CSEチームの仕事が楽しくない訳がない! 個性が“出てくる”チーム作りのヒント
「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。
「CSEチームは『最速最短』を重視している」(石橋)
前編では、Kaizen Platform自慢のCustomer Success Engineer(以下、CSE)チームの役割、成り立ちを紹介しました。
後編の今回は、前編と同じくCSEチームのメンバーである共同創業者兼エンジニアの石橋利真、エンジニアの舩見高貴生(ふなみたかお)、グループマネージャーを務める篠原伸介の3名にCSEチームがどのような考えで、どのような価値提供をしているのかを話してもらいました。
メンバー全員が「最初から最後まで」を見ていることが強みのひとつ
——前編でCSEチームが「最速最短」を大事にする理由について詳しくうかがいました。後編ではまず「最速最短」を実現し続けるために意識していることについてうかがいたいです。
舩見:
CSEチームにはいろいろなメンツがいます。
プログラミングができる人、デザインができる人、サポートに長けている人、メールを書くのがすごくうまい人とか、枝葉のロジックを組み立てるのが好きな人とかバラエティ豊か。こうした個性豊かなメンバーが2〜3人で取りかかると、うまいこと化学反応が起きるんです。
舩見は元々在宅で仕事をしていましたが、半年ほど前から通勤を始めました。「自宅でも仕事ができるんですが、会社に出てきたらどんなことが起きるのかと思ったんです。一週間だけのつもりが、半年経ってしまいました」
篠原:
CSEチームでは1つ施策でも担当一人に任せきるのではなく、誰かが設計したら他の人がデザインをする、実装をするなどで協力していく。穴があっても、いろいろな人の目を通して、機能の穴を探していけますよね。チームのメンバーが連携して、サッカーのようにパスを回しながらゴールに向かっている感じですね。
舩見:
個性豊かなメンバーで1つの施策に取り組んでいくことは蓄積にもなっていくんです。一人で担当する訳じゃないので工程のどこかの一部だけではなく、最初から最後まで携わっていく。僕らが作り出したものがどういう効果を出したのかを分析していくとき。分析した結果から次のアイデアを出すときも、「最初から最後まで」を見ているからこそ、まとまりや実現性、有用性が高い状態で議論ができるように感じています。
篠原:
一人ひとりが専門性を持っている部分の断片的なパーツをくみ上げていくのではなく、全員がCSEチームとしてのラフを作って議論するイメージだよね。それがあるからお客様から要望をいただくのを待つだけではなく、僕らがお客様の現状のWebサイトのデータを分析して、「ここはもっと改善できるのでは」とお客様に提案することもできる、つながっているようには感じる。
石橋:
個性豊かな人が集まるチームをまとめるのは難しいですよね。
例えば「新しい価値を生み出す」を目的にしたほうがチームはまとまりやすいかもしれない。でも、CSEチームは「新しい価値を生み出せるプロセス、姿勢の開発していく存在なんだ」と考えています。「最速最短」はその目的をチーム一丸となって実現“し続ける”ために最適なひと言だと感じています。
仕事ではなく「興味」に貪欲なメンバーたち
——CSEチームにはお客様からどのような相談が届きますか?
