見出し画像

「リアルで当たり前でないと、ネットでも難しい」その想いが生んだ「いいかも」でつなぐマッチングの場

株式会社マッチングエージェント 代表取締役社長
合田武広さん

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。今回は、マッチングサービス「タップル誕生」を運営するマッチングエージェント代表取締役社長の合田武広さんにインタビューしました。


合田さんは、サーバーエージェント内定者のときにビジネスコンテストでマッチングサービス「フェイスマッチ」のアイデアで優勝。審査員から絶賛されたアイデアを“事業”として展開したものの、挫折を経験します。その経験を経て立ち上げたのが「タップル誕生」でした。競合サービスが多く、急成長しているマッチングサービスの市場において、タップル誕生はサービス開始から4年で会員数400万人を突破し、“大手”マッチングサービスのひとつに名を連ねています。合田さんが挫折から得たことは? そこから生まれた合田さんのマーケティング哲学とは?

日常の課題をネットでどう解決するかを考える

――まず、いま手がけている事業について教えてください。

5年前にマッチングエージェントを設立し、4年前に「タップル誕生」を立ち上げました。それからいくつかのマッチングサービスを立ち上げて、現在は「タップル誕生」のほかに「CROSS ME」、「mimi」を運営しています。この3つのサービスを一緒にしてカップリングユニオンという横断組織を作り、僕はそのリーダーをやっています。

――マッチングサービスは競合サービスがたくさんありますが、「タップル誕生」ではどのように差別化を図っていますか?

サービスを考えるとき、手がかりとしているのは「市場が大きいところを攻めること」、そして「まだあまりやられていない領域を見つけること」です。「タップル誕生」を立ち上げた当初は「Pairs(ペアーズ)」「Omiai」の2つのサービスがすごく伸びていた時期で、マッチングサービス市場はこれからもっと伸びていくだろうなと思いました。

当時、この2つのサービスはFacebookを活用している人を中心に広がっていきました。そのため、ユーザーの年齢層は比較的高めで、婚活目的で使う人が多かった。裏を返せば、Facebookを使っていない若い人、ライトな恋愛をしたい人にはあまりアプローチできていないのではないかと考えたんです。そのぽっかりと空いた領域を狙ったのが「タップル誕生」。先行する2社の弱みとしている部分を「タップル誕生」の強みにしたんです。

――「タップル誕生」は趣味でつながるというのが特徴ですが、このアイデアはどうやってひらめいたんですか?

当時流行っていた街コンを参考にしました。街コンがない時代は、「男女の出会いの場」は合コンくらいしかなかったように思いました。でも、恋愛目的の大規模合コンは集客に苦労していましたが、街コンは周りも「行ってみない?」「楽しかったよ!」と話している。「この街が好きだから!」「美味しいご飯を一緒に食べよう!」、恋愛もその延長線にあればいい。提供するべきは「出会い」ではなく「機会や体験」だと感じたんです。

同じ目的なのに、見せかた1つ、言いかた1つでこんなにも人の集まりかたが違う。この街コンのような気軽な出会いをネット上でできたら面白そうだなと考えて、生まれたのがタップル誕生。

当時、ネットの出会いというとあまり良いイメージがなかったのですが、タップル誕生が目指したのは「婚活、恋愛」など目的を定めたマッチングではなく、共通の話題があって「面白そう」「楽しそう」というマッチング。

自分が大好きなバンドのTシャツを着ている人が美人だったらいろいろ考えてしまって話しかけづらいですよね。でも、ネット上なら気軽に「僕も好きなんです!」と話しかけられる。それが婚活や恋愛に発展してもいいですし、一緒にライブに行く友だちや仲間になってもいい。共通の趣味を通して、自然な出会いを提供できるサービスがあれば、マッチングサービスはもっと広がると考えたんです。

――変化の早い市場に対応していくために、日頃意識していることはありますか?

リアルの店舗の動向を参考にしています。たとえば、相席屋やパブリックスタンドがなぜいま受け入れられているのかなどをよく考えます。また、実際にデートをするときのフローを妄想しますね。どういう流れで食事に誘って、付き合う流れになるのかなと。

その途中にどんな課題があるのかを考えて、それをネットで解決する方法はないだろうかとも考えます。あとは、彼女が欲しいと言っている人の声を聞いたり、その人がサービスを使ってくれるかどうかを考えたりすることもありますね。実際に使っている人の様子が思い浮かぶかどうか、というのは指針の1つになっています。

タップル誕生は、共通の趣味を通して、自然な出会いを提供できるサービス

新しいサービスを作るときに、新しいことをする必要はない

――合田さんはビジネスコンテストで優勝した経験がありましたよね。挑戦しようと思ったきっかけについてお話しいただけないですか?

