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シナジー効果を見据え、社員のスキル・経験ごとに育成プログラムを構築。三井住友海上あいおい生命保険のデジタル人財育成プロジェクトストーリー

Kaizen Platformでは、顧客体験DXを掲げ、Webサイト改善や動画広告の効果改善など、デジタル領域における様々な課題解決に取り組んでいます。

この度支援させていただいたのは、三井住友海上あいおい生命保険株式会社様。

同社は、中期経営計画(2022~2025年度)内のDX戦略において「デジタル人財の育成」を重要な基盤と位置付けており、その育成プログラムの策定及び実施をKaizen Platformにご相談いただきました。

そこで今回は、Kaizen Platformへご相談いただいた背景や、どのようにプロジェクトを進めていったのかについて、デジタルイノベーション部 DI推進グループ 課長 勝並進様、デジタルイノベーション部 DI推進グループ 課長代理 林加奈子様、そしてワークショップを担当したKaizen Platformの綿貫美紀が、取り組みを振り返りました。


DXを推進するにはデジタルツールを活用するだけではなく、会社として人財育成を重要視することが大事。

綿貫:今回のプロジェクトは基本オンラインで進めていたので、実はこうして対面でお会いするのは初めましてですね(笑)。
改めて、勝並様と林様のこれまでのご経歴をお聞かせください。

勝並進様(以下、勝並):私は旧三井海上に入社し、損害保険を取り扱っていたのですが、入社2年目から生命保険事業がスタートすることとなりました。
そこで自ら手を挙げて生命保険の営業を担当し、営業部門のマネージャーも務めました。その後、営業教育部門でデジタルツール推進の担当者が必要になったため、私が担当しました。

綿貫:新しいことに挑戦するのが好きなんですね。

勝並:そうなんです。新しいことがとにかく好きで(笑)。デジタルイノベーション部が出来て、「DXを推進しよう」となったのも突然でしたが、新しい取り組みなのでワクワクしましたね。

三井住友海上あいおい生命保険株式会社 デジタルイノベーション部 DI推進G 課長 勝並進氏

林加奈子様(以下、林):私は旧あいおい生命に入社し、人事グループで秘書業務を担当していました。会社が合併した後は、主に給与厚生業務を担っていました。その後、障がい者雇用やインクルーシブ教育に携わりました。

綿貫:もともとは人事にいらっしゃったんですね。

林:はい。社員の方々が働きやすくなるよう、様々なツールを導入するという取り組みをしていました。そして2021年の4月に営業教育部門のデジタルを扱う部署に異動となり、勝並とともにデジタルツールの推進を担当しました。

三井住友海上あいおい生命保険株式会社 デジタルイノベーション部 DI推進G 課長代理 林加奈子氏

綿貫:デジタルイノベーション部は、2021年10月に創設されたんですよね。「突然出来た」というお話しでしたが、どういった背景で創設されたんでしょうか?

勝並:弊社では中期経営計画を4年ごとに策定しているのですが、ちょうど昨年、2022~2025年度の計画を策定するタイミングだったんですね。
もともとデジタル化を推進しようという話は数年前から出ていたのですが、グループ会社含め多くの会社がDXを進めている状況を踏まえ、当社でもDX加速すべきという意見が出てきました。
しかし、担当部署がなかったので、私と林がいたデジタルツールを推進する営業教育部門と、新規事業を扱う成長戦略部門を統合し、デジタルイノベーション部が創設されました。

:創設されるという噂を聞いたのは、8月とかでしたよね。

勝並:出来るんだ〜と思ってたら、2ヶ月後には自分たちが担当することになっていて。
そこから急ピッチでDX戦略を立てました。

綿貫:突然の抜擢ということで戸惑いもあったかと思いますが、どんな風にDX戦略を立てていったんですか?

:もともとデジタルツールの推進はしていましたが、そのやり方では中期経営計画でDX推進を支える重要な基盤である、DX人財育成に結びつかないよね、という話をしました。議論を繰り返す中で「本質的にDXを推進するには、人が大事だよね」という結論に至り、「そもそもデジタル人財とは何か?」と定義するところから始めました。

綿貫:定義を決めていく際、意見が分かれることもあると思いますが、どのようにすり合わせを行いましたか?