舩見:
Webサイトに関することはGoogle Analyticsを見れば大体のことはわかりますが、8割のお客様はGAを導入しただけで満足してしまっています。でも、サイトの現状を分析することで、かなり精度の高い仮説を立てることができます。
石橋:
CSEチームでは、Google Analytics以上のログを取れる機能を開発しています。例えば、あるオンラインコミックサイトで、人気タイトルの一巻目を買った人がいる。2巻目を「買おうとした人」と「買おうとしなかった人」の分岐を割り出します。すると、1週間で8シリーズ分買った人が全体の5%いて、3作品買った人が半数くらいいたことがわかりました。
CSEチームが開発したプロダクトのひとつが「Kaizen Cloud Engine」。サイト上にタグを設置するだけで、GAでは取得しきれない行動ログを収集。より具体的な「次の一手」を考える足がかりにできます。
篠原:
ここまでわかると、2冊目以降の購入率を上げるためにどんな施策を行えばいいのかが、より具体的に見えてきますよね。
舩見:
あと、求人紹介サイトのケースもうまくいったよね。
石橋:
ユーザーは検索サイトから直接訪問するのではなく、外部サイトからリンクを辿って流入してくるケースでしたが直帰率が高かった。要はリンク先の求人を閲覧する=目的を達成したら満足して、すぐに元のページに帰ってしまう。この課題を「解消したい」と依頼を受けました。
舩見:
せっかく訪問してくれたユーザーに、もっと自社サイト内で回遊してもらうためにはどうすればいいか。そこで、求人要件に近い情報、閲覧数が多いトップ3を自動掲載する仕様にしてみたら回遊率がものすごく増えたんです。
篠原:
あのときは地域と業種を掛け合わせてランキングを作ったよね。
例えば、大手町の事務職を探して求人ページに辿り着いた人には、大手町の事務職でみんながよく見ている求人を表示してあげる。「こんな求人もあるんだ」とほかの求人も見てくれる率が高まり、サイト内で回遊が始まる。
石橋:
このケースでは、分析の段階で「1ページだけ見て離脱してしまう」という課題が明らかだったので、「ランキングを表示することで回遊率が上がるのでは」という仮説を立てて、僕らが実際に機能を作って実装してみたら、その通りだった。
舩見:
同じような業種のほかの企業のサイトでも、同様の対応が効果的かもしれない。僕らはこうした事例を分析して、横展開できる可能性を常に考えています。
石橋:
ある百貨店のオンラインショッピングサイトの改善のケースでは、お中元やお歳暮の時期に購入が増えるのですが、「商品が並んで表示されているだけでは、ユーザーは何を買えばいいのかわかりにくい」という課題がありました。
そこで、購入人数を表示する施策を行いました。「いま○○人がこの商品を買っています」という表示を出してあげることで、「ほかにもこんなにこの商品を買っている人がいるなら買ってみようかな」と思ってもらえます。
舩見:
チーム内でお歳暮やお中元は頻繁に起きるものじゃない。去年と同じものを送るのもちょっと……と考える人がいるかもしれないという意見が出て、これまでに自分が見た閲覧履歴を表示させる仕様にしましたよね。
篠原:
去年買ったものがわかる。ちょっと前に閲覧していた商品とも比較しやすくしたら買い物がしやすくなるのではと考えて、実装したんだよね。結果、この機能をプラスすることで閲覧クリック数、購入完了率が大幅にアップした。ああいうちょっとした差、工夫も「大きな成果につながる」ということがわかったよね。
Kaizen Platformが考えるパーソナライズが生きる道筋。メンバー全員が「最初から最後まで」を常に考えており、パーソナライズを「一機能」ではなく、どの側面で生きるのか、効果が出せるのか、どう取り入れていくべきかを含めて提案を行っています。
舩見:
これからの時代、パーソナライズはとても重要になっていくと思っています。
顧客一人ひとりのニーズに応えて対応していく。パーソナライズを実現するためには、こうしたサイト上のユーザー行動ログや属性データを蓄積し、それを分析して開発していくことが必要なんですよね。
石橋:
先ほど挙げた事例もパーソナライズの例ですが、パーソナライズを実施するにはやっぱりスピードと経験値が必要になります。そういう点でも、僕たちのチームがフットワーク軽く動いて、試行錯誤をしていくことは大事なのかなと思いますね。 CSEチームが常に試行錯誤していけるのは、仕事や成果ではなく、「興味」に貪欲なメンバーが集まっているからだと思っています。
CSEチームの仕事は「楽しくない訳がない」と語る真意
——みなさんが仕事をしていて楽しいと感じる瞬間は?
