【大胆予想】Xtechは消える!?ー「金融は見えなくなる」ってどういうこと?
『DXプレイブック』は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家集団 Kaizen Platformの須藤による解説シリーズ。loT、サブスクリプション、AI、D2C、OMO、MaaSなどをキーワードに「DXとは?」を考えるDXの入門書です。
Xtechは産業構造を変革する
Xtechとは「ある領域=Xをテクノロジードリブンで効率化するサービス群」を指す言葉です。
金融のFintech、人材領域のHRtech、教育のEdtechなど様々なカテゴリが存在します。そのなかには多様なスケールのサービスがありますが、その産業構造をおおきく変えうるサービスが少なくありません。
たとえばTaxitechやCartechとも呼ばれるUBERは、社内にドライバーを抱えずに世界最大のタクシー会社になりました。上場時の時価総額は7兆円を超えています。ドライバーと利用客をマッチングさせるプラットフォームとして、ドライバーの稼働率向上や需給に応じたプライシングの実現しています。
従来は、会社単位でコールセンターなどを設置し配車工程の効率化を図るのが一般的でした。その構造に対して、個人単位からドライバーを束ね、仮想配車センターとも言える役割をUBERプラットフォームが担うというイノベーションが起きたのです。
Xtech参入は2パターン
タクシーにおける配車工程のようにXtech企業の多くは、バリューチェーンのある局面をスライスしてサービス化します。これをアンバンドル化と言いますが、そのパターンはざっくり二種類あります。
ひとつはホリゾンタルサービス(横断的なサービス)からバーティカルにスライスするサービスです。たとえばメルカリのように横断的になんでも売れるフリマサービスの普及を受けて、いま日本ではスニーカー専門C2Cの「モノカブ」が流通量を伸ばしています。
2018年11月の正式リリース後、約半年間で30%成長だった月次の流通額は更に角度が上がり、現在では月次50%成長となっている。※1
ほかにもトレーディングカード専門C2Cの「magi」も注目を集めています。
(例)トレーディングカード専用フリマアプリ「magi」(出典:https://magi.camp/)
これらは「メルカリ」でも出品できるものです。
ただし「簡単に出品できる」「はやく売れる」といった「メルカリ」の提供価値ではなく、スニーカーやトレカなど独自のカルチャーがありプレミアムがつきやすい特性から「適正な価格で売れる」という価値を重視した機能設計をおこないユーザを集めています。これは特定領域に特化したXtechの参入方法と言えます。
もうひとつのアンバンドルは、バーティカルな領域の中のある特定のプロセスを切り取ってスライスするパターンです。Fintechでいう決済や海外送金サービスがそれに当たります。これまで金融機関が一括で提供していたサービスから特定のプロセスを切り出し、単独サービスとして構築することで市場浸透を図っています。
たとえば海外送金はブロックチェーン技術を用いることで、信頼性を担保したまま高速かつ安価に利用できるようになっています。
送金国や金額によって異なるが、手数料は最低460円だ。インターネットバンキングでも3000円程度かかる大手行に比べて格段に安い。リップルを採用した相手国向けの送金では数秒で着金する。日本からアジア各国向けの同社の送金シェア(銀行含む)は4割超に上るという。
またスマホがあれば送金可能で、銀行口座も必要ありません。海外で働き母国へ送金したい人々のニーズを掴んでいるのです。
Xtechサービスは、お互いに繋がりながら姿を消す
そもそも金融は、融資や決済などをはじめとして、あらゆる産業や事業会社の経済活動に必要不可欠な機能です。そんな金融がFintechとしてアンバンドル化し進化していくと、やがて「見えないもの」になっていくと考えています。様々な事業のトランザクションの隙間に入り込み、ひとの意識が及ばないところで機能するものになっていくのです。※3
ほかにもXtechのなかには、産業横断的な機能をXと括っているカテゴリがあります。たとえばHRtechやAdtechです。採用や労務、広告は、あらゆる事業を営む上で必要不可欠な機能です。こういったカテゴリはアンバンドル化したあかつきに、FinTechと組み合わさっていく可能性があります。
例えば、交通費や出張の宿泊などの経費精算のアプリと支払いのペイロールアプリが連携して全て一体化して、PayPayやLINE Payなどのキャッシュレスで支払われる世界が到来するかもしれません。
あるいは、広告代理店の業務で言えば、効果のレポーティングとクライアントからの請求から実際の入金日までの間の資金繰りを支えるファクタリングがくっついていくかもしれません。
上記のように、HRtechやAdtechのサービスを使っている裏側でFinTechサービスが動いているというように、Xtechサービス同士が連携し合う事で、それぞれが人が気づかないところで機能していくようになっていく可能性があります。
Xtechが本当に世の中の隅々まで普及している時には、Xtechのサービスそのものは姿を消しているのかもしれません。
※1:https://thebridge.jp/2019/11/brhino-raised-220m-yen-from-xtech-ventures
※2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55332600W0A200C2EE9000/
※3:https://note.com/sudoken/n/n3540a81aa07f?magazine_key=mb26a44c7ae4a
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