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サブスク成功の秘訣は「よろこんで払う税金」になること

『DXプレイブック』は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家集団 Kaizen Platformの須藤による解説シリーズ。loT、サブスクリプション、AI、D2C、OMO、MaaSなどをキーワードに「DXとは?」を考えるDXの入門書です。

最近いろいろなサブスクリプション型サービス開始のニュースを耳にします。2023年には支払額ベースで1兆円を超える規模になると言われています。

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(出典:2019年度のサブスクリプションサービス国内市場規模は6,835億2,900万円(7市場計)、矢野経済研究所

サブスクリプションとはサービスに対する特定期間の利用権に支払うモデルのことで、売り切り型とよく比較されます。改めて考えてみると、サブスク型サービスって昔からありますよね。たとえば家賃や新聞、学費、電話代や電気・ガスなどもそうです。それ自体、特段新しいわけではありません。

今回はそのサブスク型サービスが多数ローンチされる背景や、このモデルを成立させるポイントを考えていきたいと思います。

サブスクの本質は「どう支払うか」ではない?

以前、あらゆる企業の価値発揮の力点が変化しているとお話しました。

ユーザの消費価値観が変化し、モノの所有ではなく「利用」に重きを置くようになっています。それを受けて企業もプロダクトからサービスに価値発揮の力点をうつしているわけです。なにかを売っておしまいではなく、体験全体の向上に主眼を置く考えかたがトレンドです。
(引用:【Appleもテスラも】価値提供はプロダクトからサービスへ

多くの企業にとって力の入れどころである体験価値。それに適した支払方法がサブスクなのです。言い換えれば「どう支払うか」だけでなく「なににお金を払ってもらうか」。私は、こうした提供価値の変化まで起きるのがサブスクだと考えます。これこそが、サブスクが着目される背景なのです。

サブスクに必要な企業文化

サブスク化すると、契約期間中の体験価値を保証する必要があります。

従来の売り切り型だと通常、価値は低減していきます。物理的なプロダクトだと劣化も起きますし、最新商品がつぎつぎと世に出ることもその原因です。相対的な価値低下が起きるのです。

一方サブスクは、来月も来年も同等もしくはそれ以上に、価値を実感してもらう必要があります。さもなければ同じ金額を払いつづけてくれません。

そこで相性が良いのがソフトウェアです。ソフトウェア自体は劣化せず更新性も高いため、アップデートを行うことで価値提供を行えます。プロダクトを売り、それに載っかるソフトウェアをサブスクで課金するモデルも多くなってきました。蓄積するデータを活用し、使い込むほどに性能が上がっていく仕組みも理にかなっています。

つづいて、体験価値を保証しないといけない理由をもう一点。

従来の定額課金では、休眠ユーザがオイシイ顧客という定義でした。つまり使っていないけれど課金を続けてくれる顧客の存在です。

現在のサブスク型モデルではそれを良しとしません。なぜなら重要な事は自社のサービスを使ってくれている顧客に確実に成功してもらうことであり、それを自社の収益に変換することだからです。ここでいう「成功」とは事業成長などサービスを申し込んだ目的が達成されることを指します。これらはセールスフォース・ドッドコム社でCMO(最高マーケティング責任者)やCSO(最高戦略責任者)を歴任したティエン・ツォ氏の言葉です。同氏はそれをサブスク化に必要な「サブスクリプション文化」とも自著で表現しています。

たとえばチャットサービス「Slack」ではフェアビリングポリシーという方針に基づき、14日以上利用していないメンバーの存在を自動検知し、払い戻しを行っています。このようなスタンスが中長期的な成功に結びつくと分かっているのです。

体験価値の保証に必要なのは、ソフトウェアやデータに加え、サービス運営をささえる組織文化です。顧客と継続的な関係を結ぶために組織や考え方を一新する必要があり、まさにそれこそがDXと言えます。

Atlassian社が実現する「喜んで払う税金」

オーストラリアに本社を置くAtlassian社は、開発チーム支援向けのソフトウェアを複数提供している企業です。時価総額は3兆を超える世界を代表するSaaS企業です。開発に携わっていなくとも「Jira」や「Confluence」「Bitbucket」など、聞いたことある方も多いと思います。

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これは毎年開かれているAtlassian Summitの2017年のスライドですが「Predictable sales model」と称してAtlassian社のクオーターごとの売上進捗度に毎回ブレがないことを示しています。

サブスクは一般的に売上が予想しやすいと言われますが、同社は綺麗に毎日積み上がっていくモデルを形成しています。大手企業向けのサービスを多く抱えながら営業やマーケにコストをかけず、低単価モデルを顧客が自ら検討して導入するセルフサーブ戦略をとっていることが売上をより予測しやすくしているのです。営業介在モデルでは、どうしても期末に売上を伸ばす傾向になりがちで、上記のような直線を描きません。低単価モデルで一社の受失注が予算達成に大きな影響を与えないことも安定している要因と言えます。

それにより投資余地も明確になり、積極的に顧客価値に還元しつづけています。同規模のIT企業と比較しても圧倒的にR&D比率が高いことが、大きな差別化要素と言われています。

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サブスクは収益を見立てやすさから企業の税収と言われますが、ユーザへ還元される構造もそう言われる所以でしょう。

私たちから集めた税金が新たなユーザの獲得ばかりに使われるのではなく、私たちが享受できるであろう「未来の体験価値」のために積極的に使われていれば、私たちは翌月も喜んで税金を払いつづけます。

そのようなエコシステムを実現できるかが、サブスクの鍵なのです。

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