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【Appleもテスラも】価値提供はプロダクトからサービスへ

『DXプレイブック』は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家集団 Kaizen Platformの須藤による解説シリーズ。loT、サブスクリプション、AI、D2C、OMO、MaaSなどをキーワードに「DXとは?」を考えるDXの入門書です。

iPhoneの新作が発表になると、いまでもネット上では様々な声があがります。なかには期待が高すぎるのか「ジョブズがいたらこんな製品は世に出ていないはず」という声もあります。Apple社にイノベーティブであることを要望する熱狂的ファンからの愛ある評論です。

これらが意味するのはスマートフォンという製品のコモディティ化です。技術が成熟し、端末の機能のみで差別化をはかることがむずかしくなっています。その一方でスマホがある生活は、ひきつづき日進月歩で便利に。つまりスマホから受けとっている価値はどんどん大きくなっています。製品の機能や性能から価値発揮の力点が移行していることにお気づきでしょうか。

そのような変化は、スマートフォンに限った話ではなく様々な製品で起きていることです。今回はそのような変化についてお話します。

変化トレンド(1)所有から利用へ

(例)公式音楽アプリSpotify (スポティファイ)

まずユーザの消費価値観のお話です。モノの所有ではなく利用に重きを置くようになっています。自動車を買わずに必要なときにカーシェアするというような変化です。CDを買わずにストリーミングサービスで音楽を聴くという変化もそうですね。

マッキンゼー・アンド・カンパニーと米経済分析局(BEA)によると、体験型消費はここ数年、個人消費の1.5倍、モノへの支出の4倍のペースで伸びている。この成長をけん引しているのがミレニアル世代だ。※1

お金を払って「モノ」を手に入れるといった交換価値から「コト」を重視する体験価値へとユーザの考えはシフトしています。

そのような変化に呼応して、提供者側はどのように変化しているのでしょうか。それはプロダクトからサービスへという傾向です。プロダクトを売っておしまいではなく、プロダクトをユーザとの接点として、体験全体の向上に主眼を置く考えかたがトレンドなのです。

たとえば電気自動車カテゴリーを牽引するテスラ社は、世界中を走る自社自動車のセンサーを通じて日々、自動運転アルゴリズムを磨いています。

(例)テスラ社のオートパイロット

その学習結果は随時ソフトウェアアップデートとして全自動車に還元されます。ハードウェアはそのままに私たちの運転体験の向上が実現されているのです。

冒頭に紹介したApple社もスマートフォンというハードウェアを起点に、ニュースサービスや動画配信サービスに加え、クレジットカード事業まで開始しています。

変化トレンド(2)効率から好意へ

私たちはものを買ったりサービスを受けるときに、その品質だけでなく提供企業のスタンスも重視するようになりました。

社会問題に対しどのような意見をとっているのか、その問題に対してポジティブな活動を行なっているのか。こういった観点を選定軸にしているのです。

そういった変化の背景には、そもそも製品がコモディティ化し差別化が難しくなっていることに加え、SNSの普及によって消費行動が自己表現のひとつになったことも関係しているのでしょう。

そのような購買行動をとる消費者をBelief-Driven Buyers(信念駆動消費者)と呼び、社会(問題)に対する存在価値を明示する企業をPurpose-Driven Companies(目的駆動企業)と呼びます。

この観点を重視している企業は近年の成長率も高く、たとえば一般消費財メーカーのUnilever社は、「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」を目的に掲げ、循環型経済を実現するサーキュラーエコノミーを中核にしたビジネスモデルへの転換を実現し、売上成長を加速※2 させたと言われています。

フィリップ・コトラーも、マーケティングフレームワークである4PにもうひとつのPを加えました。Product、Place、 Promotion、PriceにPurposeを加えたのです。

いま一度、事業の存在意義に立ち返ろう

そもそも事業の社会的存在意義はなにか。どのような課題を解いていくのか。そしてそれらを、どのように表明していくのか。これらは企業として重要な問いです。そしてDXとは自分の事業の再定義に他なりません。

トヨタが自動車メーカーからモビリティサービスの会社に変わろうとしているようにデジタルによる事業の再定義においては、事業そのものの存在意義とそれを実現するための顧客(ユーザー)体験の再設計が極めて重要です。

存在意義の実現のためにどのようなユーザ体験の向上を志向するのか、どのような継続的な関係を構築していくのか、という点です。その推進の要となるのがソフトウェアでありサービス化というキーワードです。既存の製品をタッチポイントのひとつとして捉え、大目的のためにやるべきことを追求すれば、自ずとあらたな戦略や新規事業のタネも見つかるかもしれません。

※1:ミレニアルは体験重視、旅行会社にも変化の波
https://jp.wsj.com/articles/SB11082206419117534460204585360020930500274

※2:“無関心化”する消費者と企業の向き合い方--アクセンチュア調査
https://japan.zdnet.com/article/35137981/

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