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【歴史に学ぶ】コロナ禍で考えうる今後のシナリオを想定しておこう

『DXプレイブック』は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家集団 Kaizen Platformの須藤による解説シリーズ。loT、サブスクリプション、AI、D2C、OMO、MaaSなどをキーワードに「DXとは?」を考えるDXの入門書『90日で成果をだすDX入門』(日本経済出版社)の番外編です。今回は、つらいけど目を背けてばかりもいられない「新型コロナ」に向き合っていきます。

4月も後半になり、新型コロナが産業に与える影響がどんどん数字になって現れてきました。

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(出典:「消費行動、コロナで一変 クレカ決済のビッグデータ分析」朝日新聞デジタル

身近なサービス業を見てみたいと思います。まずはホテルの稼働率です。

3月の稼働率は30.5%と前月の半分程度まで下がった。東京、大阪はともに20%台に低下。リーマン・ショックや東日本大震災の後も60%前後にとどまったのに比べて落ち込みが激しい。
(引用:「ホテル稼働率 最低 国内3月30.5%、開業延期も」、日本経済新聞

リーマンショックや東日本大震災時と比較して稼働率が半減しているのは、衝撃だと思います。

大手飲食チェーンも3月実績が出てきています。すかいらーくホールディングスの3月の既存店客数は前年同月比25.8%減、サイゼリヤは22.2%減です。個人店ではもう数段へこんでいるところも多いと聞きます。緊急事態宣言を受けた4月の実績がもう一段厳しくなることを考えると、心が痛くなります。

JRグループ各社が発表したゴールデンウィーク期間の新幹線と在来線の座席予約率は対前年比90%減というニュースも入ってきました。つまり10%の埋まり具合ということです。自粛気運がしっかり広がっている表れではあるものの運営側はとても辛い状況です。

経済の低迷はいつまで続くのか。

経済の低迷はいつまで続くのでしょうか。ワクチン開発の成功など、根源的な解決策には不確実な要素が多いですし、情報も錯綜しています。そのため私たちが終息の時期や経済の先行きを正確に見立てることは難しいと思っています。しかし、人類には経験があります。歴史をなるべく事実ベースで把握することで、近い将来のシナリオをいくつか想定することはできます。

歴史から学べる示唆ひとつめは、これまでの感染症ケースでは終息後、経済がV字回復している点です。たとえば2002-03年に中国を中心に猛威を振るったSARSショックでは、終息後、中国や香港のGDPが一気に回復しました。

2003年、中国は世界を震撼させた新型肺炎SARSの発信地として注目を集めた。中国経済はこの影響を受け、4-6月期に成長率は6.7%にまで落ち込んだものの、7月以降は急回復に転じ、結局、成長率は9.1%、GDPは11兆6694億元に達するという1997年以来最高の成長を記録した。
(引用:「基礎情報:中国(2003年)」、労働政策研究・研修機構

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(出典:「中国経済の見通し-新型肺炎で1-3月期の成長率は急減速も、その後はV字回復となり、20年は5.6%と予想」ニッセイ基礎研究所

個人消費も一気に戻りました。

もし同じシナリオを辿れるのであれば、とても喜ばしいことです。但しその一方で、その終息までが長引く懸念があることも歴史が伝えてくれています。

スペインかぜやMERSなど、感染拡大自体がスパンを明けて何度かの波をつくっている実績もあります。ワクチンが十分に完備されるまでは、自粛を一定期間続け、その後緩め、広がってきたらまた自粛する。そのようなサイクルで医療崩壊を水際で抑えながらワクチン開発を待つことも予想されます。その間、感染拡大リスクとそれに備えた景気低迷が長期化する恐れは十分にあるのではないでしょうか。

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(出典:「大規模ロックダウン」で大恐慌以来最も深刻な景気後退へ-IMF、Bloomberg

IMFも4月現在、世界経済の見通しとして「基本シナリオでは、新型コロナのパンデミックが今年後半に収束」することを想定し「IMFや市場のエコノミストは現時点で年後半からのV字回復を見込」みながらも「21年に再発する可能性を含むシナリオ」も検討していると言います。
(参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58054670U0A410C2MM8000/

