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良いマーケターの条件はナチュラルボーン、良い人柄であること

坪田 信貴さんインタビュー 最終話(全3話)

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。今回は、坪田塾の塾長、「ビリギャル」の著者として知られ、須藤が「ナチュラルボーンマーケター」と語る坪田信貴さんにお話しをうかがいました。
第3話では「戦略の本当の意味は『戦わないこと』にある」。
戦術と戦略、よく聞く話だけど何が違うのか。「戦略って戦いを略すって書くじゃないですか」と、坪田さんはシンプルに違いを表現してくれました。「戦いを略す」とはどういうことなのか……須藤が深掘りしました。

受験戦略、「勉強せずに受験を勝ち抜く」とは?

須藤:
坪田塾ではどういうことを教えているんですか?

坪田さん:
「受験戦略」ですね。子どもたちには目指している大学に入ってもらいたい。そのためには「戦略が大事」だと言っています。「戦略」って言葉はよく出てきますけど、須藤さんはどういうものだと考えていますか?

須藤:
一般的には、特定の目的を達成するための準備や計画、運用の方策といった意味で使われていますよね。僕の理解もそれに近いかな・・・

坪田さん:
それで正解だと思います。僕はその上でもうひとつ考えてみました。「戦略」という言葉は「戦いを略す」と書いてある。だから「いかに戦わずして成果を上げるか」。戦略とは「戦わないこと」ではないかと考えてみたんです。

須藤:
つまり坪田さんの仰る「受験戦略」とは、いかに勉強せずに良い大学に入るか、ということですか?

坪田さん:
そうです。さすがにまったく勉強せず、というわけにはいきませんが、やるべき勉強に集中するスキームを考えるべき。そこで最も大切なのは「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」という孫氏の兵法、すなわち相手を知ること。受験でいえば、入りたい大学の出題傾向を知ることがとても重要です。

須藤:
なるほど。

坪田さん:
例えば、慶應義塾大学の経済学部の入試では、日本史はほぼ1600年以降しか出題されないんです。ところが子どもはそれを知らない。「どの時代から勉強しているの?」と尋ねると、「旧石器時代からです」と返ってくる。相手が何を求めているのか知らないまま、自分の目の前にあることから何となく勉強を始めているんです。

須藤:
教科書はそこから始まるからと言っても、「受験」と目的が決まっている中では「無駄」になってしまうのも理解できます。

坪田さん:
もちろん入試だけに囚われずに万遍なく学ぶべきという意見もあって、理解もできます。だけど、そうじゃないんです。「まず求められていることをやってから、余裕ができたときに学べばいいのではないか」というのが、「坪田流の受験戦略」です。旧石器時代も大切ですが、まずは受験に集中して結果が出たあとに学んでも遅くはないんです。

究極のマーケティングは「好きになってもらう」ではないか

須藤:
僕もマーケティングで「須藤理論」というものを持っています。そのひとつが、「好きと知性の反比例理論」。人は「好き」の度合いが上がるほど「知性」が下がる。

坪田さん:
それは面白いですね(笑)。

須藤:
あるファンドマネージャーの家に遊びに行ったら、あるアイドルの同じCDが1,000枚ぐらいあったんです。握手券とかファン投票の応募券のためだと思うんですけど、CDは不要じゃないですか。「聴いてみたいから一枚ちょうだい」って話したら「嫌だ。自分で買え」って言うんです。

坪田さん:
それはなぜだったんですか?

須藤:
彼にとっては応募券がなくなったCDも大事なもの。それだけそのアイドルが好きなんです。普段は市況や経済のことを客観的に見て知的に語る人なのに、そのアイドルのことになると知性も理性もなくしているところをとても興味深いと感じました。

坪田さん:
完全にのめりこんでいるんですね。

須藤:
これは究極のマーケティングなんじゃないかと思いました。相手が知性や理性をなくしても「好きだ!」と思ってくれる。裏を返せば、「好きだ!」と思ってもらえたら、優れたマーケティング手法もテクニックも必要ないんじゃないか。

坪田さん:
なるほど、戦いを略していますね。

須藤:
「坪田流受験戦略」では相手を知って何が必要になるかを見極める。「須藤理論」は「好き」になったらのめり込める。この二つは繋がるとも思いました。もしも受験を「好きだ」と思わせることができれば、出題傾向を知りたくなってくる、問題も研究しますよね。きっと「この大学の入試問題だと1600年以前のことは出てこないな」って気付くと思うんです。

坪田さん:
それは確かにそうですね!ただ、ひとつ疑問があります。須藤さんってマーケティングが大好きなんだなって感じるんです。でも、知性や理性をなくしているなって感じないんですよ。

相手と併走する力はマーケティングの基本

須藤:
実は僕が好きなのは、人が悩んでいる姿を見ることなんです。

坪田さん:
それはSの本性とかですか?

須藤:
いやいや、そうじゃなくて、相手と一緒に悩むのが好きなんです。どんなに高尚なことであっても、テーマがつまらなければその人と悩みを共有したいとは思いませんけど、第2話に出てきたようなシニフィエが面白ければ、どんどん相手の悩みにのめり込んでしまいます。

坪田さん:
他人の将棋を打ちたくなる感覚ですかね?

須藤:
そうですね!後ろから対局を眺めていて、「ちょっと待って!そこ打っちゃだめ~」「今の手は取り消して、もう1回打ち直させて~」ってクチ出したくなっちゃうんですよ。知性が低下してますよね(笑)。

坪田さん:
僕と同じだ!坪田塾の先生として生徒指導なんぞを行っていますが、実際は指導しているとか、教えているというつもりは全然ないんです。子どもと一緒に伴走している感覚。

須藤:
だから坪田さんの「旧石器時代から勉強したって意味ないだろぉ~!」って、つい出しゃばってしまう気持ちもわかります(笑)。

坪田さん:
須藤さんと似ているなと感じるのは、「自分だったらこうする」を持ってお客さんと併走するところかもしれません。併走していたら自然に戦略、マーケティングを考えますよね。吉本興業の大崎洋社長も社員やタレントと併走しているかたなんですよ。だから、みんな「大崎さんを男にしたい!」という気持ちなんです。良いマーケティングって知識よりも人間性、人柄が影響する。須藤さんが言う「ナチュラルボーンマーケター」とは「良い人」ということなのかもしれませんね。


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