「真剣に遊ぶ」という向き合い方の大事さ。大賞受賞に至った思考と、受賞後に起きた変化とは。
グロースハッカーの祭典「Growth Hacker Awards 2020」で大賞を受賞したミリカデザイン事務所 代表の福田さん。1万人を超えるグロースハッカーの中で選ばれたそのスキルとマインドに焦点を当て、過去の大賞受賞者のその後の成長と成功の秘訣についてお伺いしました。
「内心、かなり狙っていました」
──Growth Hacker Awards 2020の大賞を受賞され2年が経ちました。受賞の影響やモチベーションの変化について深堀りしていきます。まずはご経歴をお教えください。
福田:ありがとうございます。改めまして、ミリカデザイン事務所 代表の福田でございます。現在はグロースハッカーとして活動しておりますが、以前は会社勤めのWEBデザイナーを6年ほどやっておりました。さらにその前には、設計事務所やゲームのデバッガーなど、さまざまな経験をしています。そしてWEBデザイナー時代に、動画の世界に入りました。
──動画制作未経験の方が動画制作部門の大賞を受賞したことはインパクトのあることだと思います。
福田:実は、前職WEBデザイナー時代の知識・技術がそのまま動画に転用できたということもあり、動画は2年ほどですんなり作れるようになりました。個人的には、動画制作に必要な知識のうち8割がデザインに関するもので、残り2割がモーションかなという感覚でした。また、コツコツと制作に特化したような作業は好きなので「好きこそものの上手なれ」で結果的にうまくいったのだと思います。
──元々こういった賞を取ることを狙っていたのでしょうか?
福田:内心、かなり狙っていました。私は動画部門ができてから2回目で受賞したのですが、1回目に受賞できなかったのが悔しくて。だからその1年間はだいぶ頑張りましたね。ただ、1年間まるまる大賞のことを考えていたというよりは、目の前の仕事に一生懸命打ち込んでいたという感じですね。
──神グロースハッカーの一人という話も聞こえてきます。
福田:それはKaizen Platformさんが言っているだけですからね! 自分で神とは言っていないです(笑)
──(笑)
お客さんが求めているものは、クオリティの高さではなくて事業を成長させること
──自分の強みや今まで磨いてきたこと、最も意識されている部分などを教えていただけますか?
福田:スピードを意識してやってきたのはひとつ挙げられます。自分が制作している時間って、お客さんは待っているわけじゃないですか。お客さんからしてみれば、100%のクオリティを出してほしいということよりも、とにかく形になったものを見たいと思うのではないでしょうか。
一体どういうものが出来上がるんだろうとモヤモヤしている時間って、お客さんにとってはかなりのリスクですし、時間のロスだと思っています。それをなるべく緩和するために、こちらが早く出してあげるということをずっと意識していました。KAIZENさんの案件では、このスピード感で提出するのが普通になっているのですが、他のお客さんから依頼を受けたときにはめちゃくちゃ早いと驚かれます。自分ではこの早さが基準になっていましたが、意外と早いみたいです。
──ノミネート内容にも制作の早さとクオリティの高さについて書かれていました。Kaizen Platformさんが評価するポイントと福田さんが意識されている部分が一致しているんですね。
福田:それはありますね。Kaizen Platformさんの仕事に対するスタンスと、自分の制作物に対するポリシー。その2つの考え方がいい感じにマッチしているからこそ、大賞を頂けるまでになったのかなと思います。我々は作ることそのものが信用につながっているので、求められていることを返し続ける努力をしてきました。
一口に動画と言っても、いろんな種類があります。例えばテレビCMや映画・ドラマであれば、めちゃくちゃ高いクオリティになりますよね。でもWEBの広告動画というと、そんなにクオリティが高い必要はありません。もちろんペラペラの手抜き作品ではいけませんが、その塩梅がどれくらいかというのは、口で説明するのは難しいところではあります。
ただ大事なのは、お客さんの訴求したい内容を、ちゃんと情報として精査できているのかどうかです。つまり、高いクオリティをもって商品イメージを押し出していくというよりも、売るための訴求ができているかどうかが大切です。例えば、今まで動画や映像をいくつも作ってきたプロであっても、いきなりKAIZENでの仕事ができるわけではありません。それはKaizen Platformさんやその先のお客様が根本的に求めていることが、肌感覚でわかっているかどうかが重要だからです。
私は、そこがパズルのピースのようにカチッとハマっているという感覚があります。私はなんでもかんでもできる人間ではありませんが、たまたま自分ができることとKAIZENさんがやって欲しいことが、うまく噛み合っているのだと思っています。それは何か特別なことをやったわけではなくて、Kaizen Platformさんやその先のお客様が何を欲しているのかを常に考えていたら、そういう結果になっただけのことです。
お客さんが求めているものは、クオリティの高さではなくて事業を成長させることなので、広告の効果を出すことこそが広告動画の価値です。そこに向かって制作ができる人がうまくマッチしていくんじゃないでしょうか。
互いに目線を合わせ、魅力的な動画を作っていく
──KAIZENさんと二人三脚の雰囲気が伝わります。
福田:(笑)不思議だなと思うんですよ。普通は会社とのやり取りってあまり心の内とか話しませんよね。私たちのように結果を出さなければいけない人間としては「出来上がりました、はいどうぞ」で終わりのように思われがちです。
でも実はそうではなくて、クリエイター側が抱えている問題や課題を共有して初めて良いものが出来上がるんだと思います。もちろんKaizen Platformさん側もグロースハッカーに対して自分たちの求めているものや思いを共有いただかないと、良い物は出来上がらないなと常々思っております。
──お互いにコミュニケーションが取れていて、一人ではなく連携していったことが、今回の大賞に繋がったような気がします。デザイン力やスキルの高さというよりは、いかに思いやりを持って連携して、相手の意見をくみ取っていけるか。この大賞は、その象徴なのではないでしょうか。
福田:そうだと思います。技術だけで言えば、自分はそんなに大したものは持っていません。だって、自分よりも高クオリティの作品を作れる人なんて、世の中に腐るほどいるんです。ただ、そのクオリティを求めているわけではないですし、「依頼者の先にいるお客さんが求めているもの」に目線を合わせられるかどうかが重要なのかなと思っています。そこが面白いところでもあるので、逆にそこに魅力を感じないのであれば、きっと続かなかったのかなと思います。
受賞をしたことでの変化とそれからの目標
──受賞をしたことで、変化を感じることはありましたか?