今回が、V字回復なのか?それともU字、W字、L字…回復のシナリオに関して、いくつかのパターンが考えられます。

生活行動は新たな常態(New Normal)へ

私たちの暮らしはこの数ヶ月で大きく変化しました。Googleが発表したモビリティレポート(4月5日時点)によると、日本の小売店やレクリエーション施設にいる人は25%減り、公園に人が増加していることがわかります。実感の伴う数値ではないでしょうか。

パンデミック終息に向けたシナリオは複数想定されますが、いずれにせよ、今の生活が中期的に継続する可能性は高いと言えるでしょう。

たとえば日本は、諸外国と比べてEC利用率が低い状態※でしたが、外出自粛の状況下、EC利用が伸びています。

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3月前半・概況<総合消費指数>(出典:「新型コロナの影響でプラス成長の業種はECのみで+4.1%、他は軒並み下落[3月の消費指数]」impress

新型コロナ以前のように外出が出来るようになれば、一定数店頭購買に回帰するでしょうが、一度あがったECの普及度は新型コロナ以前の水準まで下がりはしないでしょう。

終息、もしくはそれに向けて目処がたてば、国内旅行やライブなどのエンタメは、早期の需要回復が見込めます。一方で、海外旅行は各国の収束状況が異なってくる想定されるので、回復には時間がかかりそうです。

ビジネスにおける出張ニーズも今回のリモートでの対応可能性が実証された後では、オンラインコミュニケーションの需要増も継続するのではないでしょうか。ライブ配信やVRなどを活用したコミュニケーション方法がキャズムを超えるかもしれません。学校がオンライン授業を開始したり、医療の現場でオンライン診療が解禁される動きなどが、新しいオンラインコミュニケーション手法が一般化される可能性があります。

関連して、今回倍増していると言われるリモートワークも、一時的なものではなく持続的なワークスタイルになりそうです。その一方でリアル(対面)の価値も見直されると思います。ですが、高い生産性の実現や働き方改革を推進していく上で、これまでより柔軟にリモート/リアルの使い分けが推進されていくように思えます。

このようにあらゆる側面で、人の移動が制限を受けたことによるモノや情報の流動性向上は継続していくと思われます。

加えて、安全性を担保した人の移動ニーズも高まっていくのが今後予想される展開のひとつです。安全を担保できている場所そのものや、安全を担保できる移動手段、そしてそれを実現するテクノロジーは注目を集めることでしょう。

事業運営で検討すべき三つの局面

VUCAの時代と呼ばれて久しいですが、新型コロナの流行を受けその不確実性は格段に高まっています。事業運営としては、いくつか局面を想定し、優先順位をつけて備える必要があります。

ひとつめの局面は、いまです。この火事場をどう生き延びるか。キャッシュを確保し従業員を守る必要があるので皆さんが試行錯誤を重ねているところだと思います。

そしてふたつめ、需要回復フェーズです。感染拡大防止が楽観シナリオ通りに進むのであれば、短期的にこの局面に備えることはとても重要です。しかるべき運営や投資が行える準備をしておく必要があります。たとえば、いま一時閉店しているお店は、いまの赤字を最小化し来たる需要回復フェーズの運営に企業体力を備えている判断をしていると言えます。

そして三つめは、中期視点です。コロナショックによる不可逆な生活行動の変容を捉え、本質的なトランスフォーメーションを検討することを指します。つまり「ニューノーマル」を見据えたUXおよび業務改革です。

どのようにこの環境に適応していくべきか、次回以降考えていきたいと思います。

お知らせ

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DXとは何かといった基礎知識から、具体的なDX計画の策定方法、企業のDX戦略事例までを完全網羅。DXの専門家Kaizen PlatformのCEO 須藤憲司氏が講師を務める、次の日から一流のDX人材になるための全6回講座が2020年6⽉よりスタート予定。ご興味のある方はエントリーをぜひお願いいたします!

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