お客様の「コレが欲しい!」と僕の「コレを伝えたい!」は両立できる
坪田 信貴さんインタビュー 第1話(全3話)
「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。
今回は、坪田塾の塾長、「ビリギャル」の著者として知られ、須藤が「ナチュラルボーンマーケター」と語る坪田信貴さんにお話しをうかがいました。
第1話では「坪田さんの自己ブランディング」。
坪田さんが経営する坪田塾では、独自の“子別”指導により1年で偏差値を40伸ばす教育を行っています。「勉強なんてどうでもいいんです。でも、勉強は大事なんです」、そう語る坪田さんの真意をうかがいました。
「勉強なんてどうでもいいじゃん」の真意
須藤
坪田さんは初対面の相手に自分をどう紹介していますか?
坪田さん:
やっぱり「『ビリギャル』を書いた者です」というのが一番わかりやすいですよね。だからそう言っています。
須藤:
でも作家ではないですよね。子別指導塾「坪田塾」の先生なんですよね。
坪田さん:
そういうブランディングになっています。
須藤:
そこがめちゃくちゃ面白い。塾の先生っぽくないですもん。
坪田さん:
そうかもしれませんね(笑)。本音では「勉強なんてどうでもいいじゃん」と思っていますけど、真正面からそう言っても伝わりません。親御さんたちは、自分の子どもの成績が上がって、いい大学に行ってほしいと思っているので、その希望に真摯に向き合うことは大前提なんです。
須藤:
まさにビリギャルで描いていたことですよね。
坪田さん:
定期テストで0点だった子が、急に85点をとれたら「坪田って凄いんじゃないか」って思ってもらえますよね。子どもだって自信がつく。親や先生の言うことだって聴くようになったり、さらに成績を上げて、良い大学に受かったこともあります。その縁で生涯の付き合いになっているご家族さんもいらっしゃいます。
須藤:
でも坪田さんの目標は自分が「凄い!」と思われること、信用してもらうことじゃないですよね。
坪田さん:
そうです。偏差値を上げられないのに「勉強なんてどうでもいいんですよ」「本当に大事なことはこれですよ」と言っても受け入れてもらえません。世の中が教育に求めているのはテストの点数であり、いい大学に入ること。それを達成して初めて「先生」として、子どもたちに道を示す、本当の仕事ができると思っています。
須藤:
飽くまで「偏差値を上げる」「坪田さんは凄い」は前提であって、その先を見ているんですね。
坪田さん:
企業もそうあるべきだと思っています。世の中が求めている商品やサービスを作る、売る。だけど売るだけでいいのか。自分たちが本当に「提供したい」「こうなって欲しい」と思っているものは何か。それは商品やサービスの価値とまったく別のものであっても全然いいと思います。お客様には「コレが欲しい!」があり、僕には「コレを伝えたい!」がある。それは両立できるんですよね。
須藤:
坪田さんのそういう考えが、坪田塾の人気にあらわれていると思っています。
坪田さん:
坪田塾で一番多いクレームは「なんでうちの子を坪田塾に入れてくれないんですか?」なんです(笑)。
須藤:
それってすごく正しいと思います。僕は「お客様は断ってナンボ」だと考えています。ところが一般的に言われているマーケティングって、常に「買ってください来てください」じゃないですか。本当はまったく逆なんです。
坪田さん:
本当にそう、おっしゃるとおりです。「欲しいけど、手に入らない…」それが渇望感とか、話題になるんですよね。
尺が決まっている中でコンパクトにまとめてオチをつける
須藤:
僕は坪田さんのことを「ナチュラルボーンマーケター」だと思っています。ここまで話してくれたことでも優れたマーケティング視点を持っているので嫉妬しちゃいます(笑)。坪田さんが出す著書も憎らしいほどキャッチーで、すごくいいんですよ。その上、コンパクトに面白い。その力ってどうやって身につけたんですか?ビリギャルでコメンテーターとして呼ばれることが増えたから?
坪田さん:
う~~~ん、言われてみればその前からかもしれませんね。大阪でラジオのパーソナリティを3年やってたんです。そのときの経験がめちゃくちゃ生きてます。
須藤:
それは一体どんな?
坪田さん:
MBS(毎日放送)ラジオで上泉雄一さんというアナウンサーと組んで、毎週火曜日に2時間半喋っていました。これがもう大変。大阪の人たちはひとつの話題に対して必ず“オチ”がないと締まらない。ただしゃべっただけではだめなんです。しかもテレビやラジオって尺があるじゃないですか。「その限られた時間の中でどうするか」、とても大事なことを学ばせていただきました。上泉さんがおっしゃるには、それができる人じゃないとそもそもラジオに呼ばない、坪田はそれができているから呼んだと。
須藤:
実際、坪田さんは毎回短いコメントの中にも必ず面白い要素を入れて、なおかつタメになることを盛り込み、人の記憶に残ることを言う。吉本興業の会議に出ていても、坪田さんの話が一番面白いです。
坪田さん:
何をおっしゃいますやら(笑)
「自分で作った肩書きしか名乗りたくないんです」
須藤:
坪田さんはその吉本興業の社外取締役に就任されたわけですが、あまり前面に押し出していないように感じます。
坪田さん:
自分から「吉本の社外取締役です」なんておこがましくて言いづらいんです。
須藤:
なぜ「おこがましい」と感じるんですか?
坪田さん:
僕は常に自分が作ったものを肩書にしたいと考えています。最初に話したように僕の肩書きは「坪田塾の塾長」、「ビリギャルの著者」。どちらも僕が作ったものだから胸を張って言えます。でも、経営者や作家という概念は僕が作ったものではありません。だから、名乗りたくないんです。
須藤:
その概念は面白いですね。
坪田さん:
「本質的にそれをやるとダメだよね」と思っているところもあります。吉本興業さんは長い歴史があり、これまで多くの社員、タレントが力を合わせて作ってきている。自分はそこに社外取締役として関わらせてもらっている。だから隠している訳ではないんですが、「ただ乗りしてはダメだ」という感覚を持っているんです。
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