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オイシックス奥谷孝司氏「日本のマーケターには、『非連続への慣れ』が必要」

オイシックス奥谷 孝司さん対談 第3話(全3話)

「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

第一回目はオイシックスでマーケティング部部長、Chief Omni-Channel Officerを担当している奥谷孝司執行役に、リクルート時代に「マーケティングの面白さを知った」と語るKaizen Platform代表、須藤憲司が率直な疑問を投げかけました。

第3話では「マーケターのキャリアデザインとは?」。

どうキャリアを考えて行くべきか、経営とマーケターが足並を揃えていくには、奥谷さんの考えをうかがいました。

マーケターの武器は非連続性と総合力

須藤:
オイシックス奥谷 孝司さん対談 第2話」でキャリアにも触れていましたが、奥谷さんは「キャリア」についてどういう考えを持っていますか?

奥谷さん:
非連続に馴れるということが重要だと考えています。
例えば、スーパーは入ってすぐ右にフルーツが置いてあり、野菜、お肉や魚、乳製品とだいたい棚が決まっています。これに対して小売業がどう考えるか。日本は連続性を大事にすると感じていました。教育、受験システム、大学に入るときに「何を学びたいか」を決めないといけません。
活躍しているマーケターの中には、「マーケティングに興味はありませんでした」と語る人も多いんです。連続性を断ち切って、途中で方向転換しても良いんですよ。

須藤:
私も学生時代にマーケティングなんて言葉を知りませんでした。ただ、マーケティングを任されたとき、それまでの経験が生かせました。マーケティングって誰しも持つべき視点、リベラルアーツのようなものなんじゃないかと思っています。

奥谷さん:
T字型人材に注目が集まっていましたが、私は「X型人材」がこれからの時代を作ると考えています。要はひとつの専門領域だけで100人のうちの1位を目指すのではなく、様々な専門領域で何位をとれるのか、TOP10に入れるか。その順位を掛け合わせると何位になれるのか。特にマーケティングは、こうした複数分野の総合順位を生かせる仕事なんです。

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須藤:
オイシックスではどのようにマーケッターを評価、盛り上げているんでしょうか。

奥谷さん:
「これから」です。小さいことでもゼロイチを繰り返す。それを周りが邪魔しないような組織にしていきたいと考えています。ここでも妄想するんです。「自分が経営者だったらどういう組織だと良いんだろう」って。私の理想は、私がいなくても回っていく組織。アメーバ経営とか小さい組織を作って、どんどん権限委譲していくと理想に近づく気がします。

須藤:
なるほど、「自分がいなくても成り立つか」は参考になります。

奥谷さん:
非連続を作るにはヒエラルキーがないのもアリかもしれませんね。オペレーショナルエクセレンスが高い人や会社にとって圧倒的にゼロイチを生み出していく人なら、人を育てられると思っています。

須藤:
土壌が大事なんですね。

奥谷さん:
本当に理想的なことを言えば、政治家と官僚の関係かもしれません。優秀な官僚は国や省庁、国益をロングタームで見ています。そして、優秀な政治家が非連続を起こす。これが政治家と官僚がヒエラルキー、縦に連なっていたら上手くいきませんよね。

須藤:
官僚と政治家が対立してしまっている現状は、まさに企業でも起きている構図ですよね。

奥谷さん:
最近はいろんな価値感が出てきていますが、「18時に帰宅できるのが本当にいいことか」と投げかける人は少ないですよね。0点は取らず平均点が高い人が集まっているけど、ビジョナリストがいなくて崩れてしまっている会社もありますよね。経営ができる人が限られてきている気がします。経営は安易に渡せませんし、薄く広くやっていくものでもない。

須藤:
短期のKPI志向だけではダメかなって思っています。コンバージョンとかチャーンレートを組み合わせて指標を作って行かないといけない。多分、これだけでも足りていないと思っています。

奥谷さん:
短期的な数字を出すため、人間を無視しているようではダメですよね。「仕事としては優秀だけど…」みたいな人ではなく、倫理感やバランスの良い人に経営を任せる。一本の線のように連続でつながっていく人生なんてないんですよね。これは経験してみないと気付きにくいのかもしれません。

須藤:
コレを良くしよう!そう決めるとひとつのことだけに目がいってしまい、周りにあることを見逃してしまう。それでおかしくなっていくのかなって思うことがあります。また、分業ベースの考えかただと、お互いの仕事がわからず「そっちが悪いのでは」と他責になってしまうんですよね。

奥谷さん:
「世界最先端のマーケティング」の中に書いたのはすべてマクロ的な思考です。しかも、顧客志向を意識しました。分業をベースにした部分最適はその場しのぎでしかありません。起きている問題をどう解決するのかを、社会や顧客がどう感じるのかまで掘り下げて考えてみる。ミクロとマクロ、両方の目を持って取り組まないといけないと考えています。

須藤:
会社の中のピラミッドだけを見るのではなく、社会のピラミッドを見てやっていくイメージですね。「買ってみよう」とか「あいつらを応援してやろう」とか思ってもらえるように、エクスペリエンスを考えていく。それをどうオーガナイズ、リードしていくかを考えて行く。そっちに向けていくリーダーが必要になっているんでしょうね。それがマーケターに求められているのかもしれません。

奥谷さん:
私はよく顧客中心主義と言っていますがお金をいただく訳なので、金銭的価値を生むことは絶対ですよね。2017年に「ジョブ理論」という書籍が出ました。その中で「お客様が困っていることをどう処理するか、顕在化して『そうそうそれが欲しかった』と思わせるか」ということが書いてありましたが、それを徹底的に考えるべきなんですよね。それが考えられれば経営だってできるんです。お客様のことを考えれば経営にも近づいていけると思っています。

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奥谷さん、ありがとうございました!



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