの拡大で、ふだん好んで運動をしない人の多くが「在宅勤務になったから、何かしなきゃ」と検索したのでしょう。

この状況が長く続けば、消費のトレンドそのものが変わってくるかもしれません。このようにクラスタの変化を見ることで、人々の意識を推し量ることができます。

須藤 コロナのビフォー/アフターで社会の様相は変わるでしょうから、こうしたデータを見ることの重要性が増しそうです。

後藤 ええ。今はいろんな業界から「何が起きているかわからないから、急上昇したワードを教えてほしい」と言われます。

もちろん上位にランクされるワードは「マスク」「テレワーク」「Zoom」などですが、私が注目したのは、35位の「サブスク」です。

須藤 サブスクリプション(定額課金制サービス)のことですか? 一見、コロナと直接関係ないように思いますね。

後藤 私も初めはなぜだろうと思ったんですが、サブスクと同時に男性は「車」「トヨタ」などと検索しています。先が見えない昨今の状況から、自家用車など大きな買い物を控え、カーシェアを検討する傾向にあるのかもしれません。

また女性は「服 サブスク」「子ども服 サブスク 980円」などと検索しています。洋服も、定額でレンタルできるサービスがありますね。以前から気になりながらも踏み出せなかった層が「この際だから」とサービスを試す機会に、このコロナショックがなっている可能性もあります。

また他に、「宅食」というワードも急上昇しています。これは外食産業のワタミが、従来から行う食事宅配のサービスを、子どもの学校が休みになって食事の用意に困っている親御さんに向けて割引価格で提供したことがきっかけです。

今回に限らず消費者には常に、家事や料理を手抜きしていると思われたくない意識があります。だからこそ、このタイミングで「宅食や冷凍食品を使うことは悪くない」という文化が醸成されれば、宅食業界は急成長するかもしれません。

須藤 ベビーシッターもそうですが、他人の目や罪悪感は、サービス購入を阻む大きな要因になるんですよね。

ですから消費者に「悪くないよ」と思わせるマーケティングをできるかどうかが、大きな鍵になりそうです。

子安 ええ。多くの業界が大変な状況ですが、サービスによっては、今まで一歩踏み出せなかった人に試してもらうチャンスとなり得るかもしれません。

「サブスク」「宅食」のようにクラスタを見て気になるワードが出た場合、そのワードに関して、ある1人のバタフライ・サーキットを追っていくと、いろんな背景が見えてきます。

マーケティングに活用する際には、バタフライ・サーキットとクラスタの両方を見ることをお勧めします。

須藤 2週間経てば別世界になるような現在の社会状況ですから、消費者のマインドは今後もっと、ダイナミックに変化しそうですね。

では、今日のまとめです。デジタル時代の消費行動の特徴として、

1)情報が一人ひとりに最適化され「タコツボ化」していること

2)これまでのような一貫性のあるストーリーでなく、「さぐる」と「かためる」の検索をぐるぐる回りながら(バタフライ・サーキット)、ある瞬間に購買を決める「刹那化」が起きていること

が挙げられます。ブランディングや広告を仕掛けるには、こうした現状をふまえる必要がありそうです。

また、個別化して見えにくい消費者のトレンド変化をとらえるには、検索ワードから「クラスタ」を発見するのが有効であることもわかりました。

6月に実施予定の「DX人材養成講座」でも、ヴァリューズにご協力いただく予定ですので、ぜひご期待ください。今日はありがとうございました。

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◎プロフィール
株式会社ヴァリューズ 取締役副社長 後藤賢治
1992年株式会社リクルート入社。複数の事業企画を行い、ECサイトの責任者を行ったのちに株式会社マクロミルに執行役員として入社し新サービス、新規事業開発などを手がける。
2009年元マクロミル代表の辻本と共に株式会社ヴァリューズを立ち上げ、「(提供の許可を得た)数十万人規模の無意識データ=インターネット行動ログ分析サービス」をカットオーバー。データを活用し、自動車・不動産・日用品・金融など、様々な業界のマーケティング課題の解決を行っている。
株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安亜紀子
慶應義塾大学 環境情報学部卒。
システムエンジニア・Webコンサルタントを経て、株式会社マクロミルに入社。
マクロミルのベンチャー時代から、商品開発、事業企画、営業企画などを手掛ける。
2011年よりヴァリューズに参画。執行役員として、事業企画やマーケティング部門の統括などを担当。
須藤 憲司
株式会社 Kaizen Platform Co-founder & CEO
2003年に早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。その後、2013年にKaizen Platform, Inc.を米国で創業。
現在は日本、US、韓国、台湾の4拠点で事業を展開。WebサービスやモバイルのUI改善する「Kaizen Platform」、動画広告改善の「Kaizen Ad」、世界40ヶ国10000人以上のネット専門人材ネットワークからクラウド上で企業のデジタルマーケティングチームを提供する「Kaizen team for X」を提供。著書:『ハック思考』『90日で成果をだすDX入門』

お知らせ

6月開講予定  NewsPicks × Kaizen Platform「DX人材養成講座」

DXとは何かといった基礎知識から、具体的なDX計画の策定方法、企業のDX戦略事例までを完全網羅。DXの専門家Kaizen PlatformのCEO 須藤憲司氏が講師を務める、次の日から一流のDX人材になるための全6回講座が2020年6⽉よりスタート予定。ご興味のある方はエントリーをぜひお願いいたします!

(文:合楽仁美、編集:Kaizen Platform公式note)

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