:デジタル人財は会社の基盤や未来を作る部分になるので、「会社にとってのデジタル人財とは何か」について、納得いくまで何度も話し合いました。また、人財育成はデジタルイノベーション部だけでなく全社の取り組みであるという位置付けだったので、初めの段階から人事部門と連携しながら進めました。

勝並:そうしてできたのが、スキルや経験に応じて3つのレイヤーに分けた育成体系です。
三角形の上から順に、全社的なビジネス課題の解決や新たな顧客体験の創出を担う「デジタル専門人財」。デジタルを活用し組織のデジタル化や業務課題の解決を推進する「デジタル推進人財(デジタルアンバサダー)」。そして、デジタルを活用し効率化に取り組む「デジタル活用人財(デジタルベーシック)」です。
最も高度な領域であるデジタル専門人財においては、データを駆使して意思決定のサポートやビジネス課題解決を担う「データ分析人財(データサイエンティスト/データアナリスト)」と、デジタルを駆使してビジネスの変革やお客さまの体験価値向上を担う「デジタルビジネス人財(デジタルイノベーター)」に分けています。

:この三角形に至るまで、20回くらい作り直しましたよね。形も最初は四角形だったりと、相当試行錯誤しました。

綿貫:実際にDX人財の育成というテーマは多くの企業でも重要視されてきていますが、自社で必要な人財はどういうものなのか、そのスキルや経験、役割に応じて区分を定義するということは非常に重要なポイントです。
そういった定義をした後、DX戦略を策定するためにどのような取り組みを進めましたか?

:3つのレイヤーそれぞれに対して、どういった教育研修を行うべきなのか検討しました。

勝並:私たちのようなDXをやってない人間がレクチャーしても説得力がないし、運営業務の傍らファシリテーションの準備をするのもリソース的に難しいので、初めから知見のあるプロにお任せしようと思ってました。
そこで行ったのが、フィールドワークです。グループ会社だけでなく、業界が異なる会社にも、デジタル人財育成にどう取り組んでいるのかをヒアリングしました。

綿貫:フィールドワーク中にKaizen Platformを知ったのですか?

:はい。Kaizen Platformのワークショップを経験した方がいたので、かなり詳細に内容を聞きました。なんとなく、こんな研修内容にしたいな……とイメージしていた内容と近かったので、Kaizen Platformに依頼したら、自分たちの考える育成プランが実現できるのではないかと感じました。

勝並:須藤さん(Kaizen Platform代表)の書籍も拝読したんですが、「DXとは単にデジタル化することではない」「DX推進においては、人が大切」と書かれているのを見て、もうKaizen Platformにお願いする以外ないなと(笑)。

:最終的には、自分たちのプランが実現できる会社であることと、同じ思いを持って取り組んでくれるパートナーとご一緒したいということで、Kaizen Platformにお願いすることにしました。


会社を理解し安心して任されるパートナーへ。シナジー効果を見据えた教育プログラムの企画

綿貫:今回のプロジェクトのスタートは、ワークショップを企画するところからでした。Kaizen Platformが提供するワークショップの特徴として、単なるインプットの場ではなく、その後の実践につなげるためにもアウトプットをしっかりつくっていくことがあります。
三井住友海上あいおい生命保険様の場合でも、その後の実践につなげることを重視しつつ、定義した教育体系にも沿ったプログラムを作るためにも、何度も話し合いを重ねていきました。

株式会社Kaizen Platform 綿貫美紀

:ワークショップは、弊社の体系に合った教育プログラムをご提案して欲しいとお願いし、何度も話し合いを重ねて作っていきました。
既存プログラムからかなりカスタマイズして作っていただきましたね。

:私たちが抱えている課題や目指している姿、そして3つの育成体系など、色々な要素を汲み取って既存のプログラムをかなりカスタマイズしていただきました。
また、デジタルイノベーター・デジタルアンバサダー・デジタルベーシック、この3つの区分それぞれのプログラムが、更なるシナジーを生むような、全体を俯瞰した提案をしていただきましたよね。

勝並:一貫性のあるプログラムを提案していただけたのは、本当に私たちのことを理解し、一緒に取り組みを進めるパートナーとしての安心感がありましたね。

綿貫:ありがとうございます。
最終的に年間を通してのご提案をさせていただいたのですが、上期はDXに関する知識などのインプット、下期はDXプロジェクトの実践などアウトプットに重きを置いた内容でプログラムを企画させていただきました。
上期は、デジタルイノベーターは全社DXプランの立案を行う5daysワークショップ、デジタルアンバサダーは業務プロセスDXプランの立案を行う3daysワークショップ、デジタルベーシックはDXに関する講演・動画学習を実施することにしました。
また、ワークショップ実施前に関連部署の部長に対して「なぜDXなのか、誰がやるべきなのか、どのレベルでやるのか」を理解いただくために弊社代表の須藤による講演会も行いました。