大学時代にTwitterを通して同世代の起業家に出会ったんです。同世代でも自分でサービスを作って事業をやっている人がいることに大きな刺激を受けました。そんな折、「ブレークスルーキャンプ2011」というビジネスコンテストがあることを知りました。 

温めていた「フェイスマッチ」というサービスで挑戦したら、なんと優勝してしまったんです。優勝したことも嬉しかったですが、そのコンテストでさまざまな人に出会えたことも嬉しかった。その“出会い”のおかげで「良いサービスを作るぞ!」と事業者としてやっていこうと気持ちが固まったんです。

「フェイスマッチ」は、Twitterでの出会いをもっと多くの人に体験して欲しいという想いから作り上げました。「出会いによって人は変わる」という強い想いを持って進めていましたし、審査員のかたがたから絶賛いただいたアイデアでしたので自信を持って取り組んでいました。でも、上手く事業として続けられませんでした。

――クローズしてしまったんですか?

当時の僕は、マーケティングのことが全然わかっていませんでした。

「審査員に興味を持ってもらえるには?」と考えて、斬新なアイデアを考え抜きました。結果、審査員のかたには興味を持っていただけました。でも、ユーザーには受け入れてもらえなかったんです。「良いものを作れば、ユーザーも使ってくれる」、「新しい技術、新しいことにきっとユーザーも惹かれる」と考えていましたが、そうじゃなかった。

リアルな生活で当たり前のことでなければネットでも成功しないですよね。新しくてもユーザーがついてこられない…「新しいことをやる必要はなかったのかもしれない」と考えました。

――その挫折から、どのよう「タップル誕生」を生み出したのですか?

「実際にユーザーが使いたいと思うか」を考えることが如何に大事か。

サービスが実際に使われて、そのサービス内で圧倒的な体験ができて、それが口コミとなり、新しいユーザーに「やってみようかな」と思ってもらう。この循環を考えないといけないんです。どこか1つだけとがっていたり、何かが欠けていたりするとユーザーはついてきてくれません。

「タップル誕生」でいえば、恋愛をしたい20代の人がいま何を求めているのか、彼らにとって何が日常なのか、その感覚に沿うことが大事だと思っています。新しいサービスを作るときに新しいことをしなくてもいいんですよね。

――「新しいサービスを作るときに新しいことをしなくてもいい」というのは面白いですね。

昔の自分だったらゼロイチでこれまでにないビジネスモデルを考えようとしていたと思います。

「タップル誕生」を立ち上げたときは、すでにマッチングサービスで成功しているモデルがありました。お互いが「いいね」を押せばマッチングする。メッセージのやりとりをしたり、いいねを押してもらいやすくしたりするために月額課金をする。そのお金を広告に回してより多くのお客さんを獲得するというモデルは、すでに“先輩”である人気のマッチングサービスで確立していました。

「他社とは違うことを」ではなくこうした先輩たちの「胸を借りる」気持ちで、モデルを参考にして、タップル誕生では「ターゲットや提供できる体験」を独自のものに変えていきました。だから、立ち上げ当初の「タップル誕生」では新しい技術も、新しい概念も使っていません。マーケティングのポジションを変えて、若いユーザーが求めていることができるようにしただけなんです。

ただし、時代によって変化することもありますよね。ここ数年、動画を撮って公開することに抵抗が減ってきています。こうした変化によって、「新しい技術」も求められてきますので、目を向けていきたいと考えています。

――そういえば、「タップル誕生」では「いいね」ではなく「いいかも」のボタンになっていますよね。これはどんな意図が?

「いいかも」くらいのほうが気軽に押せるんじゃないかなと思いました。「いいかも」が届いたときの返事も「ありがとう!」のボタンにしています。「ありがとう!」だったら押しても“いいかも”と思えますよね(笑)。これもライトな出会いの場を作るための1つのマーケティングです。

――確かに、身構えずに押せそうですね(笑)。今後もいろいろなマッチングサービスに挑戦していくのですか?

僕自身は男女の出会いに関係なく、いろいろなマッチングサービスをやってみたいと考えています。僕自身がネットの出会いで人生変わったので、ネットがなければ出会うことがない人同士が気軽に出会える機会を増やしていきたいと思っています。

Kaizen Platformは、デジタルトランスフォーメーションの専門家集団です。ご相談は、こちらからお気軽にどうぞ!