福田:単純な話ですが、大賞を取ったことで箔がつきました。自分の制作物に対して、自己評価ならいくらでもできますが、誰かから評価されるということはあまりないですよね。だから、他者から評価されたという証明が得られたのは大きいと思います。バイオグラフィの一部分でしかないかもしれませんが、自分の経歴の中にひとつ、見栄えの良いものが増えたなと思っています。
──箔が付いたとおっしゃられていましたが、例えば発注が増えたとか、仕事内容が変わっていったとか、目に見えるような形で変わっていったことはありましたか?
福田:急に仕事が増えたわけではないのですが、思わぬルートでお声がけいただくことが多くなりました。各種メディアをご覧になった方や、口コミで私のことを知って声がけしてくださったり、あるいは今回のようにインタビューという特殊なご依頼もいただけるようになったりしました。直接私の身の回りに何か変化が起きたというよりかは、間接的に多方面へ影響を及ぼしたのかなという印象ではあります。
──大賞を受賞されたことで、福田さんのモチベーションやマインド面での変化はございますか?
福田:一瞬だけ、燃え尽き症候群みたいになっちゃいましたね(笑)。でも大賞を取ったからには次の目標を定めければいけませんし、「取った取った」と自慢するのはちょっぴり恥ずかしい気持ちもありました。だから、そこですぐに区切りをつけて、次に何を目標にすべきかという方向に目を向けるようにしていました。
大賞という一つの目標があって、そこをクリアできたらまた次の目標というように、それぞれ違う軸の出来事として考えています。大賞を取るまでは自分自身の成果を上げることだけに特化していましたが、受賞後はその技術で何ができるだろうかと考えるようになりました。例えば後進のグロースハッカーを育てていくとか、あるいは同じような仲間を作っていきたいとか、そういうことを考えるようになりました。
後進の育成とスキルアップに力を注ぎつつ、真剣に遊び続ける。
──今掲げている目標や、今後やっていきたいことはありますか?
福田:大きく分けると二つありまして、一つは先ほど申し上げた人を育てたいというところです。今はこんなご時世なので手に職付けたいという人もいますし、技術は持っているからキャリアチェンジしたいという人もいるので、そういう人たちに自分の技術を教えてあげたいと思っています。ただ、私のスキルは俗人的で感覚でやっているところがあるので、言語化するのが難しいというのが今抱えている課題ですね。一応、私なりに努力して、人に伝えられるように頑張っているところではあります。
二つ目は自分自身のスキルアップですね。動画編集だけにとどまらず、撮影技術や3D技術などの最先端技術の勉強をして、自分自身のスキルを磨いている最中です。自分ができることだけに囚われるのではなく、人から求められたことに対して「はい、できます」と即答できるようにしておきたいのです。だから、今は自分のスキルで稼ぎながら、今後のために勉強もしつつ、さらに人に教えていくという状態です。
──賞を目指されている方にアドバイスはありますか?
福田:これも伝えたいことが二つあります。まず一つは、制作物を「自分の作品」だと勘違いしないことです。動画広告は消耗品、という意識を持ってください。動画広告は「作品」ではなく、依頼主さんの商品の売り上げを伸ばすための「ツール」ですので、アーティスト気質で作ると独りよがりになりかねません。だから、お客さんが何を求めているのかを常に意識しながら、自分の技術や特徴を隠し味程度に抑えることで差別化をしていくのがいいと思います。
もう一つはシンプルに、作ること自体を好きになることです。好きになることと続けることはイコールで結ばれていますし、継続こそが力だと思っています。これがもし「大賞を取る」とか「高い報酬が欲しい」といった目先のことを目標にしてしまうと、モチベーションは絶対に続きません。それよりもまずは自分が好きになること。朝から晩までやっても疲れないことってありますよね。私が今やっていることもまさにそうで、どちらかといえば仕事ではなく「真剣に遊んでいる」という感覚です。好きだから継続できるし、その上でお客さんのこと考えているなら、結果的には大賞を取れるのではないかなと思います。
──最後に、これから受賞を目指している方に向けて一言いただけますでしょうか。
福田:やっぱり、継続することですね。
KAIZEN SCHOOLで講師をやらせてもらっているのですが、それだけは毎回のように受講生に言っています。続けないと技術も伸びませんし、1〜2ヶ月くらいで形になるような簡単なものでもありません。
でも楽器の練習と同じで、やり始めは下手だけど、慣れてきたら楽しさがわかる。だから継続すれば「好き」につながっていくし、いずれ形が見えてくるはずです。まあ、この分野に限らずクリエイティブな仕事というのは、みんな継続した結果だと思いますけどね。あとは「頑張れ」ですね(笑)
──継続し続けた先に、結果が見えてくるということですね。本日はGrowth Hacker Awards 2021の大賞を受賞された福田さんに、その影響やモチベーションの変化についてインタビューさせていただきました。本日はありがとうございました。
福田:ありがとうございました。
(インタビュー:Shovell所属 さしみ)