勝並:ワークショップに参加する人は、通常業務の傍ら課題に取り組むので、上長の理解を得ることがすごく重要なんですよね。そのため、須藤さんにDX推進の意義をお話しいただく設計はありがたかったです。

綿貫:プログラムの効果を最大化するためには、上長の理解を得るのはもちろん、ワークショップに参加される方をどう選ぶかも重要なポイントです。
実際、ワークショップは毎回宿題があり、かなりハードな研修でしたが、脱落してしまう方がいないことに驚きました。このようにモチベーションの高い参加者を、どのように選ばれたのですか?

:デジタルアンバサダーは、部長に「自分の部のDX業務を推進していくパートナーを推薦してください」とお願いし、選出していただきました。いきなり依頼しても選定基準がわからず悩んでしまいますが、須藤さんの講演会を最初に実施いただいたおかげで、スムーズでした。
デジタルイノベーターは完全公募制で、役職や年齢は関係なく、やる気のある方に来ていただくようにしました。

勝並公募の定員は30名だったのですが、最終的に60名以上から応募がありました。

綿貫:倍以上集まったんですね!

勝並:正直、定員に満たなかったら個別に声をかけようかと考えていたので、驚きましたし、嬉しかったですね。新しいことが好きな方や、デジタルに興味がある方、人財育成のために来ている方もいました。

:社員区分も制限しなかったので、企画系の方だけでなく、事務の方や営業職員の方などからの応募もありました。

勝並:年齢も幅広く、50代後半の営業職員の方もいらっしゃいました。多様性を感じましたね。


根本的な課題を解決するためには、まずは自分達を正しく理解することが大事。

勝並:ワークショップでは、「自分の会社は何屋なのか?」と、ビジネスについてじっくりと考える内容が多く盛り込まれていましたよね。

綿貫:例えばデジタルイノベーターの5daysでは、各々が自分の担当業務について業務ジャーニーを作成し、チーム間で発表するワークを実施しました。それを通じて自分の業務を俯瞰し、全体像を捉える体験や、経験したことのない業務について知っていただくことができました。
また、自社のサービスがお客様に届くところまでのカスタマージャーニーも作成するなど、わかっているようで実はあまり知らない、もっと自分たちのビジネスを理解することを重視しました。

勝並:参加メンバーにもそれはしっかり伝わっていたように思います。受講後アンケートでは、「自分たちの身近なところから考えることを始めましたが、DXでどれだけの人に影響するのか、その先の可能性含めて考えていくことができました」「大事なのは、業務の課題は何なのか、どうしたら課題が解決できるのか、課題が解決したら誰にとってどのくらいよいこと(利益が上がる、業務効率化、等)なのか、ということをまず最初にしっかり考え、その課題解決方法の手段としてDXができたらいいね、という考え方なのだと気付いた」という声もありました。
結局、いくら課題を発見したところで、自分たちのビジネスや業務の流れを理解していないと根本的な解決に至らないんですよね。どうしても、対症療法的になってしまいます。本当のボトルネックは何かを見極めるためにも、第三者視点で会社や業務を俯瞰する訓練は必要だなと感じました。

:他のメンバーの業務内容を聞くことで、こういう業務があったんだと学べたり、コミュニケーションが生まれたりしたのもよかったですね。

綿貫:「今後大事になるお客さまは誰ですか? その方にどういう価値をできるようになりますか?」という問いや、「会社のミッションはなんですか? ただし、会社のHPのコピペは禁止で、自分の言葉で考えてください」というお題に取り組む中で、「思考の枠が広がった」という声を多くいただきましたね。

:実際、受講後のアンケートで「身の回りの業務でDXで解決できるものがないか考えるようになった」「DXはデジタル化すればいいというものではないということに気付けた。普段、ゆっくり業務の平準化について考える機会がないので、業務の平準化や効率化、今までの慣習にない発想を鍛えるにはいい機会であると感じた」という感想がありました。

綿貫:ただ、満足度にばらつきが出てしまう結果になってしまったのは、今後の課題だなと感じました。

勝並:そうですね。デジタルイノベーターのメンバーからは、「ワクワクできました」「デジタルってかっこいいと思われがちですが、ワークショップを通して、地道にやらなきゃならないものだと感じました」というポジティブな感想が多く出た一方、デジタルアンバサダーのメンバーはもちろん満足していた方もいましたが、モヤモヤした状態が続いている方も多かったです。

