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現場に溢れている「心が揺れた」瞬間を見つけていく

野林 徳行さんインタビュー 最終話(全4話)

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

第三回目はリクルート、ブックオフ、LAWSON、レッグス、FiNC、鎌倉新書で「誰かの笑顔」を追い求めてきた野林徳行さんに、「のばさんには考えかたの基礎を教わった」と語る須藤憲司がいろいろな疑問について質問しました。
最終話では「野林さんが観察したことで起きた出来事」。
野林さんが観察を続けたことで起きたステキな出来事についてうかがってみました。

「僕らはこんなにステキな瞬間を作るお手伝いをしているんだよ」

須藤:
リクルートに入って最初の一ヶ月にのばさんに言われたことは、「普通の生活をしないとカスタマーがわからないから毎週ダイエーに行け」「仕事に愛を持たないとダメだ。愛情がない仕事はクソだ」でした。のばさんを見ていると、どんな仕事も愛情を持ってやっているなって思います。

野林さん:
LAWSONに転職して10年で8,000人ぐらいに会ったんだよ。売り込みのメーカーやサービスの方とか、店舗のオーナーから現場のアルバイトまで。それを見ていた同僚が「アルバイトに会ってもしょうがないじゃないですか」と言ってくる。「なんでしょうがないと思う」のか気になるよね。そこに、サービスをステキにするヒントがあるはず。

須藤:
のばさんって全部捨てないですよね(笑)。もらったことを捨てないで持っておく。

野林さん:
だから、凄い経営者になれないよね。経営者って重要な取捨選択があって、一番有効なものをちゃんとやって他は捨てる。でも、僕は他人の手柄は他人の手柄、他人のナレッジは僕のナレッジだと思っている。全部持っておいて「必要なときに使えばいいじゃない」って思うから。やっぱり経営者じゃないなあ。

須藤:
のばさんはローソンチケットで経営者、社長をやっていたじゃないですか。

野林さん:
最初にやったことは立派な社長室から出ることだったよ。フロアのど真ん中に机を置いてもらって、全社員の顔が見えるようにしてもらった。当たり前なんだけど、エンターテインメントに関わる仕事をやっている人は、みんなエンターテインメントが好きなんだよ。ライブを見られないし楽屋に行けないけど、チケットの販売など好きなアーティストのために働けることを喜ぶ人が多い。

須藤:
何か面白いエピソードとかありましたか?

野林さん:
flumpoolのライブに行ったときかな。ボーカルの山村さんが「この中に学校に行けなくなった人もいると思うけど、良いことは必ずある。無理しないでいいから、頑張ってみようよ」と言ったら、隣にいた中学生ぐらいの女の子が「私、もう一回学校に言ってみる!」ってつぶやいて涙を流していたんだよね。終わったあとに「僕はローソンチケットの者なんだけど、さっきなんで泣いていたんですか?」って聞いてみたことがある。

須藤:
お客さんに会いに行くと、そういう心が揺れている瞬間に会えますよね。

野林さん:
それをflumpoolに伝えたら喜んでくれた。次のライブでも「今日のライブはどうでした?」「どうすればお客さんにもっと喜んでもらえますか?」と聞いてくれたんだよ。僕がいないときは社員が「あのローソンの人来ないの?」と聞かれていたらしい。でも、それを社員に伝えられたことは良かった。「僕らはこんなにステキな瞬間を作るお手伝いをしているんだよ」って毎日伝えられたんだよ。

須藤:
実際に現場で起きたことだから、社員も疑わずに自信にしてくれますよね。

野林さん:
当時、ローソンチケットはある事件があって社員が落ち込んでいたんだけど、社員に責任はなかったんだよね。そういうステキなことが起きたんだって知れば、やり甲斐を取り戻せる。元々エンタメが好きだし、自分たちの仕事で「誰かが笑顔になっている」と気付けば一致団結ができる。おかげで、社員みんなで乗り越えられた。

須藤:
本当にそう思います。やってみればそういうことが起きるのがわかるはずなんです。それを敢えて言わないと気付かないというのが不思議なんです。

野林さん:
僕は言い続けないとダメなんだろうと思っている。会社にいると「上から降りてきた指示をやる」、「去年通り」、「リスクをおかすな」と言われることもある。一所懸命に「こうなってしまいますよ」と言っても、「こうしろ」と言われてしまう。だったら「しょうがないか…」と諦めがちになるよね。書籍も頼まれたときは「面倒くさいから嫌だ」と返していたんだけど、「この人に笑顔になってもらいたいのに…」と思っている人たちの背中を押せると思って書いたんだよね。

須藤:
もしそんな選択肢がない状態に陥ったら、何を手がかりにすれば元に戻せますか?

野林さん:
「誰を笑顔にしたいのか」「笑顔にするためにステキなストーリーを描けるか」だと思う。時間がないこともある。「二週間で新しい弁当商品を作れ」と言われて、ストーリーを考えていたら三日経っていました、原材料が仕入れられませんでした。そういうときもあるけど、「そうだそうだ、この人を笑顔にしているんだ」って気付くきっかけを作れば元に戻れるよね。

須藤:
最近までFiNCに関わっていましたよね。FiNCではどんなステキを発見しましたか?

野林さん:
僕はITが苦手で飲んでばっかり。ITサービス、ヘルスケアとは真逆の人間だよね(笑)。そんな僕と比べてFiNCに関わっている人たちは凄かった。FiNCにはエンジニアだけでなく、専門家、学者、製薬会社の人もいた。ヘルスケア、IT、グローバルのかけ算をしていて明らかに最強なんだよ。こんな最強な会社が作るコンテンツが一般の人の目の前に現れたときに「これをやらなきゃいけない」と思われるか、「わーステキ!やってみたい!」と思われるか。後者にするためには、どうすればいいかなって考えていた。

須藤:
具体的にどうすればいいと考えていたんですか?

野林さん:
コンテンツの文章とか写真とかを工夫して、コンテンツに触れた人が「これは私に言ってくれているんだ」と思えるかどうか。雑誌の編集記事みたいにステキな感覚が伝えられているか。それができていれば、コンテンツを作っているアンバサダーさんたちも「私、FiNCに関わっているんです!」と言ってくれる。これはゼクシィでもリラックマでも、FiNCでも同じだよね。前編から僕が話してきたことは全部リアルな人の話だけど、いまはツールを使わないで頑張る!なんて時代じゃない。リアルな人と向き合って、ツールを使ったら笑顔の数はもっと増やせると思う。

須藤:
FiNCからも離れてしまったんですよね。いまはどうしているんですか?

野林さん:
ほとんどプータローだね。まさかこんな素晴らしい企業の社長が僕なんかプータロー(インタビュー当時:現在は鎌倉新書の執行役員をされています)に会っていただけるなんてね(笑)。

須藤:
いやいや(笑)。高校の先生はやっているんですよね。そこには何か想いがあるんですか?

野林さん:
プータローのうちに、エンタメやマーケティングが学校教育に生かせないかを研究したい。僕はブックオフに入ってマーケティングの魅力に気付いたけど、高校生のときに気付けたらどんなことが起きていたんだろう。いままでは意識していなかったコンビニキャンペーンに高校生が興味を向けたら面白いことが起きそうじゃない。実際に2年生で、大手企業といっしょにオリジナル商品を作っちゃうからね。




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