舩見:
大きなシステムを作る場合、大事にするべきは「安全、確実」。
CSEチームはそうじゃない。ヘンなところにトンネルを通すような作業なんです。「こっちに横穴を掘ったらもっと効率が上がるんじゃない?」みたいなことを1日中考えています。ただし、すでにあるお客さんのトンネルを崩すのではない。お客様のトンネルを「よりよくするためには」といかに自分の穴を掘っていくかを考えるのが、とても楽しいです。
石橋:
僕らの仕事って、レジ前のPOPやブースを作っているような感じだと思っています。ECサイトを改善するとき、購入のデータベースやキャッシュシステムなどビジネスの根幹に近い部分に着目してしまいがちです。それと比べるとPOPのような表面的な部分は、なかなかお客様のエンジニアリングが追いついていないケースが多いんです。そこを僕たちがフォローする。
舩見:
「こうしてみたら、どうなるんだろう?」と考えて、試していくという半分遊びのようなことを仕事にできるのがプログラマーの面白みのひとつなんですよね。それがお客様の「ありがとう」に繋がっていく、言ってもらえるのがCSEチームの醍醐味だと感じています。
篠原:
だけど、「最速最短」を意識する。
POPを作るだけなのに、根幹のシステムを作るのと同じような感覚で見積やスケジュールを作ってしまってはいけない。レジ前のPOPなんて100円ショップの材料でさくっと作ればいいのに、制作に1年半かけちゃうケースもあるしね。
石橋:
受発注の関係性だと「とりあえず、簡易的でいいからやってみる」という発想になりにくいんだよね。
篠原:
CSEチームだととりあえず簡単なPOP作ってレジ前に置いてみて、「すごい売れますね〜」ってなったら、正式にシステムに組み込めば良いじゃんという考えかたがあります。前編で話しましたが、「デザインはダサいけど、機能はある」のようなことはよくあります。
石橋:
その施策がいろいろなお客様に共通して効果があることがわかったら、本気でプロダクト化していく。いまはその目を探しているような感じ。僕らのチームはそういう試行錯誤を楽しめるチームです。
舩見:
実は「最速最短」を実現できる環境は整っているんです。
googleやAmazonが個人で使えるレベルの道具をいろいろ用意してくれていますし、やろうと思えば、個人でも結構なんでもできる。でも、なんで「できないんだろう」と石橋が考えて生まれたのがCSEチームと「最速最短」の姿勢なんです。
石橋:
CSEチーム唯一のルールも、「最速最短だったら何でもいい」なんだよね。それが実現できているなら我慢してもらうこともないし、実は「お願い!」みたいなこともないよね。
篠原:
みんな自分の持っている個性や能力を活かして、それぞれのポジションで働いていますよね。でも、好き勝手じゃないし、好き嫌いもない。イヤなことはしていないから、楽しくないわけがない(笑)
舩見:
エンジニアの僕としてもお客様のところに僕たちエンジニアが出向いて、フランクに話せる関係になったので仕事の質が上がった気がします。ついでに、日常の質も上がりました。土日も楽しみだけど、月曜も楽しみですから(笑)。
篠原:
お客様と受注側と線引きするのではなく、お客様を巻き込んで一緒にゴールを目指す仲間になるのが理想的だよね。「こういうことできる?」「ちょっと試してみましょう!」「どうですか?」「良い感じ!」みたいなやりとリが対等にできると、いいものがどんどん生まれていくと思います。
石橋をひと言で言うと「肩の力が抜けた空想家」。全身軟骨のような柔らかさを持ちながら、全体と個別を行き来して空想を現実に変えてしまう強い信念を持つ、Kaizen Platformになくてはならない存在です。
石橋:
最速最短でやる、お客様と1つのチームになる。
「新しい働きかた」という考えもありますが、いまあるものを組み合わせる、ちょっとだけ変えてみるだけでも、仕事の質、楽しさは変わる。そして、実際に成果も出る。こういうプロセス、流れを僕らCSEチームは日々考えて開発しています。こうした“プロダクト”もKaizen Platformとして世の中に発信していきたいです。