:ワークショップでは、従来の研修のように座学でデジタル技術について学ぶと思っていた方が多かったんですね。“正解がないこと”を考える今回の内容に慣れていなかったので、モヤモヤしたんだと思います。

綿貫:正解がないからこそ、頑張って出したアイデアを白紙に戻す、ということもよくありましたね。

:今までそういう経験がなかったので、「せっかくここまで話したのに、どうして?」と戸惑ってしまったんじゃないかなと。

勝並:これに関しては、応募方法の違いに要因があったのではと考えています。
デジタルイノベーターは公募で来ていることもあり、モチベーションが高く、どのようなボールが飛んできても受け入れる方が多かったんですね。そのため、議論が戻ることに対しても「じゃあ次はこうしてみよう!」と前向きに捉えていました。
デジタルアンバサダーのメンバーは自ら手を挙げて参加したわけではないので、どうしてもモチベーションに差が出てしまいます。その点に配慮すべきだったなと感じました。
さらに、デジタルアンバサダーはワークショップの最後にプレゼンが控えていたこともあり、「早く議論を進めてプレゼン内容を固めたいのに進まない」という焦りもあったんだと思います。

:けれど、最終的には「ネットであらゆる情報を得られる時代ではありますが、プロの方々の視点で国内外のDX実例などを教えて頂き、理解が深まると同時に、たくさんの『学び』を得られました」「普段、営業での業務に没頭している中では、中々時間をさけない事象に対してじっくり考える機会があって良かったです」という声もいただけたので、次回はモヤモヤを抱えないようにするにはどうしたらいいか、応募前の段階から考えていきたいです。

新たに生まれたタネを会社全体に広げたい。それを支えるためのきめ細かいサポートとコミュニティ

綿貫:いよいよインプットのフェーズであるワークショップが終わり、これからアウトプットのフェーズに進んでいきます。
今回、ワークショップを進める上で、お二人から毎回「このチームはこういう感じでした」、「この人は、実はこういった方です」とご報告をいただいたので、とてもやりやすかったです。

:Kaizen Platformからは、私たちの意見を踏まえて「今日のワークショップでこういうことがわかったので、次回フォローします」と毎回提案いただきました。最初に決めたプログラムの内容をそのまま実行するのではなく、参加者の反応や要望を取り入れてチューニングしながら進めていただくなど、きめ細かいフォローに感動しました。

勝並:デジタルアンバサダーのメンバーが、部長に対してワークショップの内容をプレゼンする際は、プレゼン内容についてもアイデアを出していただくなど、多岐に渡って寄り添っていただきましたよね。

私たちが実現したいことに対して、同じ目線で取り組んでいただいているなと感じました。

綿貫:上期に実施したワークショップはあくまで下準備で、下期はワークショップで考えていただいたプランを本番でどう実践して踏み込んでいくか、伴走するフェーズになります。
伴走フェーズでも、定期的なMTGで一緒に進め方や進捗を確認したり、現時点の疑問点や悩み事を解決したりしていきます。
私たちとのMTGで取り組みを振り返る中で、「自分たちでDXを進めるって、こういうことか!」という実感を持っていただきたいです。自走できるように、ぜひ、私たちを活用し倒していただければ嬉しいです。

勝並:受講者がワークショップの中で小さな成功体験を積み上げられるように、進めていきたいです。そのためには、先程の繰り返しになりますが、事前に期待値をどう揃えるかが重要です。
今回は急ピッチで進めたこともあり、期待値調整ができないままでのスタートだったので、特にデジタルアンバサダーの方はモヤモヤしてしまったのだと思います。今後は事前準備を念入りに行い、受講前後のギャップを減らしたいです。

:上期の参加者が受講後も継続してDXに取り組めるよう、コミュニティも運用していきたいと考えています。
もともとDXを推進していく上で横のつながりが大切だと考えていたので、部署を超えて自然とコラボレーションできるコミュニティの仕組みは4月の時点で作っていました。
まずは今回の参加者にコミュニティに入っていただき、ゆくゆくは会社全体のコミュニティとして作り上げていけたらなと思っています。

綿貫:引き続き、三井住友海上あいおい生命保険様が描くデジタル人財を育成できるよう伴走していきますので、よろしくお願いします。