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【ECとWeb広告】「インターネット・トレンド」2019年版 解説

こんにちは! Kaizenで学生インターンをしているDaikiです。

先月、インターネットの現状を網羅的に紹介したレポート「Internet Trends 2019」が公開されました。

例年、最新の数字とともにインターネットの今後を予想しており、インターネット事業に関わる経営層が押さえておくべき数字がてんこ盛りのこちらのレポート。前回のnoteでは、第1章として世界における現在のインターネット普及率やスマートフォンの出荷台数などについて解説してみました。未読の方はぜひこちらもご覧ください!

さて、今回は第2章「E-Commerce + Advertising(Eコマース + 広告)」について解説していきます。

1)  Users
2)  E-Commerce + Advertising (今回の記事)
3)  Usage...
4)  Freemium Business Models
5)  Data Growth
6)  ...Usage
7)  Work
8)  Education
9)  Immigration + USA Inc. 
10)  Healthcare
11) China (Provided by Hillhouse Capital)

2-1) E-Commerce

○Eコマース売り上げの成長率

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アメリカにおいて、Eコマース(≒ネットショップ)の売り上げは年々増加しており、約4年間で2倍の成長を見せ、$140B(14兆円)に到達する勢いです。成長率は2010年の約20%の記録が更新されておらず、現在は約12%付近にとどまっています。

○(Eコマースを除く)実店舗売り上げ成長率

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実店舗の売り上げ成長率が2007年から急激に減少している主な原因は、リーマンショックだと考えられます。リーマンショックの直後を除けば、約2〜5%間の成長率でグラフが推移していることがわかります。

先ほどの図では、Eコマースの売り上げが4年間(2014〜2018)で約2倍に増えていましたが、実店舗の売り上げも年々増加しているんですね。

○Eコマースのシェア

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現在、アメリカにおける店舗の売り上げのうち、15%をEコマースが占めています。意外にもこの数値は少ないように感じています。

ここまでの情報をまとめると、店舗もEコマースの規模も拡大しながら、徐々にEコマースのシェアが高まってきているという状況でしょうか。

2-2)Online Advtising

○メディア利用時間と広告費の割合

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グラフを見ると、紙媒体・ラジオ・テレビ・パソコン・携帯電話のうち、パソコンや携帯電話などのインターネット広告が主流であることがわかります。メディア使用率においても携帯電話がテレビを超えそうで、宣伝費も携帯電話に集中している傾向にあります。

また、2010年から2018年にかけて紙媒体の広告費が20%減少しており、消費者はより携帯電話に意識が向いていることがみてとれます。

○インターネット広告支出(年間)=年成長率22%

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インターネット広告の掲載先は携帯電話に集中しつつあるという点で、やはり携帯電話に掲載することを目的としたインターネット広告支出額は2011年以降、指数関数的に上昇しています。

ちなみに、2011年はタッチパネル+スマートフォンの販売台数が急激に増加した年です。

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「日本における主要3キャリアのタッチパネル+ストレートタイプのスマートフォンの発表台数(HH News & Reports調べ)」


○インターネット広告収入

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一方、近年のインターネット広告の売り上げ(アメリカに本社がある企業)を見ると、2017〜2018年の2年間で約2倍の成長(約3兆円→約6兆円)を見せていますが、成長率で見ると低下の傾向に。今期の成長率は、9%減少(29%→20%)しています。

○インターネット広告プラットフォーム

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急激に増加したインターネット広告の売り上げの内訳を見ると、Google、Facebookが市場をリードし、その他が残りのシェアを獲得しています。

ひとつ前のスライドで成長率が低下している原因は、アジア(特に中国・インド)が近年のグローバルインターネットの成長を主に牽引してきたことにあります。そもそも、中国ではGoogleやFacebookといったアメリカ発のサービスにアクセスができないため、成長率鈍化の原因になっています。

そして、これからの伸び代もほとんど中国とインドにあるという状況のなか、GoogleやFacebookにとって、そのグローバルインターネットの成長エンジンである中国をカバーできないのは大きな痛手だと考えられます。

○インターネット広告の購入

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インターネット広告市場のうち、プログラマティック・バイイング(Programmatic Buying)(※)にかける割合が7年間で52%増加しています。

※プログラマティック・バイイングとは……「データに基づいたリアルタイムな広告枠の自動買い付けのこと。運用型広告とも呼ばれ、DSPやSSPを活用したRTB(Real Time Bidding)がその代表例である。従来のように「どこに表示するか」を決めて1つの広告枠を買付け、そこに単一の広告物を投下するという方式ではなく、状況に応じて、その瞬間にコミュニケーションを取りたい消費者が閲覧しているであろう枠を自動的に入札し、指定された広告物を投下する。そのため、従来の広告に比べきめ細やかなコミュニケーションを図ることができ、広告を通じてOne to Oneのコミュニケーションを実現することが可能になるとされる」
(出典:「マーケティング用語集」、Synergy Marketing )


○広告シェアを増加させたドライバー

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インターネット広告市場を発展させるドライバーとなった4つのサービスがあげられています。

