【インターネットの影響力とプライバシー問題】「インターネット・トレンド」2019年版 解説
みなさんこんにちは! Kaizenで学生インターンをしているDaikiです。
今年6月、インターネットの現状を網羅的に紹介したレポート「Internet Trends 2019」が公開されました。
例年どおり、最新の数字とともにインターネットの今後を予想しており、インターネット事業に関わる経営層が押さえておくべき数字がてんこ盛りのこのレポート。
第1〜5章に引き続き、今回は6章「...Usage 」のスライドを翻訳・解説していこうと思います!
1) Users
2) E-Commerce + Advertising
3) Usage...
4) Freemium Business Models
5) Data Growth
6) ...Usage(今回の記事)
7) Work
8) Education
9) Immigration + USA Inc.
10) Healthcare
11) China (Provided by Hillhouse Capital)
イントロダクション
本章では、ユーザーがインターネットを利用する際に懸念していること(時間、プライバシー、問題のあるコンテンツや活動など)が最初にまとめられています。また、よりインターネット上での情報量や発信量が増えていった場合に、どんな影響を消費者、企業、規制当局に与えるのかを考察しています。
インターネットの影響力の尺度、そしてメディアを時折話題にさせる脅威に関してデータをベースに考察されている章です。
ユーザーの懸念:使用時間に関して
○「ほぼ常にオンラインの状態」成人は3年前に比べ、インターネットの使用時間は21%→26%に上昇している
年齢層で分けてみると、30〜49歳のインターネット使用時間における3年間の上昇率が8%と最も高いですね。意外にも18〜29歳の上昇率は3%と低いです。
○ユーザーはソーシャルメディアを利用した時のポジティブ・ネガティブの要因をどのように考えているのか
「ポジティブ」の主な要因は自己表現、コミュニティ構築など。一方、「ネガティブ」の主な要因は睡眠の質の低下、自分を見失うことなどが挙げられています。
○使用時間を減らすために行動を起こしているユーザー
個人のスマートフォンの使用を制限しようとしている成人の割合(米国)は、一年で16%上昇しています。63%のユーザーがいわゆる「使いすぎ」という自覚をもっているようです。
子供のインターネットや電話の使用を規制するために親の行動する割合も現在では50%以上に及んでいます。
○その状況から、ユーザーが使用状況を把握できるようにするためのサービスを企業が提供している
2018年に主要プラットフォーム(Apple,Google,facebook,Youtube)がウェルネス/タイムトラッキング機能を提供しています。
○事実、ソーシャルメディアの利用時間の成長率は0%に近づいている
一日のソーシャルメディアの利用時間は2014年から2018年まで上昇していましたが、近年の成長率は減少しています。
ユーザーの懸念:プライバシーに関して
○プライバシーに対する懸念は世界的に高かったが、緩和の傾向にある
○規制当局と企業は消費者のプライバシー管理の改善を試みている
たとえば、規制当局はEU、企業はFacebookがこれにあたります。
○暗号化メッセージングのMAUが増加しており、トラフィックも上昇している
左のチャートを見ると、TwitterやWeChatなどのオープンにメッセージを公開するMAUの上昇幅より、Messenger,Gmail、WhatsAppなどのいわゆるDMが主なサービスである割合が高くなっています。
ユーザーの懸念:問題のあるコンテンツや活動に関して
○人類の半分以上がインターネットにアクセスできる状況にある
○人々は否定的なニュースを好む(2014年)
ニュースの選択の趣向を把握するために実験を行ったところ、多くの人々は否定的なニュースコンテンツを好んだという結果があるようです。
インターネット上の問題のあるコンテンツは増加している
○画像と動画によって、テキストよりも伝える力は強くなっている
○アルゴリズムにより、ユーザー自身の趣向に適したニュースを増幅できる
Google、Apple、Twitterなど、ニュースフィード(フォローコンテンツなど)を使用してキュレーションを行っているサービス例が紹介されています。
○ソーシャルメディアによってトレンドのトピックを増幅できる
その実、ニュースを得た元はFacebookが43%、動画のYoutubeが2016年から上昇し始め、8%程。一方、テキストベースのTwitterのニュースプラットフォームとしての伸びは緩やかです。
○従来のメディアプラットフォームはソーシャルメディアのトレンドトピックを拡大できる
従来のメディアプラットフォーム(新聞など)上でFacebookとTwitterを情報源とする記事数の割合は、2010年から2016年で1%→5%まで上昇しています。つまり、新聞のソースとして、FacebookやTwitterが元の記事が5%を占めているということです。また、その内容はどの国においても類似していると言われています。
○ソーシャルメディアは悪い行動を増幅することができる
つまり、ソーシャルメディアの拡散力、ユーザーの個人的な発信力が強いがために、悪影響も及びやすいということですね。ユーザーはオンラインで次のような経験をしたことがあるようです。
42%=悪口
32%=誤った噂の拡散