Facebook:個人の趣向がわかるので、ターゲティングを容易にした
Youtube:マシンラーニング(AI)により自動のレコメンド機能を搭載した
Pinterest:ビジュアルベースのEコマースを可能にした
Twitter:フォロー、フォロワーから分析し、ユーザーにとって関連性の高い広告を打ち出すことを可能にした

○顧客獲得コスト(CAC)

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ここではファイナンスアプリを例に書かれていますが、顧客獲得コストは競争が激しく、年々増加しています。

○顧客獲得コスト(CAC)を成り立たせるために、より長い顧客生涯価値(LTV)を達成する必要がある

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ビジネスの鉄則として、顧客獲得コスト(CAC)<顧客生涯価値(LTV)でなければなりませんが、CACが高まってきている分、LTVをより長くできる何らかの仕組みづくりや魅力的なプロダクトづくりが必要なようです。

○効果的で効率的なマーケティングは、サービスのトライアルと顧客の口コミから成り立っている

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これは下のスライドから解説していきます。

○効果的で効率的なマーケティングは無料トライアル/ティアである

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ユーザーがオンラインストリーミングをする主(42%)な理由は、無料で新しいサービスを利用できることにあります。

○例1)Happy Customers:Spotifyにおける無料ユーザーから有料ユーザーへの転換(無料トライアルの成功事例)

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無料トライアルの成功事例として、Sportifyが挙げられています。

Sporifyは有料ユーザーで収益を獲得するフリーミアムモデル(※)ですが、その加入者の60%が有料会員とものすごく高い割合です。

※フリーミアムモデルとは……基本的なサービスや製品は無料で提供し、一部機能で料金を課金してもらうビジネスモデル

有料会員割合の高さの理由のひとつに、「有料会員コンテンツを3ヶ月限定で、100円で体験できる」プログラムの提供があります。LTV/CAC比率が上昇していることから、より低いCACかつ、ユーザーのエンゲージメントを高めることで顧客を維持できているのだと推測できます。

○例2)Happy Customers:zoomにおける無料ユーザーから有料ユーザーへの転換(既存ユーザーの高いエンゲージメント維持に注力)

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ビデオ会議ツールを提供しているzoomですが、一定のCACで高いLTVを維持しています。

その理由として、「新規ユーザーを追いかけるのではなく、既存ユーザーが満足していることを確認することが最も重要」と書かれており、既存ユーザーのエンゲージメント管理が非常に重要であることがわかります。

○効果的で効率的なマーケティングは口コミにある

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Eコマースにおいて、ユーザーが新しいサブスクリプションサービスを利用する主(23%)なきっかけは口コミ(Recommendations)です。

○例3)Happy Customers:Stitch Fixの事例

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あまり日本では知られていないStitch Fixですが、通常のネットや実店舗でのショッピングとは異なり、自分で商品を選ぶのではなくAIとスタイリストが自分に合った商品を提案してくれるサービスです。

Stitch Fixでは、データに基づいたAIと、4,000人以上のスタイリストの感性により、ユーザー1人1人に合わせたレコメンドをしています。

2-3)Advertising TBDs

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ここでは今後広告の出し方に関して決めるべきこと(TBDs)が挙げられています。

○「プライバシー」に対する認識の変化が、今後の広告ターゲティングに影響を及ぼす可能性がある

Facebookのような企業が行なっている、ユーザー情報を基盤とした広告ターゲティングの仕組みが、プライバシーを侵害しているのではないかという懸念が上がり、「GDPR」という規則が2018年に発表されています。

この影響が企業の収益に及んでおり、インターネット広告市場では懸念すべき要素です。

○広告ターゲティングへの影響

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しかし、その規則は広告ターゲティングに大きな影響を与えることが予想されます。テレビを見ながら携帯電話を操作する人は88%を超えており、広告のあり方がそもそも変わりつつあるからです。


第2章のまとめ

今回は、E-CommerceとAdvertisingの近年のトレンドについて解説しました。

E-Commerce(Eコマース)に関する章からは、店舗もEコマースも規模を拡大しながら、徐々にEコマースのシェアが高まってきているという状況が理解できます。

Advertising(広告)に関する章からは、モバイル端末の普及によってインターネット広告市場が急速に発展しており、企業のマーケティングのあり方もよりデータ・ドリブンに行われていることがわかります。たとえば、ユーザーのパーソナライズ施策の台頭や、サブスクリプションモデルの浸透などです。ただその一方で、広告の多くがFacebookやGoogleといった巨大企業のデータを元にしているため、GDPRなどの規則による収益面での悪影響が懸念されています。

また、E-CommerceとAdvertisingを同じ章にした著者の意図を私的に考えると、携帯電話が普及してインターネットが日常化することでネット上での購買のハードルが低くなり、買いたいと思う欲求(Advertising)も、買うというアクション(E-Commerce)も変わってきたことを示すためなのだと感じました。

お読みいただきありがとうございます。次回は 「Usage...」の章を解説します!

原本はこちらからご覧になれます。→「Internet Trends 2019」

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