16%=物理的な脅威
○イデオロギーの増幅も可能である
今日の米国における主なテロリスト問題は、インターネットから吸収された多様なイデオロギーによって急進化された問題の一つです。
イデオロギー:人間の行動を左右する根本的な物の考え方の体系
○意図しない社会に悪影響を及ぼす者が増加する可能性がある
インターネットは、偏極のオンラインコミュニティを育成する役割をもってしまう場合があります。いわゆる信者は自分の意見や「証拠」を他の信者と共有しますが、自分の意見を批判する人々と意思を共有することは少ないのです。
○極端な考え方を増加させる
これまで、考え方の偏りは、多くの要因によって弱められてきました。たとえば、アメリカ人は地理的に自分たちを選別し、政治的に同質の地域に住んでいることなどが挙げられます。
しかし、ソーシャルメディアと、インターネットやテレビを介したメディアチャンネルの普及により、あらゆる情報へのアクセスが可能になりました。その結果、例として民主党と共和党員の分布が挙げられています。米国のピューリサーチによる10項目の政治的価値の尺度についての分布では、時代が進むほど偏りが出ています。
○問題のあるコンテンツを減らすための取り組みの推進
Facebookでは急速にスパムを取り除く試みが増加しています。
○消費者と企業による、問題のあるコンテンツを緩和するための取り組みの推進
グローバルな独立したファクトチェック機関の数は急速に成長しています。
○消費者と企業による、問題のあるコンテンツを緩和するための取り組みの事例
たとえば、YouTubeは、1万人以上のユーザーにコンテンツを報告するように契約し、コンテンツのおすすめを紹介するアルゴリズムを変更しています。
○アメリカにおける調査によると、人々はインターネットの影響を個人にとってはポジティブに捉え、社会にとっての影響は個人に比べ、ネガティブであると考えている
悪い点を撲滅し、良い点を増やすことは難しい
○データと情報に関連したグローバルな関係は複雑に急速に進化している
○そのため、WWW(インターネット上で、ウェブページの形で情報を提供する仕組み)は終わりの時だと言われている
新世代の技術を管理するには、新世代の法律が必要であり、パラダイムシフトが進行しています。そのため政府は、干渉のない立場から、国境を越えたインターネットを維持したい場合、新しいガバナンスシステムが必要であるという認識に移行しています。
○国別の規制によってWWWの扱い方は異なる
インターネットをオープンにすると全ての構成要素に利益をもたらすことができる
○インターネットをオープンにすることに対するそれぞれの意見
インターネットをオープンにすることに対するそれぞれの意見は、
・消費者にとって、効率的かつ安価に欲しいものを手に入れたい
・企業にとって、製品とサービスを有益に販売したい
・規制当局にとって、消費者・企業・社会機関を保護したい
というようにステークホルダーごとにニーズが分かれています。
○インターネットをオープンにすることの例として、オンラインレビューは、多面的な説明責任を高めることに役立つ
○オンラインレビューの成功事例としてAirbnbが挙げられている
他人の家に宿泊するというビジネスモデルの性質上、安全はAirbnbの最大の原則であり、安全が機能しなければAirbnbのビジネスは成り立ちません。
そのため、70%のゲストがAirbnbに滞在した後にレビューを残しており、コミュニティがAirbnbの物件をレビューして信頼を築くことができるシステムを構築してきました。
インターネット上での開示・行動・反応は増幅しており、消費者・企業・規制当局の透明性を促進できる
○Twitterは消費者向けコミュニケーションツールである
2017年に米テキサス州の大都市ヒューストンを大型ハリケーン「ハービー」が襲います。その際にアメリカンフットボールNFLの名チーム「Houston Texans(ヒューストン・テキサンズ)」所属のJ.J.・ワット選手が、自ら「YOU CARING」という募金機関を設立し、億を超える集金に成功しました。その時に、ツイッターを活用した事例が紹介されています。
○Twitterは企業向けのコミュニケーションツールでもある
スタバの例を見ると、ある店舗で起こったことに関するお詫びをTwitter上で発信しています。このような企業の行動が増えることで、より透明性が上がるということですね。
○ソーシャルメディアは消費者と規制当局のためのコミュニケーションツールである
「ソーシャルメディアは何にとって重要ですか?」という質問に対してアメリカのある調査では
69% 政府職員に問題に注意を払わせる
67% 社会変革のための持続的運動の創出
58% 政府の政策決定に影響を与える
の3つが挙げられています。
まとめ
本レポートではサイバー犯罪などに関してもより詳しく書かれていますが、まとめるとインターネットの規制やサービス設計のあり方は変化しており、より時代に即した取り決めが必要であると規制当局が言及していることが印象的でした。
その一方で、ユーザーの声を反映したAirbnbの良い事例などが紹介されており、巨大な圧力で規制をかけるだけではなく、企業側にもインターネットの影響力とどう向き合うかを問いている章なのではないでしょうか。
次回告知
次回は 「Work」の章を解説します!
原本はこちらからご覧になれます。→「Internet Trends 2019」
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